どーも、スルメです。
歴史上、もっとも偉大な映画は『市民ケーン』である!!
そんなことをどこかで目にした覚えがあります。
もちろん、反論もあるでしょうし、「いやいや、こっちの映画のほうがいいだろ!」という意見もあるでしょう。
しかし、僕は『市民ケーン』こそが「映画史上最高傑作」って意見に、納得してしまったんですね。
それは僕が『市民ケーン』が好きだからとかではなく、映画としての力といいますか、影響力を知っていたからです。しかもそんな歴史的傑作を当時25歳だったオーソン・ウェルズが作ったというのだから、なお凄い。
『市民ケーン』だけでも記事一本書けるくらいネタがありますが、今回は『市民ケーン』の脚本家を描いた『Mank/マンク』について語ります。
『市民ケーン』の話なんかもちょくちょく交えながら書いていくんで、よろしければ最後までどうぞ!
Mank/マンク
監督 | デヴィッド・フィンチャー |
脚本 | ジャック・フィンチャー |
出演者 | ゲイリー・オールドマン、アマンダ・セイフライド、リリー・コリンズ、チャールズ・ダンス 他 |
製作国 | アメリカ |
上映時間 | 2時間11分 |
監督のデヴィッド・フィンチャーは『セブン』とか、『ファイト・クラブ』とかのサスペンスのイメージが強い監督です。最近では『ゴーン・ガール』を撮ったりしてましたが、本作が6年ぶりの監督作となります。
しかも、本作では自身の父であるジャック・フィンチャーの脚本を使ってるんですよね。現在はすでに亡くなっているのですが、時を超えて親子のタッグ作が作られるって、それだけで映画みたい。
主演は『ウィンストン・チャーチル』でオスカーを獲得した、ゲイリー・オールドマン。一番有名なのは『レオン』のスタンスフィールド、『ハリーポッター』のシリウス・ブラック役ですかね。
完全に個人的な意見ですが、ゲイリー・オールドマンは存命の俳優の中で1,2位を争う偉大な役者だと思ってます。そして、この個人的な意見に同意してくれる人も少なくないと確信してるw
共演は『マンマミーア』のアマンダ・セイフライド、『白雪姫とか鏡の女王』のリリー・コリンズ、『ゲーム・オブ・スローンズ』のチャールズ・ダンスなどなど。
Mank/マンクの評価
★6
少なくとも『市民ケーン』は観ておいたほうがいいかも。
僕も先日8年ぶりくらいに鑑賞したんですが、ストーリーやセリフを覚えているまま、『Mank/マンク』に臨めてよかったなと。
そして見せ場はあるものの、淡々と物語が進んでいくので、万人に勧められる作品ではない!やっぱり映画が好きで、昔のハリウッドが好きで、『市民ケーン』が好きでって人に刺さるんじゃないかな。
で、僕はといいますと、ミスターゲイリー・オールドマン、アマンダ・セイフライドの演技も好きだし、語り口も良いのですが、フィンチャー作品と考えるとインパクトを感じないかなと。
まぁ、伝記映画ですし、今までのフィンチャー作品と比べてしまうのもあれですが。
※ここからはネタバレを含みます
Mank/マンクの感想&ちょっと解説
そもそも『市民ケーン』とは
本作を語るうえで欠かせない『市民ケーン』。
どんな映画がかるーーく解説しておきますと、亡くなった新聞王ケーンが最期に残した「バラのつぼみ」という言葉の意味を探すストーリーです。
実は「バラのつぼみ」自体は重要ではなく、大金持ちケーンの人生を振り返っていくって映画なのです。『Mank/マンク』のセリフでも「2時間でひとりの男の人生を…」と言っていましたが、まさにひとりの大富豪の人生を描き出した映画でした。
で、なぜこの映画がここまで評価されてるかって話ですが、まずは脚本の構成。『市民ケーン』はすでに主人公であるケーンが死亡している時間軸からスタートします。そこから彼の人生をフラッシュバックするがのごとく、重要なシーンを振り返っていくわけです。
これは『Mank/マンク』にも踏襲されていまして、主人公は生きているけど、過去と現在の物語が交互に進行しています。そして過去編でも現在でも同じ俳優が演じているのもポイント。『市民ケーン』では若いころのケーンも晩年のケーンも、当時25歳だったオーソン・ウェルズ演じました。
そのほかにも撮影技法(有名なのはパンフォーカス)などが評価されておりますが、最大の特徴が実在した人物をモデルにしている点です。
『市民ケーン』は当時存命だったウィリアム・ランドルフ・ハーストがモデルになっています。まぁそれが問題になってふた悶着くらいあったのですが、40年代当時の大富豪のプライベートをモデルにする革新性がありました。
この「モデルがいる」の部分が『Mank/マンク』でも深く掘り下げられておりまして、ハーストは名優チャールズ・ダンスが演じていますね。ハーストと『市民ケーン』の脚本を書いたマンクの関係性も知っておくと、映画がスムーズに観られるはず!
オーソン・ウェルズとマンク
もうひとつ知っておきたいのが、『市民ケーン』の監督兼主演のオーソン・ウェルズと、脚本家ハーマン・J・マンキーウィッツ(マンク)の関係性です。
オーソン・ウェルズは若くして天才と呼ばれた男でした。映画界に入る前は劇団を主宰してまして、ここで才能が認められたと。このころのウェルズの逸話としては、彼が手掛けたラジオドラマ『宇宙戦争』を聴いた人たちが、本当に宇宙人が攻めてきたと思ってパニックになったとか。その時代に生きていたわけではないけれども、音だけで緊迫感を伝える圧倒的な演出力が彼にはあったのでしょう。
で、そんなウェルズの能力を知った映画界がハリウッドに呼び寄せて、映画作りのすべてを任せます。その映画こそが『市民ケーン』なわけです。
そして映画の脚本家にマンクを雇います。このときに「脚本家としてマンクをクレジットしない」と契約を交わしました。つまり、エンドロールに「脚本 オーソン・ウェルズ」と書かれてしまうと。
結果的には映画と同様、マンクが不服を申し立てて共同脚本として知られるところとなりました。ただ、当初は「契約」通りにウェルズだけクレジットされるはずだったんで、当のウェルズは面白くなかったんでしょう。
マンクがなぜ意見を変えてクレジットに入ることを望んだのか、その部分を『Mank/マンク』では描いています。
『市民ケーン』の答え合わせのような映画
ここからが僕の感想です!
まず、本作は『市民ケーン』ありきの映画だということ。細かい点も含めて『市民ケーン』を観ていなければ、迷子になってしまうかもしれません。
たとえば、『市民ケーン』の中でケーンが選挙に出馬するシーンがあります。彼は自身のカリスマ性を使って、民衆の味方であると宣伝をしました。結果的には負けてしまうのですが、このアイデアはどこから来たのでしょうか?
その答えが『Mank/マンク』の中にあります。劇中でケーンのモデルとなるハーストやその仲間たちが、ニュース映画を使って州知事選の情報操作を行うのです。この不正に不信感を覚えたマンクは、映画『市民ケーン』を使ってハーストたちを批判したのでした。
また、『市民ケーン』でケーンの愛人となるスーザンは、アマンダ・セイフライドが演じたマリオンと重なります。おそらく劇中のマンクはマリオンを特別視していたんでしょう。彼女をモデルにしたスーザンも「哀れな女」として描くのではなく、最後にはケーンのもとを去る女性として描いています。
つまるところ、『Mank/マンク』は作品全体が『市民ケーン』の答え合わせみたいになってるんですよ。
だから『市民ケーン』を知らなければ、答えだけを観ているような感じになると思う。続編とかほどつながってはいないんですが、やっぱり『市民ケーン』ありきで作られてるからなぁ。
ここがほかの伝記映画と大きく異なるところ。『ボヘミアン・ラプソディー』なら「Queen知らなくてもいけるっしょ!」って言えるけども、本作は安易に勧められないよね。
確かに主演が「存命しているもっとも偉大な俳優」ゲイリー・オールドマンだし、アマンダ・セイフライドも素晴らしい演技を披露しているのですが…。僕個人としてはどう評価していいのかわからないのが正直なところ。
ただ、アカデミー賞とかの賞レースは好きそうですよね。主演男優、助演女優はノミネートされるだろうし、監督、作品、脚本もありえるでしょう。
そんな感じで、僕の感想とさせていただきます。
以上!!!
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