映画『最後の決闘裁判』評価と感想(ネタバレ) 視点の違いによって浮き彫りになっていく醜い世界

どーも、スルメです!

以前、どこかの記事で、

中世の時代には決闘や公開処刑が庶民の娯楽だった

との記述を読んだ記憶があります。

うーん、娯楽に飢えていたとしても「殺し合い」に惹かれるだろうか? 僕だったら見物したりしないかな~

……そんな風に思っていました。今作を観るまでは。

 

決闘する理由、当事者たちが戦う意義なんかを知っていれば、絶対ヤジウマになっちゃうわ。

それくらい、惹かれる決闘シーンのある映画でした!

はい、以下感想です!

最後の決闘裁判

あらすじ

1386年、百年戦争さなかの中世フランスを舞台に、実際に執り行われたフランス史上最後の「決闘裁判」を基にした物語を描く。騎士カルージュの妻マルグリットが、夫の旧友ル・グリに乱暴されたと訴えるが、目撃者もおらず、ル・グリは無実を主張。真実の行方は、カルージュとル・グリによる生死を懸けた「決闘裁判」に委ねられる。勝者は正義と栄光を手に入れ、敗者は罪人として死罪になる。そして、もし夫が負ければ、マルグリットも偽証の罪で火あぶりの刑を受けることになる。人々はカルージュとル・グリ、どちらが裁かれるべきかをめぐり真っ二つに分かれる。

映画.com

監督

監督を務めたのは、『エイリアン』リドリー・スコット

SF映画の印象が強い監督かと思いますが、ホラーの『ハンニバル』から、『グラディエーター』まで、幅広いジャンルを手掛けている名監督です!

リドリー・スコット御年83歳!!しかも、僕と同じ誕生日!!年齢は約60個くらい上ですけど。

今後は『ハウス・オブ・グッチ』の公開も控えていたり、まだまだ活躍していくことでしょう!

 

ちなみに脚本は俳優としても出演している、マット・デイモンとベン・アフレックのコンビと、ニコール・ホロフセナーが担当しています。

このふたりは『グッドウィルハンティング』でも脚本を書き、出演もして、オスカーまで獲得したコンビ。

ハリウッドきっての仲良しってこともあって、今作を鑑賞した理由も二人のタッグ作ってことが大きいです。

キャスト

主演はマット・デイモン。誇り高き……というより、プライドが高く過ぎる騎士様を演じており、普段の姿とは大違い。

大親友のベン・アフレックはデイモンと敵対する、伯爵役。金髪のアフレックが観られます(笑)

共演は『スター・ウォーズ』続3部作でカイロ・レン役を演じたアダム・ドライバーと、『フリーガイ』での演技が記憶に新しい、ジョディ・カマー

4人とも観客の感情をざわつかせる素晴らしい演技を披露していましたが、感想は後ほど。

 

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評価

僭越ながら『最後の決闘裁判』の満足度を★10段階であらわすと…

 

★8

 

ドラマとアクションが見事に両立!

決闘前の緊張感あふれる空気に始まり、淡々と語っていく中盤、そして貯めた力を吐き出すかのようなラストの決闘。

この流れが非常に素晴らしく、ドラマには心を動かされ、アクションでは手に汗握る!

強弱のつけ方というか、観客の気持ちを作っていくのが上手い映画だと思いました。

 

まさに制作者の手のひらの上で踊らされ続けた、2時間半!

若干「羅生門」パートが長いと感じましたが、最後まで観てしまえばそんなこと気にならない!

リドリー・スコットや、デイモン&ベンアフの新たな代表作になるのではないでしょうか。

 

ここから先は映画のネタバレを含みます!

まだご覧になっていない方はご注意を!!

 

感想(ネタバレ)

羅生門パート

今作はひとつの事件を3人の視点から語っていく、黒澤明監督作品『羅生門』とおなじスタイルの作品です。

事件の主な流れは、暴行を受けた女性が夫とともに加害者を告発。しかし、舞台が中世ですから、実際に起きたことは誰にも分らない。

そこで、事件とそこにいたるまでの顛末を被害者、被害者の夫、加害者の視点から見せてくれるという方式をとっています。

 

『羅生門』も同じようなスタイルの映画でしたが、どのエピソードも「証言」だったため、語り部によっては見栄と嘘が混じっていました。
「証言と実際の行動は全然違うじゃん!」みたいな、人間の醜さが伝わってくる映画だったんです。

しかし、今作の場合は証言ではないため、見たもの・聞いたものに嘘は混じっていません。あくまでも、自分の主観で語られていくもので、都合のいいように解釈している部分が見受けられます。

描かれる事件がレイプということもあって、男女の視点の差が浮き彫りになっていく映画でした。

視点による細かい違い

物語のはじまりは騎士のジャン(マット・デイモン)の視点から。

彼は親友だったル・グリ(アダム・ドライバー)に領地を取られ、職を取られと、さんざんな人生を歩んでいました。しかし、美しい妻をもらって、これから幸せな人生を送っていこうとしていた矢先、事件が起こります。

これまで散々ジャンを苦しめてきたル・グリが、妻のマルグリット(ジョディ・カマー)を襲ったのです。しかし、証拠がありません。

妻の名誉を守るため、ル・グリに報いを受けさせるため、ジャンは「決闘裁判」という方法をとり、命がけで勝利をつかもうとしますが……。

 

はい、ここまでが誇り高き騎士ジャンのお話。

ここだけ見ると、不幸な目に遭ってきたジャンが妻のために命を懸けて決闘を挑む…というように見えます。

しかし、後に妻の視点に変わった際には、彼自身が妻に冷たくあたる夫だったことが判明し、マルグリットのことも子供を産む道具にしか思っていません。

決闘を挑んだ理由も妻のためというよりは、「俺の持ち物を汚しやがって!」という感情の方が正解かも。もしくは、憎きル・グリを正当に征伐できる理由を見つけた!と思っていたか。

中世の出来事だとしても、決して良い夫とはいえないでしょう。

そんな感じで、3人の視点によって観客が受ける印象が全然違ってきます。特に顕著に出ているのが、次のふたりでして…。

男女の差

続いて、ル・グリの視点から。ジャンのときには分からなかったけれど、彼自身女好きで伯爵とともに乱交パーティまで興じる始末。

そんな恋多き男だったル・グリが、人妻であるマルグリットを愛してしまいます。

そして卑劣な行為に及ぶわけですが、このシーンは男性側の視点から描かれていたんですね。「嫌よ嫌よも好きのうち」じゃないけれど、マルグリットも行為を楽しんでいると思いこんでいるわけです。

観客から見ても、「あれ?そこまで嫌ではないのでは?」と疑問を感じてしまう演出で、的確にル・グリの視点を再現しています。

 

しかしながら、続くマルグリットの視点では、暴行を受けている表情をアップでとらえていきます。そこには、涙を流しながら屈辱に耐え、必死で抵抗するマルグリットの表情が。

ル・グリの視点とは全然見え方が異なり、そこには真実があります。ここで観客はマルグリットが嘘をついておらず、正義は彼女にあると確信するわけです。

男である僕から見てもキツイシーンですし、ジャンもル・グリも所有物としてしかマルグリットを見ていないことに気がついてからは、なんだか居心地が悪くなるような思いで。

 

また、マルグリットに対して裁判官のような男たちが、行為の最中の感情について聞く場面もあったり。

これは完全にセカンドレイプの問題を反映させていますよね。どれだけマルグリットを苦しめれば気が済むんだ……。

寄ってたかってマルグリットに群がる男どもに強い嫌悪感を抱きはじめたところで、注目の決闘シーン。

決闘

ここまでくると、ル・グリもジャンも凄い自己中心的な理由で、愛する女のためではなく、見栄とプライドのために戦っていることがわかります。

悪なのは行為に及んだル・グリなわけですが、ジャンに対しても応援したいという気持ちが起きません。

「こんなんで決闘大丈夫かよ」と思っていたら、ジャンが負ければマルグリットも殺されるという超理不尽な展開に。

決闘裁判というのは、どんな理由があれ決闘に勝った側が完全勝利するシステムです。つまり、ル・グリが勝てば彼の証言が真実だと確定し、マルグリットは嘘をついたということで裁かれてしまう……。

普通の映画なら悪をくじき、マルグリットの勝利で終わるわけですが、なんかこの映画に王道は通用しない気がする……。本気でマルグリットが殺される展開もありうるぞと。

 

さまざまな理由が重なり、本当に目の前で戦いが行われるかのような臨場感を持って、決闘シーンに臨むことができました。

『羅生門』では決闘しても逃げ腰で、情けない男たちの勝負が繰り広げられたんですが、今作はふたりとも公衆の面前ということもあってか本気で戦います。

戦いの結末は書きませんが、とにかく手に汗握るバトルだった。ついつい前のめりになっちゃって、ちょっと恥ずかしい思いもした。

観客にできることは祈ることだけ。醜い男たちの戦いを、ただ傍観するだけ。

 

以上!!!


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