映画『よこがお』ネタバレ感想 それは静かに展開する「復讐劇」

どーも、スルメ(@movie_surume)です。

 

今公開されている邦画の中では個人的に一番の注目作だった

『よこがお』

を観てきました!

 

以前『淵に立つ』って映画がありまして、それがカンヌ国際映画祭で「ある視点部門」というちょっと変わった部門で入賞したんですね。
で、『よこがお』はその『淵に立つ』と同じ深田晃司監督作品でして、かねてよりチェックしていたんです。

実は『よこがお』の一個前に『海を駆ける』という作品もあるんですが、私はスルーしてしまってましてw

なんで、さすがに今回はスルーはできない。映画館でしっかり深田作品に触れるんだ!と意気込んでの鑑賞となりました!

※この記事は『よこがお』のネタバレを含んでいます!!

よこがお

あらすじ

訪問看護師の市子(筒井真理子)はデイサービスに通いながら、訪問先の過程で仲良くなった基子(市川実日子)とその妹のサキ(小川未祐)に勉強を教える日々を送っていた。

日常生活では同じ仕事先の医師との結婚も決まり、同僚にも慕われる充実な毎日を送っていたのだが、ある日事件が市子の幸せな生活を引き裂く。

仲良くしていたサキがとある人物に誘拐されてしまったのだった。それをきっかけに市子の日常は次第に壊れ始めていくのだが…。

監督

監督は先ほどもご紹介した深田晃司。独特なリズムで展開する作品が多い印象です。

あと人間の本質に注目した人間ドラマかな。お化けやゾンビで人を恐怖にさせるのではなく、誰にでもある内面の闇でゾッとさせてくれるんですよね~。

その辺が癖になるというか、見て見ぬふりはできない作品を作り出していると思ってます。

キャスト

主演を務めたのは『淵に立つ』でもタッグを組んだ筒井真理子。『愛がなんだ』や『サムライマラソン』などの話題作に多数出演していますが、メインキャストというよりも脇役を演じることが多いかも。

本作や『淵に立つ』を鑑賞した方ならわかると思いますが、抜群の演技力で表情で語りかける方ですよね。控えめながら毎度存在感ありますし、なかなかこの空気を出せる女優さんはいません。

 

共演は『シン・ゴジラ』や『羊の木』の市川実日子、『セトウツミ』『町田くんの世界』の池松壮亮、『冷たい熱帯魚』の吹越満など。

評価と感想

僭越ながら『よこがお』の満足度を★10段階で表すと・・・

 

★8

 

なんとも言葉にしがたい「狂気」

私たちが普段送っている「日常」とは、本当にふとしたはずみで壊れていくものなのか。それこそ風船にハリを刺した時のように小さな点でも一瞬ですべてを崩壊させる。

本作はそんな小さなミスが思わぬところで拡散されていく、情報の洪水が起きてしまう現代文化に対してのアンチテーゼとも言えるかもしれません。

そしてそのストーリーを時系列を入れ替えて「しこり」を残しながら進めていく深田監督ならではの切り口。『淵に立つ』に似ているようだけど、恐怖の感じ方が少し違うんですね。

主人公が狂気に落ち、盲目的な復讐に走ったワケを本作でキッチリと説明してくれます。しかも情報社会に生きる我々にとっては最も恐怖に感じているかもしれない理由を。社会につまはじきにされ、後ろ指刺されながら生きていくことは人によっては死ぬより辛いことなのかも。

 

また、主人公の市子と彼女を慕う基子の関係の描かれ方がえげつなさを感じるほど、生々しく人間くさい。

本作のタイトルである「よこがお」は人間が持つ二面性を表しているワケだけども、人間だれしも裏と表があるし、それが一体となって生きているのだと思います。

例え片方の面が心優しく親しみやすい「市子」だったとしても、もう片方は復讐に燃える「リサ」かもしれない。
この表から裏になる変化を序盤の美容室で髪を染めるシーンや動物園のシーンで表現していて、すべてが終わった後に思い返すと意味が生まれてくるシーンのなんと多いことか…!

どんなに信用している人間でも私たちが観ているのはその人の「よこがお」なのだ。正面から観て、様々な角度から観察できるはずもない。
「人を信用するな!」ってことをこの映画は言いたいんじゃなくて、たとえ好きな人でもすべてを知ることはできないと、どちらかと言えば「見る側」の無力さを伝えてきている気がする。

 

この一見ややこしく見えるストーリーをよりリアリティのある現代劇にしてくれているのが筒井真理子さんを始めとする俳優陣の演技でしょう。

この作品ではどんな登場人物であれ、監督の意向を的確に再現してくれる俳優が不可欠であり、本作はそれを満たしていると思うのです。

市子とリサ。二つの顔を持つ主人公を演じるのは「筒井真理子」という女優でなければいけなかったとさえ感じる圧巻の演技。他の役者なら助演と言える市川実日子さんの迫力に持っていかれていたかもしれません。

市川さんの迫力も抑えつけ、池松壮亮さんが放つあの独特なオーラさえも消し飛ばす。「静」の中にある圧倒的な存在感は「筒井真理子」でなければ生み出せない。

あぁ。『よこがお』の筒井真理子さんを超える演技は2019年中に観られない気がするぞ。

まとめ

えー、感想を書くのがかなり難しかった。それくらい悩まされて、打ちのめされた作品だったんです。

作品解説とかは既に他のサイトで上がっているので、私の感じたままを書いてみました。映画から受け取ったものを文章にすることの難しさを痛感しましたねw

ブログ初めて1年ちょっと。一番何を書こうかと熟考した映画でした!

以上!!!