映画『アルプススタンドのはしの方』ネタバレ感想 ガチではしの方にいた俺には響かない

スルメ
どーも、スルメです

公開当時から注目していた『アルプススタンドのはしの方』をようやく鑑賞したので、軽く感想でも書いてみようかと。

僕自身、高校時代は本当にはしの方いて、めちゃくちゃ冷めた目線で周囲を観察していたんですよ。

なので僕が普段から青春映画に対して抱えている、ある種のコンプレックスを今作が解消してくれるんじゃないかと。

そんな期待も持ちながら、Netflixですが鑑賞して参りました!

アルプススタンドのはしの方

あらすじ

夏の甲子園1回戦に出場している母校の応援のため、演劇部員の安田と田宮は野球のルールも知らずにスタンドにやって来た。そこに遅れて、元野球部員の藤野がやって来る。訳あって互いに妙に気を遣う安田と田宮。応援スタンドには帰宅部の宮下の姿もあった。成績優秀な宮下は吹奏楽部部長の久住に成績で学年1位の座を明け渡してしまったばかりだった。それぞれが思いを抱えながら、試合は1点を争う展開へと突入していく。

映画.comより抜粋

作品解説

元々は舞台用に書かれた戯曲でして、高等学校演劇大会で最優秀賞を獲った名作舞台でした。

その後、舞台に目をつけた奥村徹也さんが、新キャストをオーディションで集めてリメイクし、浅草で公演。

今作は奥村徹也さんが脚本を執筆した、リメイク版を映画化した作品となります。

キャストは舞台版と同じく小野莉奈、平井亜門、西本まりんなどを起用し、『ガチバン』などで知られる城定秀夫監督がメガホンを取り、映画化が実現しています。

 

ストーリーとしては、甲子園の観客席(アルプススタンド)の隅っこに座る生徒たちの人間模様を描いてく会話劇です。なにか大きな事件が起きるとか、恋が成就するとかそういったことは起こりません。

スクールカーストでいうところの、下位に位置するであろう人々の言っちゃ悪いけど比較的地味な青春劇になっているんです。

どこにでもあるような人間模様をどう観客に届けるかってところが焦点になる、現代らしい青春映画といえなくもないのですが…。

※以下は『アルプススタンドのはしの方』のネタバレを含んでいるので、ご注意ください。

感想

スルメ的評価

ストーリー★★☆☆☆ 2/5
キャスト★★★☆☆ 3/5
演出★★★★☆ 4/5

総合評価 ★5/10

 

「残念なところも多々あったかなぁ」


「今風」の青春映画、つまりスクールカースト下位の人たちにも目を向けた青春映画だと期待していましたが、残念な結果に。

70分間飽きさせない会話劇の面白さとか、徐々に心が繋がっていく4人の関係とか、素晴らしい部分は多々ありました。

しかし、終盤の方は時代遅れともいえる古臭さ感じさせる展開に。結局は僕があまり好きではない青春映画の方向に行ってしまって、少し悲しい思いをする映画となりました。

以下、短いですが感想です。

短い時間に詰め込まれた青春

上映時間は75分。近年の映画の中ではかなり短い方で、サクッと観られる映画ではありました。

しかし、物足りなさはまったく感じず、むしろ会話しかしてないのに濃密な映画体験ができた作品だったと思う。野球を観ている映画なのに、野球のシーンが一切なかったのもポイント高いです。

僕は野球自体観たことがないし、ルールもあまり知らないので、キャラクターたちの口から実況される方が分かりやすかったりするんだよね。

また、キャラクターたちの座っている位置と、心が通っていく過程がリンクしているのも面白い。

最初はバラバラに座っていて、宮下さんなんて席にも座らず後ろの方で立っていたのに、それが徐々に横並びになり、最後は立ち上がって応援する。

「なんか綺麗にできすぎてるなー」と思うけど、細かい演出にも気を配っているからこそ、75分という短い時間でも4人の関係性を描き切れたんだと思うんだよね。

 

あと、共感できたのは「野球部ってなんか偉そうじゃない?」という会話。

野球部だった人には申し訳ないけど、めっちゃわかる!!!

野球部ってなんで休み時間のたびに集結して、廊下をゾロゾロ歩いてるの?とか、学生時代思ってましたから。

僕の高校って野球部クソ弱くて、甲子園なんて夢のまた夢って感じだったんですが、それでも偉そうだったからね。

やっぱ部員数が多いし、メジャースポーツだから偉そうになっちゃうのかな?だれか調査してほしいですね。

高校生あるあるの愚痴も聞けたし、「ひょっとして、めずらしく共感できる青春映画なのでは?」と思ったのですが…。

中途半端な人々

まず最初に思ったのは、この映画の4人は全員中途半端な状態から始まるんですね。

「サボろうと思ったけど、やっぱ来ちゃった」というセリフがあるように、なんとなく皆が行くから行くって気持ちで甲子園に来ていると思うんですよ。

で、彼らはぐちぐち言ってはいるけど、本当は一人じゃなくて集団の輪に加わりたいタイプの人たちなんだよね。陽キャの輪に入る勇気がない人たちというか、すぐに応援する気持ちに切り替えたあたり、本当に中途半端な感じがする。

そんな彼らが野球の応援を通じて、集団の中に加わっていくという映画になっているわけです。

「心変わりするの早くない?」

僕もそのタイプの人だったら、超共感してたと思うけど、僕みたいなガチの陰キャはそもそも仮病使って休みますからねw アルプススタンドのはしの方にすら行かなかったでしょう。

ルールもよく知らない野球を、超暑いグランドで、しかも遠征までして観に行く理由がどこにあるよ?

そんなこともあって、この映画は学生時代に悔いを残してきた人たちに向けられていると、改めて思う。あのとき行動できなかった自分をキャラクターに投影して感動するような、まさに甲子園的な映画なんですよ。

いろいろな人がいたって良いのに

この映画のラストは結局友情を築きあげるというテンプレ青春映画になってしまっているのもいただけない。

マイノリティーの生徒たちを描いていたはずなのに、「やっぱこっちがいいんでしょ?」と、はしから真ん中に持ってきてしまう展開も好きではありません。終盤の歓声に飲み込まれていく様子は、若干恐怖すら覚えました。

世の中には色んな人がいて、それがだんだん周知されてきた現代。別に甲子園が嫌いな人がいたって、野球部を応援したくない人がいたって良いんですよ。だからこそ、出る杭を打ってしまうようなラストはモヤッとします。

熱血教師の描き方も気になっていて、彼自身、本当は野球部の監督になりたかったけど、茶道部の顧問になってしまった人でした。そんな背景も示唆されているのですが、その個人的な目標に生徒を巻きこむのはどうなのかなと。

「生徒一丸となって応援する」というのは、端らから見れば感動するし、ドラマ性も生まれるでしょう。出場している選手たちの励みにもなっているでしょう。

でも、やっぱり応援したくない生徒もいるんだよね。中には応援したいけど、恥ずかしくて声を出せない宮下さんみたいな人もいるかもしれない。そんな個人の事情を考慮せず、ひたすら自分の思い通りに生徒を動かそうとするのはどうなのだろう? 悪気はないだろうし、俳優さんの演技もあって良い先生なのは伝わってくるけど、モヤモヤしてしまったポイントでした。

「今はこういう先生ニガテな人多い気がするけど…」

そしてラストも個人的には矢野くんが打って、「カキーン」と音が鳴って終わるくらいの清々しさが欲しかった。

ボールはバットに当たったけど、外野が活躍してアウトになったかもしれないし、ホームランで逆転勝利をおさめたかもしれない。もしかしたらファウルになって、そのボールがあすはの頭に当たるのかも。

それくらい考察する余地を残した方が僕は好きですが、キチンと結果を見せた方がよかったのかどうかは受け取り手次第かな。

最後に

非常に評価が高い映画でしたが、僕にはイマイチ刺さりませんでした。

高校生のときは映画ばっかり観ていて、それ以外は無気力で生きてたからな~

「頑張れ」って言葉もそこまで好きじゃないので、理解するのは難しいところ。映画としての質はとても高く、役者さんたちの演技も観ていて楽しかったです。

とはいえ、もっと芯の強い陰キャを描いた作品が観たかったところ。

 

以上。


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