
今回は蜷川監督により実写化された『ホリック xxxHOLiC』の感想を書いていきます。
いちおうマンガ好きでもあるんで、当然原作は全巻読んでいますが、「実写映画化」は正直心配です。
特に原作が好きな人にとっては、身構えてしまう部分があるんじゃないでしょうか。
僕は原作ファンというほどでもないんですが、やっぱりCLAMPの作品を実写化するって難しいと思うんですよね。どう頑張っても実写じゃ再現不可能な部分(キャラクターの等身とか)もあるし。
とはいっても、実際に観なくては何も言えないので、公開初日&初回に鑑賞して参りました!
ホリック xxxHOLiC
あらすじ
人の心の闇に寄り憑く“アヤカシ”が見えてしまう男子高校生・四月一日君尋(ワタヌキ・キミヒロ)。その能力のせいで孤独な人生を歩んできた彼は、能力を消し去って普通の生活を送りたいと願っていた。そんなある日、一匹の蝶に導かれて不思議な“ミセ”にたどり着いた彼は、妖しく美しい女主人・壱原侑子(イチハラ・ユウコ)に出会う。侑子は四月一日のどんな願いでもかなえてくれると言い、その対価として彼の“一番大切なもの”を差し出すよう話す。侑子のもとで暮らしながらミセを手伝うことになった四月一日は、様々な悩みを抱えた人たちと出会ううちに、思わぬ大事件に巻き込まれていく。
映画.comより抜粋
作品解説
原作となったのはCLAMP(以下、敬称略)の漫画『ホリック xxxHOLiC』。CLAMPは創作家集団で、漫画『カードキャプターさくら』や、『コードギアス』のキャラデザ原案などで有名な方々。
当然ファンも多いので、特に『ホリック』の実写化は難しいと思うのですが、実はドラマ化・舞台化がされてまして。
そんな本作は『ヘルタースケルター』などでおなじみ、蜷川実花が監督を務めています。かなり賛否分かれる方で、正直僕も好みの作品はないんですが、なんだかんだ言いながらも毎作必ず観ている監督です。
キャストの方を紹介していくと、主人公・四月一日を演じるのは、神木隆之介。僕より年上だけど、永遠に高校生役やれるんじゃないかってくらい、制服着ていても違和感はありません。
また、ミセの主人・侑子さん役は柴咲コウ、百目鬼役は松村北斗が演じています。個人的にはメインキャストよりも、女郎蜘蛛役の吉岡里帆が気になっていて。来月には『ハケンアニメ』で監督役をやるのに、ここで女郎蜘蛛か……!
『ホリック』評価
ストーリー | ★☆☆☆☆ 1/5 |
キャスト | ★★★☆☆ 3/5 |
演出 | ★☆☆☆☆ 1/5 |
映像美 | ★★☆☆☆ 2/5 |
総合評価 ★ 3/10
「想像以上のひどさだったね」
怒りとか、落胆とか、そういうのを通り越して、僕はもう悲しい。
だって『ホリック』だぜ? この映画『ホリック』が原作なんだぜ?
オリジナルストーリーはてんでダメで、原作の(主にストーリー面の)良さを破壊。確かに実写化、特に映画化するのは難しい漫画ですが、ここまでやられるとは……
作っている人はビジュアル面だけに惹かれたのかな? 確かに蜷川さんが好きそうな漫画だけど、蜷川さんが映画化するような漫画じゃないでしょ。
僕以上に原作に思い入れのある方は、どんな気持ちでこの映画を鑑賞していたのだろう。
これから観に行く人がいれば、「ビジュアルだけ原作に似せた別の映画」と思った方がいいです。そうすれば少しは楽しめるかも?
※以下、『ホリック』のネタバレが含まれています
『ホリック』感想
ストーリーについて
今月号の『ダ・ヴィンチ』にCLAMP特集があったのですが、その中に蜷川さんのインタビューが掲載されていまして。CLAMP作品との出会い、『ホリック』の映画化に関してのことを語っておられて、CLAMP作品への気持ちが感じられる記事でした。
そんなわけで、『ホリック』の映画に対して若干の期待を持たせてくれたのですが……。
映画本編はひどかった
原作は次々とミセにやってくる依頼人たちの悩みを解決し、時にはバッドエンド的な結末もある、ファンタジー漫画です。ドラマなら「1話ごとに一人の依頼人」で進行できるのですが、1本の映画になるとそうはいきません。
何人も依頼人を出しては、ぶつ切りのように見えてしまうだろうし、映画として成立させるのは難しいでしょう。劇中ではダイジェストで依頼人たちダダっと紹介されましたが、これが違和感のない精いっぱいかなと。
「映画化が難しい原作であることは理解したいね」
で、僕が問題あると思うのは、ストーリーのペラペラ具合。
本作でメインとなる女郎蜘蛛関連のストーリーで解説していくと、
原作では四月一日と百目鬼が蜘蛛の巣を壊してしまい、蜘蛛に反撃されるというストーリーがあります。一見理不尽な目に遭うように見えますが、蜘蛛の住処を破壊したのは百目鬼自身です。蜘蛛からすれば百目鬼の行動こそが理不尽で、彼はただ報復されただけでした。
『ホリック』では、理不尽に見えても、その裏の意味が解説されることがあって。「願いを叶えるなら対価を支払う」という言葉のとおり、作品自体も因果応報的なストーリーが語られることが多くあります。
一方、映画版では女郎蜘蛛もアカグモも、ただ敵として登場するだけ。彼女たちが四月一日を狙う意味も深く語られなければ、蜘蛛が関連してくることもない。せめて蜘蛛の巣のエピソードが原作どおりに進行すれば、「対価を支払う」で押し切れたんですけどね。
中盤以降はまさかの「エンドレスエイト」ネタ。「ビューティフルドリーマー」ネタでもいいですが、まぁよくあるやつですよ。
僕個人としては「映画オリジナルストーリー」の否定派ではありません。むしろ原作と全く同じではつまらないと考えるタイプだし、原作者以外の人が作る物語にも興味があったりします。
ただ、それはあくまでも「原作のイメージを壊さなければ」ってことで、本作の場合は……なしかなー。
小羽を登場させて母と子の関係を描くとか、オリジナル要素足せばいくらでも映画化できそうなエピソードあるんだけどなぁ。正直、もう何をやっているのかわからないし、どういった気持ちでこの映画に臨めばいいのか……。
やっぱり原作とは別物視点から観る映画でした。
ツッコみたい
気になった部分をダダっと書いていきたいコーナー。
まず女郎蜘蛛の登場シーン。四月一日を見て「君が噂の子か」と語るのですが、四月一日は侑子さんに会ってすぐだし、まだ何も解決してなくね? 彼女たちの情報網はどうなってるんですかね。
神木くん演じる四月一日の変わりようもヤバくね? あんな無口な少年が、突然お弁当を作るようになって、艶やかな声出して……。映画自体がダイジェストだから、この変わりっぷりに違和感しかない。
で、四月一日でもう一つ言いたいことが、「自分の作ったものが食べられない」というセリフが特に回収されなかったこと。料理教えたりとかもないし、ただ四月一日が自分のことを好きになれないとか、それだけ?
あと、全体的に言えることですが「変われないんじゃない。変わるんだ!!」みたいな、東京モード学園のCMぽいセリフは勘弁してほしい。頭の中で「東京モード学園 AO入学受付中」ってナレーションが入れてみ。違和感ないから。
全編通して、舞台作品のように見えるんですよね。セリフも、セットも。それが作っている人たちの狙いなのかもしれませんし、観る人によっては正解なのかもですが、僕は好みじゃなかったです。
「今回も賛否分かれる映画になるのか……」
最後になりますが、個人的に好きだった点について。
当然、画面の美しさは語っておきたい。完全に好き嫌いが分かれるでしょうが、藤の花?が咲き乱れるミセの外観は、絶対住みたくないけど美しい。屋内も「そんなとこ住めねぇよ!」と思うわけですが、蜷川監督らしさが全開で、僕は好きでした。
百目鬼演じる松村北斗さんの服のはだけ方は、僕が観ても「うおっ」っと思ってしまう艶やかさ。あれだけサービスしておいて、嫌味っぽい感じが全くしないのがすごいね。
四月一日と百目鬼の絶妙な距離感も嫌いではありません。ふたり弓を引き絞るシーンとか、一枚絵で観れば本当に美しいし。もうちょっと煽ってくれれば、もっと激熱なシーンになっていたと思う。
あとは侑子の衣装。シーンによってチャイナドレスになったり、中東風になったりと、コロコロ変えてくれるのが面白い。柴咲コウさんが好きな方は眼福な映画になったんじゃないでしょうか。
眼福といえば吉岡里帆さんも……と言いたかったけど、あれは狙いすぎ(笑) 『ハケンアニメ!』と比較するのが楽しみです。
と、そんな感じで色々書きましたが、『ホリック』の映画化自体、絶対文句言われれる企画です。
CLAMP作品はコアなファンも多いし、僕のようなメンドクサイ客もいるでしょう。
そんなことは重々承知の上で、誰に配慮するわけでもなく、本作を「蜷川実花作品」として作り上げたのは本当にすごい。
結果的に『ホリック』と蜷川作品の相性は微妙だと思ってしまいましたが、監督のものづくり対する熱き想いを感じる映画でした。
最後に
蜷川監督作品の中でも、特に癖の強い映画でした。今回も賛否分かれることでしょう。
なんだかんだで、蜷川監督作品は毎回観ているんでね。
「もう慣れただろ」と思ってたけど、僕が彼女の世界に浸れるようになるまでは、もう少し時間がかかりそう。
以上。
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