映画「ムーンライト・シャドウ」評価と感想(ネタバレ) キッチン2作品あってこそだと思う

大切な人を亡くしたとき、どう受け入れればいいのか……

人は必ず死ぬ。そんなことは当然わかっているんだけど、近しい人の死は簡単には片づけられません。

きっと自分が死ぬまで、その人のことを考えるし、癒されることはあっても忘れることはないんでしょう。

『ムーンライト・シャドウは、事故で亡くなった恋人の死を受け入れるまでを描いた作品です。

……それもあるけど、本当は小松菜奈が目当てで観ました

 

※この記事は映画の一部ネタバレを含んでいます!

 

ムーンライト・シャドウ

作品概要

今作は吉本ばななの代表作『キッチン』に収録されている短編小説でして、『キッチン』2作品同様、生と死を描いた作品です。

吉本ばななの初期の作品で、僕はその不思議な世界観に惹かれたことを覚えています。『キッチン』の方が好きだけど。

30分くらいで読める短い作品だから90分の映画にしても……って感じではあるんですけどね。そこは小松菜奈さんが補ってくれるんでしょう。

小松菜奈は僕と同い年の女優なんで、勝手に親近感が湧いているという。映画を観に行く以外の応援はしてませんが…。

評価

 

★4/10

 

これだけ単独で観ても……

この映画の雰囲気や余白の使い方が好きな人もいるでしょうが、原作を読んでいて展開を知っていると、どうしても長く感じる。

『ラ・ジュテ』からの『12モンキーズ』とか、『輪廻の蛇』からの『プリデスティネーション』みたいな横の広がりは見えず、今作はただ細く長くなっただけ。

どの場面を見ても「ファッション雑誌の表紙か!」ってくらい、アーティスティックな画面作りは好き。

 

以下、ネタバレこみの感想です

 

感想

僕が思うに、原作は『キッチン』2作品の後に読むからこそ、心に刺さる作品だと思う。

もし教科書か何かに『ムーンライト・シャドウ』だけ載っていたら、ここまで僕の中に残ることはなかったでしょう。

まったく別の小説ながらも共通点が結構あって、『ムーンライト・シャドウ』の一歩先をいった作品が『キッチン』といえます。

大切な人の死、生き残ったふたりの奇妙な関係、そして夢と現実の曖昧な部分にフォーカスした展開……

『キッチン』との相乗効果というか、「ウッチャンに対するナンチャン!」な相性の良さが作品の中に活きていました。もちろん単体で読んでも評価された作品なんですが、「映画の2本立て」のように作品そのものにプラスされた、「相性」の部分が僕は好きだったかなと。

 

さて、映画の『ムーンライト・シャドウ』に話を戻すと、この作品単体で観ても原作を初めて読んだ時のような衝撃はない。理由は上記のとおり。

物語は恋人を失った主人公さつきが、恋人の弟だった柊と共に、恋人の死を受け入れる……といったもの。蜃気楼の中に故人の姿が浮かび上がる、若干ファンタジーに感じる要素もありますが、原作だと天体現象と同じような扱いをされていました。

夢なのか、現実なのかわからない絶妙な世界観に、死による喪失感をプラスした雰囲気が今作の魅力だと思っていて。

映画版でも壮大な音楽を使わず、小松菜奈の表情と時間的な余白を多く使った演出で原作再現がなされていましたが、とにかく長い!

90分ちょっとだから映画としては短い方なのでしょうが、原作のストーリーをただ細く伸ばしただけで、足りない時間は演出と演技で補うという原作を読んでいる人からすると退屈にすら感じる映画でした。

「ストーリーを知っている」点が、マイナス面で作用しちゃったかなと。

それだけでなく、故人と再会できる「月影現象」が都市伝説っぽく扱われているのも非常に残念。『世にも奇妙な物語』じゃないんだから、「月影現象って噂知ってます?」みたいな展開はやめてほしい。

そして柊のセーラー服に関してですが、わかってはいたけど、実写で観ると『サイコ』のノーマン・ベイツ。同情を誘うよりも、少し不気味に映ってしまう。

柊を演じた佐藤緋美さんの「ほっとけない」魅力は、今作の出来そのものに大きく貢献したと思う。もちろん小松菜奈さんも含めまして、俳優たちの演技を楽しむ作品ではあったかなと。

一番好きだったのはピタゴラスイッチのシーンです。

 

Fin


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アイキャッチ画像 (C)2021映画「ムーンライト・シャドウ」製作委員会