映画『キネマの神様』感想 映画館にもフィルムの中にも神様はいる

僕が映画を好きになったのは、高校1年生の終わりから。

当時仲のよかった友人に『七人の侍』を勧められたところから、僕の「映画好き人生」がスタートしました。

それから、早9年くらい。いまや映画鑑賞がライフワークといえるし、お恥ずかしながらブログまで立ち上げてしまっています。

将来はゴウのように、毎日映画を観られる老人になりたいものですが、長生きできるかなぁって感じで。

 

『キネマの神様』は当然のごとく原作も読んでましたし、実写化も非常に楽しみだったのですが、

菅田将暉くんはなにをするんだ??

原作だとゴウの過去編ってほとんどないし、半分近くはオリジナルになるってことですか?

淀川さんの映像を使用したCMも物議を呼んだりと、若干不安を感じる面もありますが、劇場のどこかにいるであろう神様を信じて鑑賞してまいりました!

キネマの神様

評価

僭越ながら、今作の満足度を★10段階であらわすと……

 

★6

 

原作とはまるっきり違うけれど

小説を読み感銘を受けた僕からすれば、キャラクターの設定こそ踏襲してますが、ストーリーは全然別物。

「ローズバット」は登場しないし、「キネマの神様」もブログではなく映画に。そもそも評論に関する部分は全カットされ、いかにも映画人が作りそうな『キネマの神様』になっていたなと。

原作だと観客側の視点からストーリーが描かれていたのに対し、映画版では制作者側の視点から語られます。

これは賛否あると思うんだけど、いち観客としては「映画制作に対する想い」とかよりも、「映画鑑賞に向けられた想い」を描いてくれた方が共感はできた。

僕自身、映画を「観る」ことは好きでも、「作る」ことに関してはそこまで興味を示せないし。

主人公のゴウは映画制作に関わってはいないけれど、キネマの神様に愛された人だったんですよ。

そんな彼が映画に関わって、さらに監督を志していた……なんてことになると、「キネマの神様」の言葉の意味も変わってきてしまう気がする。

 

……と、ここまでが原作を踏まえたうえでの感想。

映画単体でみると、山田洋次監督はかつての日本映画界(淑子ちゃんいわく「盛り上がっていた時代」)を描きたかったんじゃないかと。

映画監督に憧れ、撮影所に出入りし、夢半ばで散っていった若者もいたでしょう。そういった人たちをゴウに重ねて、「映画」にしたかったんだよね、きっと。

まぁ「日本映画界に喝を入れる」作品ではないと思いますが、昨今の社会情勢や僕自身が映画好きということも含めて、久しぶりに涙しそうになった作品でした。

 

ここから先は映画の一部ネタバレが含まれます

まだ鑑賞していない方はご注意ください

感想

過去編は完全オリジナルです

原作にはゴウの過去編を描く場面はほとんどありません。つまり、撮影所のシーンや、淑子との馴れ初めのシーンは完全オリジナル!『うる星やつら』で長編映画を作れ!と言われて、『ビューティフルドリーマー』を作っちゃうみたいな作品なわけですよ。

原作再現がないと駄作ってこともないし、実際に『キネマの神様』も良作(『ビューティフルドリーマー』は傑作)だと思いますが、やっぱり原作を読んでいるからこその戸惑いってものがありまして。

特に「ゴウが映画監督を志していた」って新設定は、僕の頭の中にあるゴウのイメージがごっちゃごちゃ。映画人じゃない、映画に関わってこない映画好きだったからこそ、共感するところがいっぱいあったんだけども。

そんなわけで、過去編は正直長すぎる。監督がいかに当時の映画人たちを描きたかったとしても、現代編で結果が分かっているドラマを見せられてもなぁ。

 

若き日のゴウに「日本映画は言葉足らずなメロドラマばかり。僕は新しい作品を……」と言わせていたのに、映画自体は原作にすらなかった、三角関係の王道すぎるドラマを見せてくるという強烈な違和感。

さらには劇中作のタイトルになった『キネマの神様』も、「これは面白い!!」と菅田将暉さんがキラキラした笑顔で語っておりますが、観客としてはイマイチ面白いと思えなかったり。どっかで聞いたことのあるあらすじだったよな。「この時代ならウケる内容だったのかも?」と思いきや、終盤ではあの展開だし。

原作におけるローズバットとの評論バトルが面白かっただけに、この辺の件はかなり残念。

ただ、永野芽郁ちゃんがめちゃくちゃ可愛くて、菅田将暉の背中に手を回すシーンなんかはドキッとしたし、あんなにハキハキ喋る子がいたら誰でも好きになるわなぁ。お見舞いにまで来てくれたら、絶対勘違いしちゃうって!

ひとりの映画好きとして

ゴウは家族に迷惑かけてばかりの、ギャンブル&アルコール中毒。借金はするし、その金を娘に返済させるしで、ただただ「最低」の言葉が似合う男です。

えー、僕もギャンブル好きなんすよねw この記事を書いている最中も、ガロのことが頭から離れないし。大学生のとき、人生の夢だった豪華客船に乗ったは良いものの、初日にカジノで所持金全額つっこむという、クレイジーな行動もしました。

ただ酒は飲まないし、借金もしてないんで、まだまだ健康体だと自負しているんだけど……。

 

僕もそこそこのダメ人間ですが、映画は本当に好きなんですよ。まともに就職もせず、部活も仕事も確変も継続できないけど、映画だけは高校1年生からずっと観続けている。現実逃避といえばそれまでだけど、嫌なことがあったときには映画館に行って、あの薄暗い部屋の中で映画を1本観れば、たいていのことは忘れられます。

映画を観ることが生きがいになってきている僕だからこそ、共感できた部分がこの映画にはありました。特に現代編のゴウのセリフひとつひとつが、心に響く。

「俺から博打を取り上げたら何を楽しみに生きていけばいいんだ!」

「映画があるじゃない」

そう言って支えてくれる人がいれば幸せだな。

僕も映画館で映画を観ながら死にたい。できれば何度も観た映画よりも、初めて観るまったく新しい作品を観て、「いや、ここで死ぬのかよ。続きが気になるよ~」ってところでぽっくりいくのが理想。

まぁ、老人になったらもっと面白い趣味見つけてるかもしれないし、未来で映画がどうなってるかもわからんけどね。

最後に

みなさんご存知でしょうが、本来は志村けんが主役を演じるはずだった映画なんですよね。

主役が交代することによって、どれほど映画に影響を与えたのか。今となっては定かではありませんが、「東村山音頭」が歌われた時、劇場ですすり泣く声が聴こえてきて、改めて「バカ殿」の死を実感しました。

ドリフターズを通ってきていない僕にとって、志村けんといえばバカ殿。夏休みのスペシャルか何かをビデオに撮っていて、休み中毎日のように観ていた記憶があります。たまーに怖いエピソードもあったりとか、城下町に繰り出すコントがあったりとか、今でも鮮明に覚えているシーンがチラホラ。

あの時の夏休みは楽しかったなぁ。涼しい部屋でバカ殿を観て笑い転げていたあの時は、今となっては戻ってくることのない少年時代の思い出のひとつになっています。


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アイキャッチ画像 ©2021「キネマの神様」製作委員会