本年度アカデミー賞最多ノミネート作品の
『シェイプ・オブ・ウォーター』がついに公開になりました!
『パンズ・ラビリンス』、『パシフィック・リム』のギレルモ・デル・トロ監督が手掛けた究極のファンタジー映画。その出来はどうだったのでしょうか!?
レビューを書いてみたいと思います!
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この映画の世界観
本作の舞台はソ連と冷戦下のアメリカです。
この時代はソ連と米国の間で大陸間弾道ミサイル技術を念頭に置いた宇宙開発競争が勃発しており、いかに自国が他国を出し抜けるかを競い合っていました。
そんな中、アメリカはアマゾンから水陸両用の呼吸法を会得している「半魚人」を捕獲していきます。
このやるかやられるかの世界で両国の思惑が「半魚人」を巻き込んでいくのです。
本作に漂う雰囲気は、「半魚人」が閉じ込められている研究室から、主人公・イライザが住むアパートまですべてが暗くて、どこか閉鎖的な印象。
レトロフューチャーっぽさもあり、切なさとノスタルジックさが合わさったギレルモ・デル・トロ独特の世界観ですね!
彼の制作した作品の中では『パンズ・ラビリンス』に一番近いでしょうか?
ファンタジーとエロティックな恋愛、そして冷戦当時の状況を踏まえたストーリー展開。
そもすべてが調和して気持ち悪さとか、美しさとか、悲しさとか、艶めかしさとかが一度で全部味わえる世界感に仕上がっています!
「半魚人」とは何者なのか?
この映画の顔である「半魚人」。
気持ち悪さを感じる魚独特の青と、鳴き声、エラ、水かきのついた手。
第一印象は気持ち悪さしかありませんでした(笑)
しかし、映画が進むにつれて「気持ち悪さ」とりも「美しさ」の方が上になる不思議な感覚。
彼は果たして何者なのでしょうか?
作中では腕の傷を治したり、薄毛を治したり、まるで神様のような奇跡を起こし続けます。
神は自分の姿に似せて人間を創り、この世界を創造しました。
「神は私のような姿(白人)をしている」とストリックランドは語りますが、「半魚人」は人間以上に進化した生物であり、人知を超える力を持っています。
神というのは人間が作り出した概念ではあるんだけど、その「神」を体現したような生き物が「半魚人」なわけです。
そんな「半魚人」を演じたのは、ギレルモ・デル・トロ作品の常連俳優ダグ・ジョーンズ。
『パンズ・ラビリンス』でも『ヘルボーイ』でも異形の怪物を演じてきた彼だからこそ、あの気持ち悪さを醸し出せたんだと思います!
一番重要な役柄である「半魚人」役にキャスティングされるなんてデル・トロ監督にも信頼されている証拠ですね!
ちなみに「半魚人」の特徴的なキンキン声はデル・トロ監督本人が演じているようです。
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マイノリティーの人たちに向けたメッセージ
本作で一番の名場面はイライザが半魚人を逃がすために隣に住む画家・ジャイルズを説得するシーン。
半魚人を人間ではないと言うジャイルズに対し、イライザは
「私も言葉を話せないし、彼も言葉を話せない。彼と私で何が違うの?」
と問いかけます。
このセリフはこの映画のすべてを表しているといっても過言ではない名台詞ですね。
ここでは拒絶したジャイルズも後にゲイだということが判明し、自身もまたイライザや半魚人と同じマイノリティーの一人だと気づかされます。
ジャイルズの他にもイライザの同僚で黒人として差別を受けているゼルダや、手助けしてくれるロシア人スパイのホフステレルもマイノリティー側に立つ人間であり、典型的な差別主義者のストリックランドとは対立する立場です。
この映画は異形との恋愛を見せながらも、差別や偏見に対しての疑問を投げかけてくる映画ともいえるでしょう。
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実は水をほとんど使っていない??
この映画の最初のシーン。水に沈んだ部屋にイライザが浮かんでいて、印象的なナレーションが流れます。
水に沈んだ部屋にタイトルロールが流れてくる本作において大事なシーンなわけなんですが、実はこのシーンの撮影には全く水を使っていないらしいです!
ラストシーンの水の中で半魚人とイライザが抱き合う場面でも水を一切使用していません。
上から当たる照明や、ライトの色だけで水の中を表現しているみたいですね!
この話を聞かなければ、実際に水を入れて作ったんじゃないかってくらいリアリティーのある水中を表現していました!
まとめ
総合的にみると確実に映画史に残る名作だということがわかると思います!
しかし、アカデミー賞作品賞に選ばれるかと言えば『スリー・ビルボード』の方が可能性高いんじゃないでしょうか?
『シェイプ・オブ・ウォーター』の方が私の好みではありますが、『スリー・ビルボード』もかなり良かったのでどちらが受賞してもうれしいです!
アイキャッチ画像 (C)2017 Twentieth Century Fox