
今回は神尾楓珠さんの主演作『恋は光』の感想です。
原作は秋★枝先生の同名漫画で、恋愛漫画としては非常にセリフの多い作品でした。
どこかのサイトで拝見した、「“外はふんわりでも中はしっかり詰まってます”」というプロモーションにピッタリの作品だなと。
個人的には「アニメが最初に来るかな~」とか思っていたんだけど、まさかの実写映画化。確かにこれだけ情報量の多い恋愛漫画だと、映画にした方がすんなり入ってくるかも。
キャストの方々も魅力的だし、これは期待できるぞってことで鑑賞して参りました!
恋は光
あらすじ
大学生の西条は人間の“光”を見ることができた。見え始めたころは“光”がなにか分からなかったが、西条は“光”を「恋している人間が発するもの」だと仮定し、人の恋愛感情を見破るようになっていく。
そんなある日、ちょっと変わった女子大生・東雲と出会ったことで、西条の生活が少しずつ変わりはじめる。西条は親友の北代に相談し、東雲と接点を作ることに成功。
東雲は「恋とはなにか?」を真剣に考えていて、北代の気持ちを知りつつも、徐々に西条に惹かれていく。
作品概要
原作は漫画であるのに、文学的な雰囲気が漂う一風変わった恋愛漫画です。
実写化においては、原作の持つ独自の雰囲気をどう映像化するかが焦点になるかと思います。キャッチコピーも「恋を解く。」ですしね。
西条が見ている光の演出もそうですが、キャラクターたちの議論に巻きこまれていくようなセリフまわしとか、「これだけはやっとかなきゃいけない!」って部分が多いような気がする。
そんな本作の監督を務めたのは、『殺さない彼と死なない彼女』の小林啓一(以下、敬称略)。『殺さない~』はかなり評判も良く、映画好き界隈でも盛り上がりも見せていましたが、本作もそれに続くのか……
キャストの方を紹介していくと、主演を務めるのが『彼女が好きなものは』の神尾楓珠。
3人のヒロインには平祐奈、西野七瀬、馬場ふみかが抜擢されております。
『恋は光』評価
ストーリー | ★★★★☆ 4/5 |
キャスト | ★★★☆☆ 3/5 |
演出 | ★★★☆☆ 3/5 |
原作再現度 | ★★★☆☆ 3/5 |
総合評価 ★ 7/10
「大胆な映画だけど僕は好き!」
「恋を解く。」というよりは、「恋を説く。」映画になっていてほしいなと思っていました。
キャラクターたちは確かに“解く”ことになるのだけど、原作はそんな彼らを通じて恋を“説く”物語だったし。
「恋とはなにか」なんて、こっぱずかしいことを延々と語り続ける作品ですから、それなりに説得力がないと成立しないわけで。
その点、実写化してもそこまで違和感がなく、恋を解いて説かれる、世にも珍しい恋愛映画になっていました!
後で詳しく書くけれど、原作とラストが違うのよね。
僕は原作のラストに若干「ん?」っと思った読者でしたから、映画のやり方には大賛成!やっぱこの流れならそっちのルートいかなきゃな。
ただ、原作ファンの中では賛否分かれそうですよね~。
原作を完全再現することが実写映画の絶対的なルールじゃないんで、作品の芯を残していれば、全然アリだとは思うけれど。
※以下、『恋は光』の原作・映画両方のネタバレを含みます
『恋は光』感想
愛だとか恋だとかいわれても
この映画は主人公・西条が見ている“光”の正体がなんであるかがキモになっています。西条自身は「光=恋」だと仮定し、「恋をしている女性が光る」と考えていますが、西条のことを一途に想い続けている北代は一切光っていません。
しかし、西条に好意を持つ東雲や、北代から西条を略奪しようとしている宿木嬢は光ります。三者三様の恋の形が描かれているわけですが、一番想いが強いはずの北代は何故か光らない。
さて、この光とは結局何なのか?
そんな疑問を抱えつつ、「そもそも恋ってなんだよ」って議論をくり広げていくのが、この映画の面白さになっております。
「恋を真正面から描きすぎだよね」
ここまであからさまに「恋とは。恋とは。恋とは」と言われてしまうと、こっちも恥ずかしくなってくるよね。むしろそこが本作の魅力でもあるわけですが。
そしてこの作品最大の魅力が、主要キャラ4人が全員恋に関して異なる感性を持っているということ。
宿木嬢の恋は略奪。異性の魅力を自分ではなく、他人の評価で決めるタイプ。誰かの彼氏にはとりあえず手を出しておきたいし、そもそも恋=優越感にもなっているから、客観的に見ると歪んでいるといえるかも。
東雲は恋を読み解くタイプ。彼女は浮世離れした女性で、恋を体験したことがないまま大学生になっています。映画中盤で西条に対して恋心を抱きますが、自身の中にある嫉妬心を客観視したりして、やっぱり不思議ちゃん。
北代は一途なタイプで、西条さえ幸せなら相手が自分じゃなくてもいいと考える超健気な恋愛をします。僕が(おそらく他の多くの観客・読者も)一番好きなキャラでして、誰もが応援したくなるはず。
そして、主人公・西条はタイトル通り“恋の光”が恋愛においての重要な判断ポイントです。そのため、光が見えない北代に対しては特に意識していた様子もなく、東雲や宿木嬢に意識を持っていかれていました。
という感じで、全員が異なる恋愛観を持っているので、議論もはかどるというもの。原作は「デスノートかよ!」ってツッコみたくなるくらい、文の量が多くて、恋に対する議論こそが作品の根幹になっています。
映画版では若干の物足りなさはありつつも、恋議論に多くの時間が割かれておりました。理性による恋と本能による恋の違いとか、他のラブストーリーでは触れられてこなかった根本の話が結構ありまして、「なるほどな~」と納得する場面もしばしば。
まぁ僕は恋愛経験多くないし、この映画で描かれているような恋心を抱いたことがないのですが。これまでなんとなーーーくでお付き合いしてきたから、そんな真剣に考えられると、ちょっと罪悪感すら湧いてくるよね。
愛だの恋だの言われても僕の心に落ちてこない映画が多い中、ここまで真摯に語られると興味深い。
キャストたち
キャストたちは原作通りとはいかないまでも、どのキャラクターもすんなり入ってくる方々でした。
特に北代役の西野七瀬さん。本格的に演技を見たのは『あさひなぐ』以来だったのですが、サバサバでも一途な北代をこんなにも自然体で演じられるのかと。
北代って少なくとも僕の周囲にはいない女性だし、男性目線から見る理想の女性像を体現したようなキャラだと思うんですよ。それが、実写で描かれるとより現実感が増して、大学なら普通にいそう。ちょっとした顔見知りにも出会うたびに「おおっ、おつかれ~」って声かけてそう。でも、真に仲のいい友達は少ないみたいな。
そんなバックグラウンドを妄想してしまうくらいには、現実にいそうな女子大生になっていました。
この映画をきっかけに「西野七瀬」で検索かけたのですが、僕より年上でちょっと驚き。僕が大学にいたら「5回浪人した大学4年生」にしか見えないでしょうし……。うーん、どう見ても年上には見えんな。
「役者ってスゲー」
もちろん、東雲役の平祐奈さんのフワフワだけど芯のある演技とか、嫌な役に徹した馬場ふみかさんの演技も素晴らしかった。伊東蒼さんとかもチョイ役で出演していたし、演技面でも楽しめる作品だったのではないでしょうか。
主演の神尾楓珠さんは、「そ、そうか」「な、なんだ」「そ、その」と言いよどむ時の台本読んでる感が若干気になる。そのほかのシーンでは概ね西条でしたし、ラストの告白シーンも劇場の空気が変わるのが肌でわかるくらい、名シーン&名演技だったと思います。
はい、ではルート分岐こと、重要な告白シーンに参りましょう。
告白しますか?「はい」「いいえ」
幼なじみヒロインは負けがちである。
『冴えカノ』のエリリ、『シュタインズ・ゲート』のまゆり、『ニセコイ』の小野寺、そして『恋は光』の北代……
なんか知らないけど、幼なじみが勝つパターンって最近のラブコメでは見ない気がします。幼なじみがいない僕にしたら憧れだけど、実際は距離が近すぎて恋愛関係に発展しないのかもしれません。知らんけど。
そんなわけで、
『恋は光』においては東雲が勝者となり、北代と西条が結ばれることはありませんでした――
原作では……!
そう、実写版である本作ではルート分岐が起きて、北代ルートへ一直線!まさかの勝ちヒロインが変わってしまうという、オリジナル展開に発展していきました。これがギャルゲーだったら、ぜったい北代ルート選ぶもんな。そりゃそうだよな。
賛否が起きそうなポイントはここでして、東雲ルートでの終わり方も僕は好きでした。読者の中には大いに納得し、これ以外のラストは認めない!って人もいるでしょう。
けれども、僕は最終話で東雲と西条が一緒にいる場面を学食から眺める北代って構図が、そりゃもう切なくて……。一番好きなヒロインが負け、潔く友人に譲る。健気すぎて、健気すぎて。
この切なさも残しつつのラストで喜ぶ人もいるだろうけど、僕は一周まわって北代に人間味を感じなくなったんですよね。だって小学校から大学までずっと好きだった人、本能の恋ではなく理性の恋で想い続けたんだぜ?それなのにいい人すぎでしょって。
「人間ができすぎてるのも問題あるよね」
その点、映画版の北代はしっかり西条と結ばれてめでたしめでたし……
になるはずが、東雲に対する対応をちょっと疑問に思ったりもする。だって東雲が気になったから西条は交換日記をはじめたわけだし、その時点で東雲ルートに入っているだろうから。そこから北代に行くのは、ちょっと東雲に対して不義理な気もする。
まぁ、僕はどちらにせよ納得できないんでしょうね。だって北代も東雲も好きだし、漫画の時点で彼女たちに感情移入しすぎた。
でも、映画は映画で違った未来を見ることができたし、原作の要素を残しつつ新たな展開に持っていったことは素直に評価したい。
最後に
秋★枝先生の絵がとても好きなので、ぜひアニメ化を!
アニメ化した際には、また別のラストを用意してくれると嬉しいよ。
以上。
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