
『ザ・バットマン』、評判に違わず素晴らしかった!
バットマン映画といえば『ダークナイト』って印象があると思いますが、これからは人気を二分するんじゃないかと思うくらいでした。
『ダークナイト』とは方向性が全然違うので、どちらが優れているとか簡単に言えないのですが、それに匹敵するくらいの作品であることは間違いなさそうです。
そんなわけで!
今回はバットマン大好きな僕が、『ザ・バットマン』を褒めまくる記事を書く回です。
ザ・バットマン
作品解説
今作はバットマンのストーリーをリブート、つまり1からやり直した作品です。
そのため過去のバットマン映画とは繋がっておらず、過去作を観ていなくても大丈夫な作品として作られています。
他のバットマンと比較できるという点においては、過去作を知っていた方がもちろん良いのですが……。
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今作のバットマンの特徴はとにかくダーク。これまでのバットマンも“ダークヒーロー”として描かれていたんだけど、今回は話も暗めで、重いストーリーが展開します。
なにしろ上映時間が3時間あるからね。そりゃ重厚な映画になるわなって感じで。
そんな今作の監督を務めたのは、新生『猿の惑星』2作品を撮った、マット・リーヴス。
僕の中では現実問題を入れ込んだ商業映画を作る監督ってイメージがあります。『ザ・バットマン』も大衆向けな面白さがありながらも、社会派の側面がある作品ですしね。
キャストの方を紹介していきますと、バットマン/ブルース・ウェイン役にロバート・パティンソン。
近年は『テネット』とか、『悪魔はいつもそこに』などの話題作に立てつづけに出演。有名な役では『ハリーポッター』のセドリック・ディゴリーかな。『トワイライト』でブレイクした当初はアイドル俳優的なイメージがあったのですが、現在は渋さも増して怪しい魅力を持ったキャラを演じることが多い気がする。
一方、バットマンと敵対するリドラー役には『スイス・アーミー・マン』のポール・ダノ、ペンギン役には『ロブスター』のコリン・ファレルが起用されております。どちらも癖強なヴィランを演じているんで、バットマン以上に注目です。
その他キャストは、ゾーイ・クラヴィッツ(キャットウーマン)、ジェフリー・ライト(ジェームズ・ゴードン)、アンディ・サーキス(アルフレッド・ペニーワース)などなど。
ザ・バットマン 感想
スルメ的評価
ストーリー | ★★★★★ 5/5 |
キャスト | ★★★★★ 5/5 |
演出 | ★★★★★ 5/5 |
映像 | ★★★★☆ 4/5 |
音楽 | ★★★★★ 5/5 |
総合評価 ★8/10
「この作風で来たか!!」
今回のバットマンはヒーロー映画というよりも、探偵映画です。
おそらく『セブン』や『ゾディアック』を意識していて、リドラーの殺害方法から、謎解きの手段までデヴィッド・フィンチャー味の強い作品でした。
バットマンって実は「世界最高の探偵」なんですよね。
戦うイメージがあるかもしれないけれど、彼にはスーパーパワーがないんで、頭で戦うタイプのヒーローなのです。
だから超人ばかりが集まる『ジャスティス・リーグ』では、「本来の実力発揮できてないんじゃないかな~」と思ったりするわけですよ。
しかし!今作はその地味な部分を逆手に取って、完全なる探偵映画にしてみせた作品です!
さらにはブルース・ウェインという人間にもフォーカスしていって、彼の苦悩や怒りといった部分にも切りこんでいました。
個人的にはライバルのマーベルができない領域で、バットマンを徹底的に活躍させてみせた作品に思えますが、どうでしょう?
もっといいところがたくさんあるので、以下ネタバレありで語っていきたいと思います!
※ここから先は『ザ・バットマン』のネタバレが含まれます
マスクの下にも素顔はない
ストーリーとかを抜きにして、僕の一番好きな実写版バットマンは、ベン・アフレックのバットマンでした。
今作を観てもそれは変わらないし、あそこまで筋骨隆々なバットマンを作って見せたベンアフに、称賛の言葉を送らずにはいられません。
ただ!バットマンではなく、ブルース・ウェインとしては『ザ・バットマン』が一番だったかなと。
今作のブルースは過去作以上に犯罪者に対する憎しみがにじみ出ています。「絶対に悪を滅ぼしてやる」という執念が、過去のバットマンやブルースと段違いなんですよね。
そんなブルースのキャラクターを反映してか、今作では目の周りの黒塗りが残った素顔が印象的に映されています。
© 2022 WBEI TM & © DC
この化粧はマスクと皮膚の境界線を埋める役割があるんですが、「マスク脱げてないじゃん!」みたいな印象を与えるんですよね。例えるなら、オンとオフを全然切り替えられない仕事人間みたいな……。マスクを脱いでも、化粧を落としても、やっぱりバットマンの面影が付きまとう。
これまでのブルースは“表の顔は華やかなプレイボーイ”って側面もあったのに、今回は表の顔ですら陰鬱で、バットマンの持つ二面性をまったく描いてないんですよ。
この点に関しては「大胆な決断をしたな」と驚きを隠せません。
そんな大胆な改変もあってか、今作ではよりブルースの内面にフォーカスされているように思えました。
悪に対する強烈な憎しみ。マスクを脱いでも絶対に剥がれないその憎しみこそが、彼を突き動かしていたんですね。
これは本当に狂気の世界ですよ。下手したら悪人になってもおかしくない、ジョーカーやリドラーとは違う意味で狂気に陥ってしまっているブルースを描き続けています。
けれど、そこに救いもあってですね。映画の最後では彼がヒーローとしての役割に気がつき、アンチヒーローからダークナイトへと移行していく様子も描かれました。
序盤のシーンと比較すれば、この成長が一目でわかります。
映画序盤では駅で襲われているアジア系の男を救いますが、これは悪を退治し、結果的に助けたにすぎません。このシーンでのバットマンの目的は悪への復讐であって、男を助けることではなかったんですね。
しかし、映画の最後では自分と同じように父を失った少年を救い、ゴッサムを変えるであろう市長候補を救います。そして自らが好んでいた暗闇を明るく照らし、ゴッサム市民を救うと。
このふたつのシーンを比較するだけで、ブルースという男がリドラーとの戦いを機に、どう成長していったがが明確に分かるようになっているのです。
「2年目だけどバットマンのオリジンになっているんだよね」
序盤のブルースはバットマンではあるけれど、公私混同しまくっている、仕事に私情を持ちこみすぎている人でした。
そこから復讐ではなく、亡き父が守ろうとしていたゴッサムを自分が守るという方向にシフトしていくと。
つまり、この映画は『バットマン ビギンズ』とは異なるアプローチでバットマンのオリジンを描いていく作品なのです。
これをバットマンの転換点と捉えることもできるけど、やっぱり原点(オリジン)という表現のほうが近いと思う。なぜなら「復讐者」と「守護者」とでは全然性質が異なるから。
序盤から音楽やアクションでバットマンの過激さや暴力性が強調されていたのは、守護者にシフトしていく過程を強烈に印象付けるためだったのか。考えれば考えるほど、構成の上手さに感動してしまう、完成度の高い作品でしたね。
言いたいことをまとめると、
『ザ・バットマン』はバットマンの原点を面白く、そしてめちゃくちゃ深く描いてしまった最強のヒーローオリジン映画ってこと
少なくとも、僕の中では『バットマン ビギンズ』は大きく超えたかなー
……まだ、終わりじゃないんで引き続きお付き合いください(笑)
リドラーの恐怖と復讐心
続いて、もうひとりの中心人物・リドラーについて書いていきます。
リドラーは過去作ではジム・キャリーが演じたり、ゲームでは街中にトロフィーを隠しまくったりと、どちらかといえばネタ枠感強めなキャラだと思うんですよね。
しかし、今回のリドラーはバットマンと同様に復讐という名の狂気に駆られた、シリアスすぎるヴィランとして登場します。
で、彼のキャラクターというのがバットマンの鏡映しのような設定でして。
リドラーは孤児として生まれ、大人たちの愛情を受けずに育ってきました。そんなある日、ブルースの父であるトーマス・ウェインが孤児院への支援を発表。しかし、トーマスの死により、その資金は裏社会へと流れ、巡り巡って孤児たちを苦しめていた麻薬へとつながっていきます。
リドラーはそんな腐りきったゴッサムの裏社会、そして裏社会に通じる汚職まみれの権力者たちに復讐しようと考えるのです。
「動機がバットマンとそっくりだね」
現行犯で悪人たちを退治するバットマンと、綿密な計画のもとで裏に隠れた悪人たちをあぶりだしていたリドラー。
劇中では敵対する二人だけれど、一歩間違えればバットマンもリドラーのようになっていたかも。
リドラーがアーカムで「復讐だ」といった姿が、序盤のバットマンと重なり、ふたりの善と悪の境界線があやふやになっていく。
「悪とは?」「正義とは?」なんて単純な言葉では語れず、もはや何が正しいのかすら分からなくなっていきます。
さらに面白いのが、リドラーの復讐心はブルース・ウェインにも向いているということ。
トーマスの正義が揺らぐエピソードが挿入されて、「父のためと思って戦ってきた今までは間違っていたのか?」とバットマン側の正義を根底から覆すような展開にもなります。
自身が信じてきた復讐心とまったく同じものを他者から向けられてしまう。この「復讐」という言葉をキーワードに、円環をなしていくストーリーこそが、今作一番の魅力なんじゃないかと。
「復讐なんて新しい復讐を生むだけよ」って語りつくされたお話を、バットマンのオリジンとして再構成されているのが今作といえるかもしれません。
リドラー関連で語りたいことがもうひとつ。
個人的に今作のリドラーは『タクシードライバー』のトラヴィスを意識しているんじゃないかなぁと。
トラヴィスはベトナム戦争の帰還兵で、仕事も友達もなく、街の汚さに嫌気がさしていた人です。最後には彼の中の何かが爆発し、行動を起こしてしまうという今作のリドラーや、『ジョーカー』などに通じる映画史に残るキャラクターですね。
『タクシードライバー』の劇中では「この街を水洗トイレのように洗い流したい」というセリフがあります。トラヴィスは実行に移しませんでしたが、リドラーは実行に移そうとしていますよね。堤防を破壊するという形で。
「なぜ堤防なのか?」と考えた時に、もちろん街を混乱に陥れるといった意味もあるでしょうが、リドラーもトラヴィスと同じ思想を持っていたのかなと思ったり。
腐ったゴッサムを冷めた目線で見つめるバットマンにも、トラヴィスの影響ありそうですし。
スコセッシ恐るべし!ってことで、リドラーの話はおしまい!
今回のバットマンのアクションは……
今作は比較的アクション少なめなバットマン映画だったのですが、めちゃくちゃ好きなアクションシーンがひとつ。
それは映画終盤、アイスバーグラウンジにて。
マズルフラッシュ(銃が発射される際の光)だけで、バットマンのアクションを撮っていくというシーンが感動モノでした。
これは『ローグワン』のダースベイダーシーンを思い出しましたね。最近は『バイオハザード:ウェルカムトゥラクーンシティ』でも同様の演出があって感動したばかりだったので、まさか同じことをバットマンでもやってくれるとは……!
あと全体的に言えることですが、今作のバットマンのアクションは痛めつけることに長けてましたね。
一発一発に殺意がこもっているというか、悪に対する憎しみの強さが拳から感じられるっていう。
「このバットマンにだけは殴られたくない……!」
それでいて絶妙なダサさもある。
警察署の屋上からダイブするシーンで、コウモリの翼でなくムササビスーツで飛び、着地にも失敗するところとか……。バットラングが胸のマークから飛び出てきたりとか、「なんだそれ!ダセェ!」って感じてしまうシーンも。
いつかは完ぺきにこなしてくれるんでしょうが、今は2年目。まだまだ磨きのかかっていないバットマンのアクションも楽しい。
あとアクションとは関係ないけど、バットマンのテーマ曲とその使い方も大好き。
クドいくらいだけども、あの圧迫感といいますか、「バットマン正義の味方じゃねーのかよ!」ってくらい恐ろしく演出してしまうのが今作らしい。
さらにアクションとは無関係だけど、コリン・ファレルのペンギンも良かった!
リアルとファンタジーの中間を行く感じがなんとも……。これは『ダークナイト』3部作じゃ出せなかったと思うし、DCユニバースにも合わなそう。
リドラーと並んで、好印象な悪役キャラでした!
残念だった部分
最後に残念だったというか、気になった部分を書いて終わりにしたいと思います。
まず最初に「今回のバットマン、警察と密接すぎね?」ってこと。
2年目のバットマンを描いているので、それなりに警察とは関係があったのでしょう。ゴードンとも完全にコンビを組んでいて、終盤なんかは「ロビンになれば?」ってくらいバディムービーぽいですし。
ただ、警察という組織になったら話は別。いくら協力してくれるとはいえ、コスプレ男を事件現場に平気で入れるか?
一部の警官は「関係者以外立ち入り禁止だぜ」みたいに、バットマンに反感を持っている人もいる描写がありますが、あまりにもぬるすぎる。
ゴードン「彼は私が呼んだんだ」
他の警官「……おお」
いや、止めろよ(笑)
2年目だから警察との信頼関係があるというなら分かる。なら、「バットマンさん!どうぞこちらへ!」くらいの歓迎ムードを見せてほしい。
あきらかに歓迎してないのに、普通に捜査には加えちゃうから、序盤から違和感あるんだよな~
そして、キャットウーマンとバットマンのキスシーン。
これまでのやりとりで、セリーナがバットマンに惚れる要素あったかな~。
僕が見落としているだけかもしれませんが、イマイチ見つけられなかったんですよね。正直キスシーン並びに恋愛描写はいらないと思うし、このふたりは仕事だけの関係でいてほしかったところ。
この辺はもう一度観て確認しておきます!
あとはラストの展開ね。
ジョーカー示唆して終わるって『バットマン ビギンズ』と同じすぎね?
これに関しては考察が捗るところなんで、歓迎ではあるんだけど、映画好きとしては予想通りすぎるから何とも……。
せめてエンドロールの後に持ってきて、「映画とは別枠ですよ」感を出してほしかったです。
続編に関しては別で記事を執筆しましたので、こちらをご覧ください。
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最後に
すいません、熱く語り過ぎましたね。
いつもは大体3000字くらいに収めようと頑張っているのですが、今回は倍近く書いてしまった。読みにくかったらごめん。
もっとキャットウーマンとかペンギンについても書きたかったのですが、他にどうしても削れない部分が多くて。まぁ自己満ですけどね(笑)
そんなわけで僕は大いに満足し、楽しんだ映画だったのですが、これまでのバットマン映画と作風が違うことから賛否分かれそうではある。
3時間という長尺映画だし、暗いしで人を選ぶ映画ではあるのかな。
今年はバットマンふたり(ベンアフ版、マイケル・キートン版)が登場する『ザ・フラッシュ』もありますし、アニメ版ですがキアヌがバットマン役をやるというニュースも。
改めて2022年はバットマンイヤーになるのかなと。
バットマンファンの皆さんは、そんなバットマン作品たちへの期待感を持ちつつ、今年も頑張りましょう!
以上。
『ザ・バットマン』続編とラストシーンに関する考察はこちら
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