
今回はアニメ映画『オッドタクシー インザウッズ』ついて語っていきます。
『セトウツミ』が大好きってこともあって、TVアニメ版も当然視聴済み。
若干無理な展開にヒヤヒヤしつつも、此元和津也さんらしい掛け合いの楽しさがあって、個人的には好きなアニメでした。
で、問題は今回の映画版。総集編としつつも、追加シーンもいくつかあるようで、ファンにとっては必見の作品かと思いきや……。
※この記事は『オッドタクシー』のネタバレが含まれます
オッドタクシー インザウッズ
作品解説
『オッドタクシー』は、漫画家でもある此元和津也さんがシナリオを手掛けたTVアニメ。
動物だけが暮らしている日本を舞台にしておりまして、『ズートピア』や『BEASTARS』とも異なる、独自の世界観が魅力の作品でした。
本作はそんな『オッドタクシー』を劇場版として再編集し、追加シーンを加えた、いわゆる総集編ってやつ。劇中で起きる出来事も、TVアニメとは別の視点で語られていきます。
やっぱりTVアニメ版を観ていた方が楽しめると思うので、映画を観るならアニメから見ましょう。アマプラで配信されているんで、簡単に視聴できるはず。
声優陣もかなり特徴的です。
メインキャストには人気声優を使いつつ、サブキャストに吉本の芸人さんを起用するという変わったキャスティング。
警察の兄弟にミキのふたり、漫才コンビがダイアンのふたりだったりと、現実とリンクさせるキャスティングもポイント。それぞれが違和感なく作品世界に溶けこんでいるんで、「え、これあの人が演じていたの?」といったキャラもいたりします。
一方、主人公の小戸川役には炭治郎役で知られる花江夏樹さん、ヒロインの白川には星空凛役でおなじみの飯田里穂さんが起用されています。
『オッドタクシー インザウッズ』の評価
ストーリー | ★☆☆☆☆ 1/5 |
キャスト | ★★★★☆ 4/5 |
演出 | ★☆☆☆☆ 1/5 |
アニメーション | ★★☆☆☆ 2/5 |
総合評価 ★ 2/10
「どこの層に向けた映画なんだろう?」
まず大前提として、TVアニメ版『オッドタクシー』は嫌いじゃないです。むしろ好きです。素晴らしいアニメです。
けれども、本作はどうしても好きになれませんし、「映画館で公開する必要あったのか?」と思ってしまいました。
というのも、基本的にTVアニメ版のよさを殺した映画化なんすよね。
総集編だということは知っていたし、同じストーリーであることに文句は言いません。けど、ストーリーの見せ方は問題しかない。
TVアニメとは構成が変わっているのですが、結果的に説明台詞が極端に増えて、スムーズさが失われています。
そして、なにもかも説明し、観客に見せてしまうのが、必ずしもいい結果に繋がるとは限りません。特に今作にとっては、アニメ版の終わり方こそがベストだと思うわけで。
内容はほぼ一緒なので、初見の方ならアマプラでアニメを観ればいい。むしろ、TVアニメ版から観てほしい。
よっぽど追加シーンを観たい人にしか需要がない、謎すぎる総集編でした。
※ここから先は『オッドタクシー』のネタバレが含まれます
『オッドタクシー インザウッズ』の感想
もっと観客を信頼してくれ
この映画は『オッドタクシー』で起きた事件が、関係者たちの口から語られていく作品です。そのため、今作は一種の回想になっていて、TVアニメ版とは違った視点から物語が描かれていきます。
ただ、映像自体はTVアニメ版の再編集なんですよ。だから例え小戸川以外のキャラが語っても、本編以上のストーリーにはならないわけで。意味があったとしても、本編のストーリーを少し補完するくらいにしかなっていません。
良いところはそれくらいで、説明口調のセリフがノイズにしかならないんです。「そういえば、あのとき俺は…」と、映画用にカットした部分をナレーションのように語っていくんで、説明過多な映画になっています。
「もっと観客を信頼してくれよ」
テレビアニメならば、この演出の意図も理解できる。視聴者は“ながら見”かもしれないし、CMとかもあるので、説明過多になっていても理解はできるのですが……。
これは映画なんだよ。映画館でスマホいじりながら観る奴はいないし、すべての人がスクリーンに集中しています。だから、言葉じゃなくて、もう少し映像で語れるくらいの編集にしてほしかった。観客の集中力と理解力を信頼してくれれば、ノイズが走ることも少なく、スムーズに物語が運んでいったはず。
「そんなに説明過多なら、初心者向けなのか?」と思ったそこのあなた。
実はこれ。全然初見の人に優しくないし、むしろ『オッドタクシー』の面白さを2割くらいしか伝えられていないんですよ。
確かにメインストーリーを追うだけなら十分です。でも、『オッドタクシー』ってそういう作品じゃないでしょ。
僕の中では『オッドタクシー』の面白さって、メインストーリーよりも、此元和津也先生ならではの掛け合いにありました。キャラクター同士の何気ない会話、オフビートな笑い、センス抜群の例えツッコみ エトセトラ。
細かいところまで気を配られた言葉があるからこそ、『オッドタクシー』は面白かったわけで。膨大な会話の中にときどき重要な伏線がポンっと飛び出す、まさに彼らの世界を覗き見ているような感覚が醍醐味なんです。
映画版では上映時間の都合上、当然ながら、半分以上のセリフがカットされています。
重要なセリフだけが抜き出されているから、違和感ハンパない。生きている会話が魅力だったのに、そこに残されたのは重要な部分だけ切り取られた、なれの果て。あまり映画には使わない言葉ですが、いびつなものに感じました。
この映画が初見だった人。
こんな記事読まなくていいから、とにかくTVアニメ版を観てくれ!
『オッドタクシー』の面白さはこんなもんじゃないから!!
種明かしすりゃいいってもんじゃない
『オッドタクシー』の魅力を台無しにした映画であることは、ご理解いただけたでしょう。
でも、これだけじゃないんです。
TVアニメ版では語られなかった部分まで丁寧に説明されている点も最悪でして。
僕は決して説明不足な映画が好きなわけではありません。映画好きでは珍しく『2001年宇宙の旅』は苦手ですし、基本的にはある程度の分かりやすさのある映画を好みます。
しかし!この映画は説明しなくていい部分まで、説明しちゃってる。あえて視聴者に謎を残し、考察する余地を与えていたのに、求めてもいない答えを押し付けられた感じです。
なんでも説明して、答えを用意すりゃいいってもんじゃないんですよ。
そもそも『オッドタクシー』って空白の部分を作るのがうまかったし、自由な解釈ができるのが魅力でもあったのに、みずから潰してどうすんの?
「映画にしなくてよかったと思えてくるね」
さらにひどいのがラスト。
TVアニメ版のラストは、実は殺人犯だったことが判明した和田垣さくらが、小戸川のタクシーに乗り込んだところで幕を閉じました。
これ賛否あるかもわからんけど、僕にとってはすごい秀逸なラストでした。
全員が救われたかと思いきや、暗い影を落として、物語が終わる。まさに『インセプション』や『ジョーカー』にも似た、ある種の“壮絶なラスト”だったんです。
それをまぁ、見事に壊してくれて。
解釈を視聴者に任せたはずのラストに、まさかの答えを提示するという(笑)
「小戸川がさくらに殺される」「小戸川が反撃する」「さくらを説得する」などなど、無限の可能性があったラストをひとつに絞ってしまうなんて。
だったら最初から、決められたラストを用意すればよかったじゃん?
そもそも、あの見方によってはゾッとしてしまうラストが素晴らしかったんじゃないか!!後日談とかいらねぇタイプの作品だったでしょ。
結局、初見の人にとってはわかりにくく、アニメを観た僕にとっては受け入れられない映画でした。
一応内容的にはボイスドラマ関連のストーリーもちょこっとあったんですが、これ以上広げなくていいですわ。
最後に
『オッドタクシー』が好きだっただけに、本当に残念としか言いようがない。
これなら追加映像とかなく、普通に総集編として新規の方も楽しめる映画に組み上げてほしかった。
「1クール観る時間がない!」って人にも勧められる総集編は世の中にたくさんあるし、布教にも使える映画になっていたら本当に嬉しかったんだけど……。
最近は1から10までキッチリ説明するのがトレンドなのかも。
『オッドタクシー』のラストでモヤっとした人が多くいたから、このような結果になったのかもしれません。
僕は『コードギアス』も続編を作らず、「なぁ、ルルーシュ」で終わってほしかった人なんで……。
時代遅れな人間で大変申し訳ないのですが、やっぱアニメ版のまま終わってほしかったところ。
以上。
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