
今回はウィル・スミス主演作『ドリームプラン』の感想を書いていきます!
本作は本国アメリカで高い評価を受けていて、ウィル・スミスも自身3度目のアカデミー賞主演男優賞にノミネートされています。
なんといっても作品賞にノミネートされていますからね。観る前からドラマ性と娯楽性に富んだ作品なのではないかと、期待しておりました!
ただ、ウィル・スミス演じる父親の姿勢には、若干日本との温度差を感じることもあったので、今回はその点も踏まえながら感想を書いていけたらなと思います。
ドリームプラン
あらすじ
リチャード・ウィリアムズは優勝したテニスプレイヤーが4万ドルの小切手を受け取る姿をテレビで見て、自分の子どもをテニスプレイヤーに育てることを決意する。テニスの経験がない彼は独学でテニスの教育法を研究して78ページにも及ぶ計画書を作成し、常識破りの計画を実行に移す。ギャングがはびこるカリフォルニア州コンプトンの公営テニスコートで、周囲からの批判や数々の問題に立ち向かいながら奮闘する父のもと、姉妹はその才能を開花させていく。
映画.comより抜粋
作品解説
本作は世界的なテニスプレーヤーのビーナス&セリーナ・ウィリアムズと、その父親・リチャードを描いた作品です。
独学でテニスのコーチングを学び、ふたりの娘を一流プレイヤーに育てた、実話が基になっています。
これだけ聞くと、スターダムを駆け上がるサクセスストーリーに思えますが、そんな単純な話ではありません。父と娘の関係や、テニス界における黒人選手の立場など、かなり深い部分にまで言及していく作品でした。
キャストの方は、主演のウィル・スミスを筆頭に、
『ビールストリートの恋人たち』のアーンジャニュー・エリス、『ダイバージェント』シリーズのトニー・ゴールドウィンなどが出演。
また、『ウォーキングデッド』やドラマ版『パニッシャー』のジョン・バーンサルがコーチ役で出演しております。
ちなみに、ウィリアムズ姉妹を演じたのはサナイヤ・シドニーとデミ・シングルトンのふたりです。
感想
スルメ的評価
ストーリー | ★★★☆☆ 3/5 |
キャスト | ★★★★★ 5/5 |
演出 | ★★★★☆ 4/5 |
映像 | ★★★☆☆ 3/5 |
総合評価 ★7/10
「ウィル・スミスがいたから出来た映画に見える」
テニスのルールすら知らない僕でも、さすがにふたりの名前くらいは知っていました。それくらい超有名選手の伝記映画だから、興味がわかないはずがない!
しかも、プロコーチではなく、テニス素人の父親によるコーチングで、ある程度の領域まで達したと。このエピソードだけで映画1本作れそうなくらい(実際に作ったけど)、パワーのある題材なんですよね。
本作はなんといってもウィル・スミスの存在がデカい。一歩間違えればやりすぎに見える教育も、リアルでもたぶん親バカなウィル・スミスが演じるから、妙に説得力が出てくるのよね。
もし、主演がウィル・スミスじゃなかったら……。ここまで「愛ゆえの厳しさ」を体現できなかったと思う。
とはいえ、若干温度差を感じてしまう部分も。でも自分自身や子どもたちの力を信じることって大切だよね?
※以下はネタバレが含まれます
その計画は夢か悪夢か
貧困層出身のリチャード(ウィル・スミス)は、テニス選手が莫大な金額を稼いでいることを知り、自身の娘ふたりを一流テニス選手に育てる計画を立てます。
それこそが、「ドリームプラン」。テニス素人のリチャードはある程度までは自分で教え、その実力を著名なコーチに見せつけて、無料でコーチングさせてもらおうと考えました。
でも、世の中はそんなに甘くありません。当時のテニス界は白人たちのテリトリー。黒人のリチャードが現れ、コーチングを懇願しても、「バスケを習わせれば?」と門前払い。
しかし、リチャードは諦めない!白人だらけのテニス界で娘を活躍させるため、日々特訓を重ねていきます。
ついにプロコーチに認められ、試合に出場しはじめたビーナス・ウィリアムズは、テニス界に殴り込み。次々と試合を制覇し、全米でも注目されるジュニア選手へと成長していくのでした。
ところが、リチャードが喜ぶことはなく、今度は「子どものうちは子どもでいろ」との教えを展開。試合に出すことも許さず、ビーナスの実力を認めながらも、学業優先の生活を強制します。
「え、実力あるのに何で試合出ないの?」と世間も困惑気味の中、果たしてリチャードが立てたプランは成功するのか……?
というのが中盤までの展開。
ビーナス&セリーナは現にトップ選手になっているわけだから、結末は観る前からわかっているのだけれど……。
ただここで疑問なのは、
「その計画、失敗したらどうすんの?」ってこと。
結果的に成功するから映画になっているわけだけど、プランが失敗していたら、娘たちを振り回した父親になってしまう。
「なかなか危うい計画にも見えるけど……」
一見すると自分の考えを子どもたちに強制する父親に見えるわけで。
娘ふたりがテニス好きで、じゃあ計画立てよう!ってプロセスならいいけど、リチャードは生まれる前からプランを立ててますからね。娘は生まれた瞬間から親によって、テニスプレイヤーになる道を定められてしまっています。
この点が、若干温度差を感じてしまう要素かなと。本作が合わなかった人はたぶんココが引っかかるんだと思う。
僕の大好きなゲームに『MOTHER 2』という作品があって、その中で主人公のママがこんなセリフを発します。
えらいひとや おかねもちに ならなくてもいいけど‥‥ おもいやりのある つよいこに そだってほしいわ。
個人的には大多数の人が子どもに対して、このセリフのように考えると思っていて。将来は親が決めることではないけど、とりあえず優しい子に育ってくれと。
でも、リチャードは「お前は誰からも尊敬されるテニスプレイヤーになるんだ!」と、まあまあ重めのプレッシャーをかけてくるんですよね(笑)
もちろん、その期待をビーナスやセリーナが受け止めているから、この映画は成り立つのですが。
それでも、「私歌手になりたい!」と言いだしたらリチャードはどうしただろう?と思わずにはいられねぇ!
ウィル・スミスの演技がすべて
『ドリームプラン』を観て、まず最初に思い浮かべた作品が、インド映画の『ダンガル きっとつよくなる』でした。
『ダンガル』では夢破れた元レスラーが、娘ふたりにレスリングを教え込み、男社会だったレスリング界で駆け上がっていくお話です。どことなく『ドリームプラン』との共通点が多いと思いませんか?
この映画でも父と娘の関係性にフォーカスされていて、しかも実話を描いた話です。どんどん共通点が見つかりますが、主演俳優の演技に作品すべてが乗っかっている点も共通しています。
どちらも主演俳優が違っても、シナリオと、サブキャストの演技が素晴らしいことに変わりありません。
でも、主演がアーミル・カーンじゃなかったら、主演がウィル・スミスじゃなかったら、評価は大きく変わっていたと思うんです。
「本作もいろんな意味でウィル・スミスの映画だったよね」
ウィル・スミスは、実の息子主演の映画(当然自分も父親役で出演)を作ったり、記者の前でべたべたな姿を見せたりと、たぶん親バカなんですよ。いや、たぶんじゃなく、絶対だな。
僕の中にはこのイメージが強くあって、本作のどんなシーンでもリチャードの中にある愛情を疑うことはありませんでした。『スーサイド・スクワッド』や『幸せのちから』でも父親役演じてますし、これ以上ない説得力のあるキャスティングだったのではないかと。
もちろん、説得力じゃなくて、内に秘めた弱さを見せつけてくるシーンは胸を打つものがあったし、佇まいからも感動してしまう。
特に印象に残るのは、銃を持って不良と対峙しようとした、覚悟を決めた表情を見せたシーン。どことなく危うい空気は序盤から醸し出していましたが、導火線に火がついちゃってる男の危険な部分が爆発した(結果は未遂に終わったけど)名シーンでした。
そんなわけで、ほかの役者がリチャードを演じても、映画としてはうまくいったかもしれませんが、本作ほど成功はしなかったと思う。
良くも悪くも、ウィル・スミスが出る映画は「ウィル・スミスの映画」になるんだよね。『アラジン』も『バッドボーイズ』も。
それが彼の魅力だと思うし、隠すことのできないスター性だと思うのです。今回はいろんな意味で素のウィル・スミスが活きてきたから、よけいに「ウィル・スミスの映画」になっていたのかも。
最後に
全体的に好みの映画で、ウィル・スミスの実力を再認識できた作品でした!
テニスを見ない僕はセリーナ・ウィリアムズに対して、プッツンしてラケット破壊するイメージしか持ってなかったんだよね。
セリーナじゃなくても、ニュースではラケット破壊シーンが切り取られることが多いから、「テニス選手って短気なの?」って常々思っちゃってました。
でも、本作ではペースがいかに重要かも描かれていてですね。そりゃあ、些細なことでペース乱されて、努力の成果が発揮できなければ怒るよなと。
ただ、それは他のスポーツにも言えることだし、商売道具ともいえるラケットにあたるなんて……。
やっぱり理解はできませんでした。
以上。
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