
今回は今年最も注目される邦画であろう、『シン・ウルトラマン』のお話。
タイトルの「来たぞ我らの…」の後に誰の名前が入るかは、ご想像にお任せします。
ウルトラマンでも、シンジでも、樋口監督でも、庵野秀明監督でも大丈夫!
この映画はですね、僕が2022年上半期でおそらく一番楽しみにしていた映画です。
あの『シンゴジラ』のタッグが復活し、初代を彷彿させる『ウルトラマン』を作るってだけで、期待せずにはいられないでしょう。
予告編の段階からワクワクが止まらねぇ!本編観ても興奮が収まらねぇ!
そんなわけで、公開初日に、しっかりM-08(87はなかった)の席に座って鑑賞しました(笑)
興奮冷めやらぬままの記事になります。どうぞよろしく。
シン・ウルトラマン
あらすじ
「禍威獣(カイジュウ)」と呼ばれる謎の巨大生物が次々と現れ、その存在が日常になった日本。通常兵器が通じない禍威獣に対応するため、政府はスペシャリストを集めて「禍威獣特設対策室専従班」=通称「禍特対(カトクタイ)」を設立。班長の田村君男、作戦立案担当官の神永新二ら禍特対のメンバーが日々任務にあたっていた。そんなある時、大気圏外から銀色の巨人が突如出現。巨人対策のため禍特対には新たに分析官の浅見弘子が配属され、神永とバディを組むことになる。
作品解説
1960年代に放送されていた『ウルトラマン』のストーリーを、現代に置き換え、新たに再構築した作品。
監督を務めるのは、『シン・ゴジラ』や平成ガメラシリーズで特技監督を務めた、樋口真嗣(以下、敬称略)。脚本には『エヴァンゲリオン』の生みの親・庵野秀明と、『シン・ゴジラ』のタッグが復活!
特撮ファンにとっては見逃すことのできない作品となっております。
そんな本作の主演を務めたのは、『麻雀放浪記2020』の斎藤工。本作ではウルトラマンに変身する、初代においてのハヤタに相当する役を演じております。実は『シン・ゴジラ』にも出演しているのですが、その関係性は……特にないのかな?
また、禍特対のメンバーとして、長澤まさみ、有岡大貴、早見あかり、西島秀俊などが出演。
登場する禍威獣(怪獣)は、初代に登場したネロンガやガボラ、外星人としてメフィラス星人とザラブ星人が登場予定。他にはどんな怪獣たちが登場してくれるのか……乞うご期待!
『シン・ウルトラマン』評価
ストーリー | ★★★★☆ 4/5 |
キャスト | ★★★☆☆ 3/5 |
演出 | ★★★★★ 5/5 |
映像 | ★★★☆☆ 3/5 |
総合評価 ★ 8/10
「思ったよりファン向けじゃなかったかな」
終始、興奮しっぱなしの2時間!楽しめないわけないでしょって内容でした。
少年時代からウルトラマンを追っている人にとっては、賛否分かれたりするんですかね?
僕は大人になって初代を観たもんで、かなり現代風にアップデートされた作品に思えました。
「ファンにしか楽しめない映画」を想像していたんですが、意外にも万人向けに作っている印象です。
もちろん、ファンサービス的な要素もあるし、ウルトラマンのアクションは初代マンの動きを踏襲しています。
シリーズを観ている人の方が楽しめることは事実だけど、「これが初ウルトラマン!」って人でも楽しめる映画になっていたと思う。
僕としては、大人たちはもちろん、今の子供たちに観てほしい映画かなと。
まっさらな状態でこの映画を観て、どのような感想を抱くのか。僕はそれがとても気になるのです。
というわけで、以下はネタバレこみの感想になります。まだ鑑賞していない方はご注意ください。
『シン・ウルトラマン』感想
現代によみがえった正義の化身
本作は『ウルトラマン』の5つのエピソードをつないで、ひとつの映画にした作品です。
採用された5つのエピソードは、
- 科特隊出撃せよ(ネロンガ)
- 電光石火作戦(ガボラ)
- 遊星から来た兄弟(ザラブ星人)
- 禁じられた言葉(メフィラス星人)
- さらばウルトラマン
どのエピソードも現代向きにアップデートされていて、説得力を持たせています。
特にザラブ星人、メフィラス星人が登場するストーリーは、『シン・ゴジラ』でもやったように政治色が強めで、いわゆる現代風「未知との遭遇」にもなっている点がポイント。
明らかに怪しいザラブ星人と、日本の総理大臣が面会するシーンなんて、ちょっと笑えてしまいますからね。外星人の技術を目的に、日本政府が不平等条約を結ぶシーンなんて、利己的な政治家なら本気でやりそうですし。
ネロンガ戦では「透明禍威獣なのに透明化解除したら意味ないじゃん!」とか第三者目線のツッコみがあったり、ガボラ戦では「ネロンガと下半身似てない?」とかメタ的なセリフが入ったり……。本当に『ウルトラマン』を好きな人が作っているシナリオになっているわけですよ。
「さらばウルトラマン」は、ウルトラマンがゼットンに負けてしまう有名なエピソードですが、本作のゼットンはまさかの衛星軌道上に置かれた兵器という設定。その姿はどう見ても使徒ですし、人類補完計画ならぬ、人類刈取計画が執行されます。
「ウルトラマンが負ける」、「ゼットンを人類が倒す」というオリジナルの設定はそのまま使って、正直ツッコミどころは多々あるけど、2022年のウルトラマンらしいラストでした。
ウルトラマン、人間を好きでいてくれてありがとう!
そして、ウルトラマンの扱いも痒い所に手が届いた設定があって。
僕、大人になってから初代を観たもんで、結構細かいところ気になっていたんですよ。どう考えても異星人のフォルムをしたウルトラマンを簡単に受け入れるし、ハヤタがウルトラマンだと誰も気がつかない。どう考えても不自然である!って。
一方、本作のウルトラマンは開始早々に正体がバレてしまいます。SNSで神永が変身する姿が拡散したり、日本政府も神永を外星人とし、一種の危険人物だと断定してしまうと。
この設定が用いられたことで、僕の中のモヤっと感がある程度解消されました。
正直、現実に銀色の巨人が現れたら、カイジュウと戦ったとしても、即座に正義のヒーローとするのは無理があると思う。『シン・ゴジラ』同様、そこら辺のポジション取りはかなり現代風にやってくれていました。
「僕を含め、Z世代の人たちも入りやすいんじゃないかな」
ウルトラマンのデザインも本編で観ると、さらに美しさが際だっていました。
劇中で長澤まさみさん演じる浅見が「あれがウルトラマン……。綺麗……」とつぶやくシーンがあって、僕は大きく頷いたのよ。ウルトラマンがカッコいいとか怖いとか、観る人によってさまざまだけど、やっぱり美しいんだよね。
背ビレ部分やカラータイマーが廃されたことで、余計にヌらっとした異物感が際立ち、もはや神々しさすら感じます。そんなボディから放たれるスペシウム光線は山肌をえぐり、初代マン以上の迫力。どちらもCGになったことの恩恵ですね。
ただ、一部シーンにおいては、特撮映像を再現したようなアクションもあって。初代を観た人にとってはうれしいけれど、映画ファンとしてはちょっと違和感がありましたね。
興奮ポイント
映画始まってすぐに、初代のオープニングと同じような演出が。本来なら『ウルトラQ』が出るところを、まさかの『シン・ゴジラ』のロゴが。シリーズが繋がっていることを示唆しているのか、歴史が進んだことを意味しているのか……。
鑑賞後には「シンで前作ならエヴァじゃね?」と思ったけど、ゴジラの方がしっくりくるかな。
続いて、ズラッとこれまで登場した禍威獣の紹介。その中にはマンモスフラワーやぺギラの姿が!一瞬しか登場しないけど、確かなサプライズ!
このときに登場したパゴスは、船縁により「ガボラと下半身が一緒!」とツッコまれてましたが、これはひとつのスーツを改造して複数の怪獣が作られたため。パゴスは『ウルトラQ』に登場し、『ウルトラマン』でネロンガとガボラに作り替えられています。
ちなみに最初に登場したゴメスは、ゴジラのスーツを流用した怪獣でした。本作のゴメスがシン・ゴジラっぽかったのはそのため。
ついにウルトラマンが登場!このシーンでは全身シルバーのボディですが、フェイスのデザインも若干異なります。個人的には口周りのデザインから、Aタイプの要素があるように思えたのですが、いかがでしょうか。
ウルトラマンの飛行シーンも初代マンを意識していて、CGなのに直立不動・超背伸び状態で飛んでいきます。スーパーマンのようなド派手なエフェクトもなく、スラっと飛び立っていく姿は、まさに日本が生んだウルトラマン!
エンドロールには初代マンのスーツアクター・古谷敏さんの名前が。モーションアクションアクターということで、本作にも数々の動きを提供しているようです。
ちなみにモーションアクターには庵野秀明監督の名前もありました。ウルトラマンを演じていたのだとしたら、『マットアロー1号発進命令』以来?
「全編通してネタが山ほど!」
他にもシリーズの曲が随所に使われていたり、ラストのあるキャラとウルトラマンとのシーンが「さらばウルトラマン」に忠実だったり……。
長澤まさみが巨大化したシーンは、フジ隊員の同シーンそのまま!『キングコング対ゴジラ』や『ウルトラマン』にもあった、巨大生物の手の上に乗るシーンも当然用意されております。
小ネタをあげたらキリがないし、僕が気がついていないネタも山ほどあるのでしょう。ウルトラシリーズを観ている人にとっては、心拍数爆上がりするくらい、興奮できるシーンもあったりします。
けれども、何度も書いた通り、意外と間口の広い映画なんだよね。
ファンを喜ばせるよりも、今の子供たち(当然大人も)を喜ばせることを目的とした映画に思えてならない。
樋口監督や庵野監督がはじめて『ウルトラマン』を観たときの衝撃を、再び蘇らせようとしているんじゃないでしょうか。アメリカのヒーロー映画のコピーではなく、“日本の特撮映画”としてウルトラマンを出してきたのは、そうした意図があってのことなの……かな。
あと、映画好きとしては、奇抜なカメラアングルにも注目したくて。
円谷イマジネーションにあったメイキングで語られていたんですが、本作は俳優たち自身がカメラを持って演技しているんですね。片手でiPhoneを持ち、その状態で演技していくという珍しい手法にも挑戦しています。
そのせいか、若干画質が気になるショットもあるんですが、奇抜すぎるアングルになっているので、そこまで気になりません。
椅子の隙間から俳優の顔を狙ったりするシーンや、リモコンの先端から俳優を見上げるシーンなどなど、長編でメイキングが見たくなる映画でした!
今回のシンの意味とは
「シン」が冠された作品も今回で3作目。結局のところ、「シン」がなにを意味しているのか未だに分かっていませんが、まさかの「シン・ジャパン・ヒーロー・ユニバース」が始動!これからも「シン」が使われていくようで。
そんなわけで、今回の「シン」は何だったのか、いくつか少し考えてみました。
超単純だけど、やっぱり一番しっくりくるのは“新”。
先ほどから描いているとおり、本作は現代風にアップデートされた新しいウルトラマン。
特に映画だと「新・○○○○」ってタイトルが多いですからね。『新・男たちの挽歌』とか『新・仁義なき戦い』とか。そりゃあ新がしっくりくるのは当然でしょと。
劇中のセリフにもあった“神”も候補に挙げておこう。
「ウルトラマンは神に近い存在」らしいし、デザインも神々しさがある。そして一歩間違えれば、破壊神にもなりえたわけで。
そのままカタカナで“シン”でも通じるのは、ウルトラマンならでは。
初代マンに変身する男の名前は、ハヤタ・シン。50年以上前からすでに“シン”がいたのがウルトラマン。
“シン”は日本語でなくても構わない。英語でSINは罪の意。
人類にとっては救世主だったウルトラマンだが、故郷の光の国ではどうだっただろうか?
……そんな感じ。
解釈は人それぞれだし、さまざまな意味を持たせられるようカタカナになっているのでしょう。
『シン・仮面ライダー』ではどんな意味になるのか?楽しみだね。
IMAXレーザーで鑑賞して
先日、IMAXレーザーでもう一度鑑賞して参りました。興奮も落ち着いていたんで、1回目以上に細かいネタも拾えたかと思います。
ただですね、IMAXで観る必要はあまり感じず。たしかに巨大スクリーンで観るのは素晴らしい体験ですが、正直IMAXの実力の半分も使っていない印象でした。
IMAXが謳う「スクリーンいっぱいに広がる」ということもなく、普通のスクリーン(なるべく大きめの)で十分かなと。
あと1回目も感じたのですが、長澤まさみさん演じる浅見弘子が巨大化し、ネットに様々な画像がリークされるシーン。ここは1回目も2回目も笑いが起きていたのですが、正直全然笑えねぇなと。
浅見隊員のリアクションもギャグっぽく演出されていて、ちょっと違和感がありますね。そんな下劣な画像がアップされること自体が笑えないし。
同様に、早見あかりさんの暴言に「ピー」が入るシーンも気になりますよね。
各所では説明台詞の多さがうんぬんと評されていますが、ウルトラシリーズと考えると違和感はそんなに……。ナレーションで超絶丁寧に解説されるよりは、少なくとも専門分野に限った解説をしてくれるんで、1回目はあまり気にならなかったけど。
最後に
樋口監督は超獣が好きとの話を聞いていたので、大穴として超獣の出現も考えていましたが……。
そもそも禍威獣の数が少なくなかったですか?
外星人もいたんで、本格的に戦ったのはネロンガとガボラだけ。ゼットンは兵器になったし。
続いては『シン・仮面ライダー』ですが、その先はどうなるんですかね?
『シン・ウルトラセブン』もいいし、『シン・キューティーハニー』でも、『シン・ゴレンジャー』でも、どんな映画でも僕は観るよ。
竹野内豊さんが演じたあの男が、MCUでいうところのニック・フューリーになるのか?
正直、彼らがアッセンブルしたら、アベンジャーズ以上に仲悪そうですけども……。
以上。
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