『マイブロークンマリコ』映画化すんの? しかも主演が永野芽郁??
原作を読んだ人の中では、永野芽郁ちゃんとシイノの組み合わせがしっくりこなかった人もいるのではないか。
僕もそのひとりで、「でも、タナダユキ監督だしなぁ……」という気持ちで、期待半分、不安半分で観に行ったら……
不安は開始5分で打ち砕かれた
タバコをプカプカやっているその姿は、まぎれもなくシイノだった。そこに皆大好き永野芽郁は存在しない。
あとはタナダ監督の手腕に全信頼を寄せ、シイノとマリコの物語を見届けるのみ。
※以下、『マイブロークンマリコ』原作・映画のネタバレが含まれます
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ストーリー
映画は社会人のシイノが、親友のマリコを失うところから始まる。
マリコとシイノは親友同士で、学生生活が終わっても、人生のことある節目で再会してきた。
虐待を受け、不安定だったマリコはいつもシイノを頼っていたが、死の瞬間、マリコはシイノに連絡のひとつも寄こさなかった。
親友が死んだことへの悲しみと、自分に相談もなく逝ったマリコへの怒りで満ちていくシイノ。
彼女はマリコの遺骨を父親から強奪し、海へと旅立っていく。
簡単に言ってしまえば、この映画はロードムービーであるわけだが、シイノは親友の“遺骨”と旅をする。生命力に満ちあふれたシイノと、すでに灰となったマリコ。
旅をとおして、ふたりの過去が徐々に明らかになっていく構成だ。
ストーリーは原作と概ね同じだが、上映時間の関係からか、若干オリジナルシーンが追加されていた印象。
決して原作のストーリーを邪魔するものではないので、原作ファンにもおすすめしたい作品である。
親友の死とこれから
僕も中学時代に友人を亡くした経験がある。後ろの席に座っていた彼は、中学1年の冬に突然いなくなり、特別な言葉を交わすこともなく、逝ってしまった。
彼のことを感動的に書く気はさらさらないのだが、本作を観ている最中、僕の頭の中にはずっと彼の顔があった。
久しぶりに中学時代の親友と再会したような、そんな映画だ。
シイノは親友のマリコを亡くしたが、彼女は生きていかなくちゃならない。
彼女の人生はこれからも続くし、嫌な上司に怒られたり、食堂でラーメンをすすったり、そんな日常を当たり前のように生きていかなくちゃならないのだ。
これは生きている人間の義務であると思う。身近な人の死を経験した方にとっては、こんな話、当たり前かもしれないけど。
でも、“ケリ”をつける必要もある。
ブロークン
タイトルにもあるように、マリコはすでに“壊れている”。過去形である。
マリコは父親に虐待され、男たちからは搾取され、生きている時点から壊れていた。
いや、壊されていたのだ。修復不可能なほどに。
そしてマリコは自殺した。もう直すこともできず、灰になり、死してなおマリコを“壊した”張本人である父の手に渡る。
シイノはマリコを取り返し、海へと連れていく。
それはマリコを直す旅ではなく、あくまでもシイノとマリコの関係に“ケリ”をつける旅。
シイノはマリコのことを「仲よかったアイツ」程度の思い出にはしたくない。
マリコとの思い出を詳細に思い返し、綺麗なだけじゃない、ありのままのマリコを記憶にとどめていようとする。
この辺りで、僕の感情はぐちゃぐちゃになっていた。
悲しみもあれば怒りもあるし、永野芽郁ちゃんの演技は事件で、奈緒さんは完全にマリコ。
漫画で読んでいたとき以上に、力強く彼女たちの物語が伝わってくるのは、タナダユキ監督の手腕でもあるだろう。
最後に
僕はタナダユキ監督が好きで、おそらくほとんどの監督作を観ているが、その中でも『マイブロークンマリコ』は特に好きな作品になった。
好きなシーンをあげればキリがないが、特にラストのススキのシーン。
海と遺骨の組み合わせで、どうしても『ビッグ・リボウスキ』が出てきてしまったのは僕だけではないと思うが、ススキにマリコの遺骨が降り注いでいくシーンは涙なしでは見られない(泣いてないけど)。
永野芽郁ちゃんはタバコ吸う姿が様になっていて、誰もが驚愕するしかないんだけど、やっぱり奈緒さんの演技に惹かれてしまう。
セリフがなくても病んでいる感じが伝わってきて、痛々しくもあるし、一歩間違えば足を踏み外してしまう恐ろしさもある。つまり、説得力がスゴイのだ。
いろいろ書いたけれど、今年の邦画ではおそらくNO.1になる。
以上。