水没した都市ってロマンがありますよね。
けれど実際暮らしてみたら、このうえなく不便なのでしょう。
家は水浸しで、「子どもがおぼれた!」ってニュースも連日のように放送されたりとか、嬉しいくらい住みにくいはず。
でも、妙にノスタルジックを感じたりしますし、現実はどうあれ「ロマンがある」という点は同意いただけるかと。
そんなわけで今回は水没した都市を舞台にした、『レミニセンス』の感想を書いていきます!
ジョナサン・ノーランの名前が推されていて、『インセプション』を彷彿とさせるプロモーション方法に疑問を抱かずにはいられませんが…。
今作は夢ではなく、記憶がテーマだし、巨大装置×ヒュー・ジャックマンというと『プレステージ』の方が思い浮かびます。
※この記事には映画の一部ネタバレが含まれています
レミニセンス
作品概要
水没したマイアミを舞台に他人の記憶を読み取り、追体験させている主人公が、失踪した恋人を探すため、裏社会の人間たちの記憶を読み取っていくストーリーです。
監督はドラマ『ウエスト・ワールド』に携わっていた、リサ・ジョイ。今作では脚本も手掛けております。
宣伝で監督以上に名前が挙がっているジョナサン・ノーランは、製作という立場で、脚本にも参加していません。『ウエスト・ワールド』では脚本を書いていたので、リサ・ジョイとはその繋がりくらいかなと。
このふたりは夫婦でもあるんで、プライベートではもっと繋がりがあるのでしょうが。
主演を務めたのはウルヴァリンでおなじみ、ヒュー・ジャックマン。ヒロインにはレベッカ・ファーガソンが起用されています。このふたりは『グレイテスト・ショーマン』で共演済みです。
共演は『ウエスト・ワールド』のダンディ・ニュートン、『ドクタースリープ』のクリフ・カーティスなどなど。
評価
★4/10
がっつりミステリー要素があるのね
設定はSFですが、映画の雰囲気はフィルム・ノワールで、かなり淡々とストーリーが進みます。
『デトロイト ビカムヒューマン』などを開発した、クアンティックドリームが作りそうなストーリーと設定でした。
アドベンチャーゲームになれば、もっと深く掘り下げられますが、2時間の映画だと完全に消化できていません。
設定は面白いし、水没したマイアミの姿も好きだけど、そこから生まれるストーリーは想像の範囲内のものでとても残念。
引き続き、映画の一部ネタバレが含まれています
感想
「記憶を読む」という設定はSF映画、特にサイバーパンク系の映画に多い印象です。『サイバーパンク2077』のブレインダンスとか。
記憶は完全にプライバシーですし、読み取られたらカード番号どころじゃない、すべての情報が知られてしまいます。そもそも脳がどこまで記憶しているのかって疑問もありますが。
劇中では当人の記憶を読み取っているはずなのに、なぜか第三者目線からの映像として復元されます。人間の視界は限られていますから、それ以上のものは見えません。いくら記憶を再現したって、「自分が見なかったもの」までは復元しようがないと思うのです。
そんなところにツッコんでも仕方がないので、今回は多く言及しませんけれども。
今作は主人公ニックのものすごい執着心が描かれる、想像以上に泥臭いサスペンス映画です。
ミステリー要素も強めで、さまざまな人の記憶を読み取ってはヒントを得ていき、次第に答えに近づいていくというもの。
「大好きだった女性が実は…」というストーリーでもあったりして、恋愛描写もあります。ジェームズ・ボンドとロシア側のボンドガール、といったように、敵同士だったけどそれを超えた関係を描いていきました。
重要なのが「記憶」なんですが、今作には過去に囚われている人が多く登場します。劇中の舞台は戦後なので、ディストピアっぽくなった現代よりも、過去のほうが幸せだったっていう人がたくさんいるんです。
設定はかなり面白くて、「未来を生きるよりも、過去に生きる選択」をする人を、もう少し深く描いてほしかったなと。
ただ、この映画も「誰も見たことがない作品を見せる!」というよりは、『ブレードランナー』とフィルムノワールをかけ合わせた、どちらかといえば過去に生きる映画に思えます。
私自身はクラシカルな作品も雰囲気も好きなんですが、今作の鑑賞においては新鮮さを重要視していたため、物足りなさは否めません。
そして、謎のノーラン推しのプロモーションについて。
製作に入っているだけですので、ジョナサン・ノーランのビジョンがどれほど今作に影響を与えたかは定かではないのですが…
さすがに推しすぎていて、勘違いする人も出てきそう。『インセプション』を強調させたいのかもしれませんが、そもそもジョナサン・ノーランは『インセプション』に関わってませんし。
今作からノーランを感じる部分は、ほぼありませんでした。
Fin
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