どーも、スルメ(@movie_surume)です。
皆さん、ついにこの日がやって参りました。
『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』の公開日であります!
2015年に『ヘイトフルエイト』が公開されて以来、どれほどこの日を心待ちにしていたことか…!
タランティーノ監督でレオナルド・ディカプリオ×ブラッド・ピットの共演が実現するなんて確実に映画史に残るじゃないですか!
しかも生粋の映画オタクであるタランティーノが、ついに映画の本拠地”ハリウッド”の歴史を紐解くと。
こんなに興奮することってないよね。
2019年のベストは今のところジョーダン・ピール監督の『US アス』なんですけど、本作はベスト候補の一つでして下半期最も楽しみにしていた映画と言っても過言じゃありません!
ハリウッドが舞台の映画って大体評判良いし、私好みである可能性も高いからね。最近だと『ラ・ラ・ランド』とか『アンダー・ザ・シルバーレイク』とか。
ちょっと前に始めてハリウッドに行ったんですが、確かに不思議な雰囲気があるんですよ。歩いているだけで舞台の上にいるような感じというかさ。”映画の都”にはなるべくしてなったんだなぁと。
そんなハリウッドへの想いを抱えつつ、ドキドキワクワクしながら劇場に行って参りました!
※この記事では『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』のネタバレを含みます!!まだご覧になっていない方はご注意を!!
ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド
あらすじ
テレビ俳優として人気のピークを過ぎ、映画スターへの転身を目指すリック・ダルトンと、リックを支える付き人でスタントマンのクリス・ブース。目まぐるしく変化するエンタテインメント業界で生き抜くことに神経をすり減らすリックと、対照的にいつも自分らしさを失わないクリフだったが、2人は固い友情で結ばれていた。そんなある日、リックの暮らす家の隣に、時代の寵児ロマン・ポランスキー監督と、その妻で新進女優のシャロン・テートが引っ越してくる。今まさに光り輝いているポランスキー夫妻を目の当たりにしたリックは、自分も俳優として再び輝くため、イタリアでマカロニ・ウエスタン映画に出演することを決意する。やがて1969年8月9日、彼らの人生を巻き込み映画史を塗り替える事件が発生する。
※他の方々も言っているように、映画を観に行く前に「シャロン・テート殺害事件」を予習しておくと作品をより一層楽しめます!!
監督
本作が9作品目(『キル・ビル』2作を一作品と数えた場合)となったクエンティン・タランティーノ。
私が唯一全監督作品を観ている映画監督です!たぶん。知らないだけで他にもいるのかもw
自身は10作品監督したら引退すると公言しており、その言葉通りに行くと『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド(以下ワンハリ)』は最後から二番目の監督作品になる予定です。
『スター・トレック』を監督するだとか言われていますが、実際はどうなんでしょう??CGが嫌いな監督なのに『スター・トレック』かぁ…。観てみたい気もする。
キャスト
主演はレオナルド・ディカプリオとブラッド・ピットの二人。
日本でもまず名前が挙がる著名なハリウッド俳優の二人ですが、共演するのは本作が初めて。
劇中では落ち目の俳優とそのスタントマンという絆の強い役だけあって、二人の掛け合いには注目が集まります。
ヒロイン?で実在した女優でもあるシャロン・テート役には『スーサイド・スクワッド』のマーゴット・ロビーを起用。レオナルド・ディカプリオとは『ウルフ・オブ・ウォールストリート』で夫婦役を演じていましたね。
共演は名優アル・パチーノを筆頭に、カート・ラッセル、ダコタ・ファニング、デイモン・ヘリマン、マイク・モーなど。
評価
僭越ながら『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』の満足度を★10段階で表すと・・・
★9
映画の救世主・タランティーノ!!!
本当に映画好きが映画に捧げた3時間!この名作を突き付けられた私は衝撃に打ちのめされるしかなかった。
タランティーノという映画監督を作った”映画”と”ハリウッド”そのものを「おとぎ話」にした本作はまるで一つの神話のよう。
もはや儀式とも受け取れるタランティーノの映画愛が随所にあふれ出て、少しでも映画が好きで50年代・60年代の映画に触れたことがあるなら響くものがあると思う。
映画史上もっとも血生臭い事件である”シャロン・テート殺人事件”をタランティーノなりに描くと、こうも神々しく輝くのか!!
さすがだぜ、タランティーノ!!
それを受け止める私たちもしっかり心の準備をして衝撃に備えねば!
事前に知っていた情報通り史実である「シャロン・テート殺人事件」を知っておかないと、ラストの衝撃は半減する。
少しでもシャロン・テート、チャールズ・マンソン、ヒッピーをググっておいて損はない。絶対に。
ここから先は『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』のネタバレを含みます!!
まだご覧になっていない方はご注意を!!
感想(ネタバレ)
オープニング
タランティーノの映画はオープニングのカッコよさがお決まり。この掴みが完璧だから長くても最後まで楽しめるんですよねぇ。
私としては処女作の『レザボア・ドッグス』のオープニングが好きなんですよ。リトルグリーンバックをバックにそれぞれのキャラクターを紹介していくと。今でも秀逸なオープニングの一つとして上がりますが、当時の衝撃はもっと凄かったんじゃないかと。
それに続いて『パルプ・フィクション』ですからね。もし自分が映画作ったらマネしたくなるオープニングばかりなんです。
『ワンハリ』のオープニングはですね。リックとクリフが乗る車の後部座席?側の視点からキャストの名前が紹介されるというもの。
他の作品に比べて印象に残る”カッコいい”オープニングでなかったのが残念ではあるけど、マーゴット・ロビー演じるシャロンとリックたちの帰路が交互に映し出されるのは、これから始まるおとぎ話の出だしにふさわしい。
おとぎ話で言うところの「むかしむかし。リックとクリフのコンビ、そしてシャロン・テートがハリウッドにいました」の掴みの部分なんですね。カッコよくはなくとも、スルッと1960年代に入りこめる秀逸なオープニングなんだよ。
キャラクター
なぜタランティーノの映画はこうもキャラクターが活きているのか。
『レザボア・ドッグス』のミスター・ホワイトとオレンジ、『パルプ・フィクション』のヴィンセントとジュールス、そして『ワンハリ』のリック・ダルトンとクリフ・ブース。
どのキャラクターも自然とセリフをしゃべり、自然と怒り、自然と泣く。これは俳優の演技もあるけど、やっぱタランティーノの映画独特のセリフ回しとかムダ話が影響しているよね。
例えば『パルプ・フィクション』の冒頭、ヴィンセントとジュールスが”チーズ・ロワイヤル”の話をする。
単に見ただけだと他愛もない世間話に聞こえるが、このシーンを観れば一発で二人の関係が読めると思うのよ。
タランティーノはキャラクターがどんな人間で、どんな人生を辿ってきたかを彼らのセリフや会話で表現する監督なのです。
彼ほどキャラクターを巧みに操り、魅力的に描ける監督・脚本家は他にいない。
話を『ワンハリ』に戻すと、本作でも会話の節々にキャラクターの人間性があふれ出ている(ブルース・リーに関しては史実と違うと批判が集まったようですが)。
冒頭のリックがクリフの方に泣き崩れるシーンまでで、二人がただの俳優とスタントマンの関係じゃないことが判るんだよね。二人の会話も自然な友人関係を観ているようで、映画臭さとかフィクションのニオイがまったくしない。
それはシャロン・テートもブルース・リーも、チャールズ・マンソンも同じで、史実に登場した人物たちも巧みに動かす手腕は彼だけのものでしょう。
またしてもタランティーノがムダ話、会話にかけるこだわりが見えてくる作品でした。
スターの顔
私たちはスクリーンの中でしか俳優を知りません。DVDにある特典映像なんかで撮影風景を観ても、それは表に見せる表情であって本当の苦労を全く知らない。
それが映画として正しい姿であると私は考えているけども、本作のように落ち目の俳優が描かれることで1本の映画が出来るのに多くの人が苦労していることを知る。
私なんてその大変な思いをして作られた作品に、ただ文句をタラタラ書いているだけだからね。いろいろ考えると申し訳なくなるんですよ。
本作ではセリフを覚えられず癇癪を起すリックもいれば、観客の上げる感性を満足そうに観ているシャロン・テートもいる。
特にマーゴット・ロビー演じる映画館でのシーンは史実のことを考えて、この後…って思うと涙が出そうになるのよね。おバカキャラを演じてたテートが見せる愛らしい顔。
本当に同じことをしたのかは知らないけど、観客の反応を見に来る彼女がどこかの映画館にいたのかもしれない。
とにかく次に書くラストに向かう伏線と、史実との間にあるフィクションとしての役。両方を兼ね備えていた感慨深いシーンでした。
あ、あと批判を受けているブルース・リーについて書かせてもらうと、性格とか以前にそもそも顔が似てねぇ!!確かに映画を観る限りでは性格はあそこまで驕った人とは思えませんが、本人を知らないので何とも。
予告編だとサングラスのせいでわからなかったけど、素顔は余計似てない。スティーブ・マックイーンとかは似てるんですけどねぇ。アジア人だから白人からすれば似ているのかもしれない。
ここから先はラストに関するネタバレを含みます!!!
ラスト
本作は第二次大戦を描いた『イングロリアス・バスターズ』と最も似ていると思うのです。タランティーノ独自解釈の歴史モノであるという点で。
実際の歴史だとロマン・ポランスキーの子供を身籠ったシャロン・テートと友人たちは、チャールズ・マンソンの命令を受けてやってきた信者たちに殺されてしまいます。
しかも理由はただの逆恨み。もともとポランスキー達が住むより前にいた住民を殺そうとしていたのですが、彼らは既に引っ越していたため全く関係のないシャロン達が殺されてしまいました。
たぶんこれアメリカだと皆知ってる事件なんですよね。だから『ワンハリ』もこの事件を知っている前提で作っているんです。
で、『ワンハリ』だと現場になったポランスキー邸の隣に住んでいるのがリック・ダルトンなんですよ!!
だからシャロンを殺しに来たヒッピーたちと関わらないワケがない!史実とは違った結末が用意されているんです。何ともタランティーノらしい…w
もちろんリックやクリフはオリジナルキャラクターだし、実際は知っての通り悲惨な事件が起きてしまっていますが、タランティーノは彼らを使ってシャロン・テートを救済したんですよね。
詳しいことは映画を観てからのお楽しみ。でも、事件を知っている人にとっては小気味良いラストが用意されています。
この映画はタランティーノによる、シャロン・テートと事件によって失われたであろう映画に向けての儀式的な意味が込められていると思うのです。
映画を、ハリウッドを愛してやまないタランティーノなりの儀式なんだと。
本来であれば死んでしまったシャロン・テートを映画の中で悪魔の手から救い出し、遠い意味でロマン・ポランスキーも救った。もしかしたら事件の犯人に疑われたブルース・リーも違った結末を歩むのかも。
映画界に大きな傷を負わせた事件を大きく湾曲させることで数々のモノが救われた。現実にリック・ダルトンとクリフ・ブースがいないのが悔やまれる。
エピローグ
本作の最後のシーン、そしてタイトルが出る場面に言及させてください!
本来であれば血で染まるはずだったポランスキー邸のエントランスを上からのアングルで映し出し、「Once upon a time in HOLLYWOOD」のタイトルが浮かび上がる。そしてそのままエンドロールに突入すると。
その瞬間足がなぜかガクガクし始めましてw
ラスト13分の衝撃から、史実を捻じ曲げて「めでたしめでたし」で終わらせた後に訪れた粋な幕引き。
なんでこんな映画作れるんだろうと本気でタランティーノについて考えたエンドロールでしたw
ただ映画観てただけじゃ作れない。別の記事でも書いたけど、やっぱ天性の何かがないと名作は作れねぇんだよなぁ。
タランティーノはそこら辺本当に唯一無二の監督だと思うし、21世紀中にこんな監督が生まれてくるとも思えない。
あともう一つ。映画中にリック・ダルトンがタバコのCMを撮影するシーンがあるんですが、そこで使われているタバコがおなじみの「Red Apple」というw
このタバコはタランティーノ映画で度々登場している架空のタバコでして、これまでも小道具的に登場してきたんですが、こんな長々とハッキリ触れられるとは。
出来ればビッグカフナバーガーのCMもリックに頼みたい!あのバーガーを世界一おいしそうに食べられるのはジュールス以外いないけど。
まとめ
タランティーノはやっぱりスゲェよ。
私は知っての通り映画が大好きだし、人生そのものを映画鑑賞にかけていると言っても過言じゃないんで、こういう映画愛に溢れた映画を観ると幸せを感じます。
それをタランティーノが撮っているって言うのがまた良いんだよなぁ。
次の作品で引退するなんて言わないで、もっと名作を生み出してくださいよ!!唯一無二の監督なんだから…。
監督はしなくても脚本は書いたりとかするんですかね?次で引退と考えるとタランティーノが撮影したシーンを観られるのはあと180分程度かな。
1分1分大事に観ないと…。
以上!!!
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