
西部劇を観るたびに、「俺は何故この時代に生まれなかったんだ…」と思うんですよね。
それは日本の時代劇を観ても、中世ヨーロッパが舞台の映画を観ても思うことなのですが、西部の暮らしに憧れがありまして。
腰にリボルバーを携えて、馬を乗りまわし、バーでマズそうなウイスキーを飲む。派手な戦いなんていらない。西部劇の世界で暮らせればいいんだ!!
つまり、『ウエストワールド』が現実にも欲しいわけ。ドラマでは色々ありますが、西部劇好きにとっては夢のような世界だと思うんだよね。
そんな西部劇に対する憧れを語ったところで、今回の映画、
ザ・ハーダー・ゼイ・フォール 報復の荒野
の感想に参ります!
サブタイトル的には復讐モノかな。西部劇にはよくあるストーリーですが、どうなんでしょう。
この記事では『ザ・ハーダー・ゼイ・フォール』のネタバレを含んでいます
まだご覧になっていない方はご注意を
ザ・ハーダー・ゼイ・フォール
あらすじ
犯罪組織のボス、ルーファス・バックが赦免されたと聞き、かつてのギャング団を再結成したナット・ラブ。ならず者たちの命がけのリベンジがいま幕を開ける。
キャスト
主演を務めたのは、MCUの新ヴィランである征服者カーンを演じる、ジョナサン・メジャース。
今作では復讐に燃えるガンマンを演じておりまして、カーンのイメージとは大きく異なる役柄となっていました。
極悪非道な悪役には『ワイルド・スピード スーパーコンボ』のイドリス・エルバ。今年は『ザ・スーサイド・スクワッド』で主演を務め、新ジェームズ・ボンドを演じる噂が再燃したりとか、なにかと話題になった俳優ではないかと。
ヒロインは『デッドプール2』のザジー・ビーツ、『ビール・ストリートの恋人たち』でオスカーを獲得したレジーナ・キングが出演しております。
出演者は黒人の役者がほとんどですね。果たしてこれはブラックムービーと言えるのか、否か。
評価
僭越ながら『ザ・ハーダー・ゼイ・フォール』の満足度を★10段階であらわすと・・・
★4
「後味の悪い西部劇だな」
これは大きく好みが分かれる作品であると思われます。
僕としては中盤の大立ち回りからの、アクションではなく演技とドラマに振り切った静かすぎるラストは、あまりにも唐突すぎたかなと。
悪役であるルーファスの残忍さを徹底的に描いておきながら、最後には気持ちよく成敗させてくれません。
アクションとして楽しめばいいのか、ドラマ部分を楽しめばいいのか…。
「両方だろ!」という意見もありそうですが、両立してないんだよな。
キャラクターの行動についても疑問を感じる部分があり、終始はてなマークが浮かんだのが正直なところ。
今作は敵も味方も全員黒人という作品で、白人と黒人の対立構造というのは表立って描かれていません。
セリフの節々では見られるけれど、真剣に銃を撃ちあったりとかはなく、黒人同士の戦いにフォーカスしているんですよね。
そういった意味ではこれまでの西部劇にはなかった、新しい映画になっていたのではないかと。
この先も『ザ・ハーダー・ゼイ・フォール』に関するネタバレが含まれています
まだご覧になっていない方はご注意ください!
感想(ネタバレ)
イドリス・エルバの徹底した悪役っぷり
今作は主人公サイドよりも、悪役に魅力がある映画です!
魅力…とはいっても、応援したくなる「かっこいい悪役!」ってワケじゃなく、全員どうしようもない悪人なんですよ。しっかりの観客のヘイトを稼いで、強烈な印象を残していく奴らでありまして。
特にイドリス・エルバが演じた、ルーファス。彼は主人公ナットの両親を彼の目の前で殺害し、ナットの額に傷をつけた極悪人です。平気で人は殺すし、誰に対しても手加減はいっさいなし。
ナットの恋人を人質にとって、敵をも思い通りに動かそうとする、内面的なクズさも併せ持っています。
さらに、仲間たちも相手が油断したところを狙う早撃ちガンマン、ヒロインとは正反対のガンスリンガーなど、クズ中のクズばかり。悪人のくせに気取った態度をとっていて、そこもまた観客の感情をくすぐるところかなと。
「さっさと倒されてしまえ!」
この手の悪人には制裁が必要!それもド級のヤツを!
普通のアクション映画の流れならば、嫌な奴が登場し、主人公が負けそうになり、それでも復活して悪を懲らしめる……という流れになりますね。
今作も例に及ばず、上記のような流れで進んでいくのですが、最後が納得いかなくて。という話を次の項目で書いていきます。
キャラクターの行動に疑問を感じる
この映画を観ていると、「え、なぜ今そんなことするの?」と思うことがしばしば。
まずザジー・ビーツ演じるメアリーが、なぜか単身ルーファスの本拠地に乗りこんでいった場面。
「私なら酒場を経営しているし、儲け話と言って騙せるわ」と単独行動をとるのですが、映画のお約束とかを抜きにしても、騙せるわけがなくね?と思うわけですね。
というのも、ルーファスは脱獄したばかりで、金も盗まれている状況。そもそもルーファスが支配する街って、1万ドル集めるのもやっとなくらい小さい街なのに、有名な女性店主が店開こうと提案するか?それも敵の本拠地で?
案の定、ルーファスにはすぐにバレてしまい、特に抵抗もせず取っ捕まる始末。
その後、ナットらが街に乗りこみ、メアリーを助けようとするのですが、計画も何もなし。戦隊ヒーローみたいな超目立つ登場の仕方で街に現れ、メアリーを人質にとったルーファスにソッコーで捕まるという、疑問しか感じない展開。
「何がしたかったのかな?」
観客としてはナットに何か策があって、ルーファスを出し抜ける算段がついているのかと。まさか無計画であんなカッコいい登場の仕方するなんて、思わないじゃないですか(笑)
その後も、ルーファスの言いなりになって白人の街に銀行強盗に行くという展開。
この場面では白人の街らしく、建物も地面も全部白という皮肉の効いた演出がされていますが、銀行強盗自体にはあまり意味がないような……。もちろん、当時の人種差別を描けるシーンではあったのだけれど。
そんな感じでラストまで疑問が浮かびっぱなしだったのですが、最後はルーファスの仲間たちとの直接対決に。途中のシーンなんだったんだと思うくらい、直球の展開ですが、それは置いておきまして。
ここからは西部劇好きのみならず、アクション映画ファンでも楽しめるような、スタイリッシュなアクションをクロスカッティングで映し出していきます。女性陣もガンスリンガーとして一緒に戦い、観客の中にも溜め込まれてきたルーファス一味に対する怒りも乗せて、かなり爽快感のあるアクションに仕上がっていました。
ただ、問題は悪の権化であるルーファスと主人公・ナットの戦いがなかったこと。
緊張感のある早撃ち対決でも、殴り合いでもなく、まさかの会話のやり取りでケリをつけるという展開に。そんないきなり『セブン』みたいなストーリーになっても……
これに関しては恐らく賛否あるでしょう。
僕としてはしっかり決着をつけてほしかった。ここまで気持ちよくない西部劇のラストは体験したことがなかったかも。
そもそも告白する場面はそこじゃなかった。映画的にはどんでん返しが欲しかったのかもしれませんが、最初にナットが拷問を受け、カミソリを手渡した場面で真実を話すべきだったのでは。
予め真実を知っていれば観客としても最後の戦いにもっと力が入ったし、ルーファス対ナットのシーンにしてもスムーズに事が運んだのではないかと。
とはいえ、この感情も含め、この映画なんだなぁと。「おい!ここで終わるなよ!ちゃんと戦ってくれよ!」と観客に思わせることも、制作者が意図しているのかもしれないね。
僕はあまり好きではありませんが。
最後に
僕としては久しぶりの西部劇となりました!
今作は色々な面から語れる映画だと思っていて、人によってはブラックムービーとして目には見えない白人との対立関係を語るかもしれないし、随所に使われていた音楽と映像の親和性などについても語れるはず。
海外のレビューを読んでみると案の定高評価。日本生まれ日本育ちの僕には理解できない何かがあったのでしょう。
やっぱりこんなブログ書いているよりも、西部開拓時代に馬を育てていた方が、僕の性に合ってると思うんだよ。
強盗に襲われたりしても、西部開拓時代ならば楽しくやっていけるでしょう。
というわけで、久しぶりに『レッド・デッド・リデンプション2』でもやりますか。
アーサーになって馬で西武を駆け回るんだ!!
以上!!!
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