『海獣の子供』ネタバレ感想 深そうに見えても底が浅い、海の物語


今年の夏は異常なほど劇場アニメラッシュですね。

最近結婚された川栄李奈さん主演の『きみと、波にのれたら』や、日本限定でアベンジャーズ以上のパワーを発揮した『名探偵コナン』。

あと『バースデー・ワンダーランド』かな。観てないけど。トリガー製作の『プロメア』もありましたし。

さらに今年のアニメ映画大本命!新海誠監督の『天気の子』も!

2019年は想像とは違ってアニメ映画が熱い年になりそう。

さて、その中でもダークホース的扱い(私の中で)受けている『海獣の子供』観てきました!

芦田愛菜が声優やっているとかよりも水の表現が驚くほど美しく、予告編の時点で特異な雰囲気を持っていた映画でしたね。

まったく知らなかったんですが、漫画原作なんですね。原作も賞獲ったりとか評価高いようで、知らなかった自分が恥ずかしい…。

ってことで原作未読なんで、変なこと書いてても大目に見てくだせぇ。


あらすじ

自分の気持ちを言葉にするのが苦手な中学生の琉花は、長い夏休みの間、家にも学校にも居場所がなく、父親の働いている水族館へと足を運ぶ。そこで彼女は、ジュゴンに育てられたという不思議な少年・海と、その兄である空と出会う。やがて3人が出会ったことをきっかけに、地球上でさまざまな現象が起こりはじめる。

映画.com

評価

まず最初に僭越ながら『海獣の子供』の満足度を★10段階で表すと…

 

★3

 

いや、怖えーよ!!

子供の時初めて『もののけ姫』のシシガミ様を観て怖くなった気持ちを思い出しましたわ。子供が観たら絶対トラウマになるよなーって思いながら眺めてました。

アニメの描写は言わずもがな、予告編の時点で水に飲み込まれる衝撃があったから知ってたけど、ストーリーがなぁ。

なんというかアニメ映画で言うならディズニーの『ファンタジア』みたいな抽象的映像を垂れ流す映画。理解出来たらカッコよく自慢できる映画ですよね。

 

それにしても芦田愛菜ちゃん、中学生になっても違和感なく芦田愛菜でしたね(?)。やっぱりマルマルモリモリのイメージが強いんでしょうか。

声優陣は芦田愛菜さんをはじめ、ほとんどが声優以外の役者さんたちで構成されていますが、まぁ特別違和感はなかったかなと。

最近は洋画の吹き替えにも芸能人が起用されて話題になることが多いけど、日本産アニメ映画で主要キャラがほぼ芸能人ってことの方が深刻な気が…。

本業の声優さんも声の仕事より、歌の仕事の方が目立っている感じもあるし、その辺ようわからん(笑)

ってことで以下ネタバレ感想です。


感想(ネタバレあり)

圧倒的アニメーション

本作のアニメを作っているSTUDIO4℃『鉄コン筋クリート』を制作したところなんですね。それしか観てないけど「凄いクオリティーのアニメを作る会社」ってことは理解しました。

序盤の空と海が泳いでいるシーンから後半の「祭り」の場面まで、本当に自分が波に飲まれそうな臨場感と緊迫感!

超巨大クジラが画面に現れれば自分が飲み込まれる場面を想像し、空達がジュゴンとじゃれあえば一度も触ったことのないジュゴンの質感や触感が見事に伝わってくる!

最近の日本アニメ映画でこんなに凄いアニメーションを観たことあっただろうか?

いや、ない!

 

アニメって本来人間たちが想像したモノを的確に形にできる一種のツールだったわけじゃないですか。映画の中で言っていたことじゃないけど、言葉で表現できない細かな部分まで再現できる超便利な表現方法だったわけで。

最近はCGの発展によって昔ほどそう言った意味での存在感が薄れつつありますが、『海獣の子供』のアニメーションを観れば2Dアニメが表現できる幅の広さを再確認できました!

もちろん海や海獣の描写だけでなく、空や琉花を始めとするキャラクターたちも「漫画のタッチを上手く表現しているんだなー」と原作未読でも理解できます。

ただ、それだけ凄いアニメーションだったのにストーリーが追い付いてこなくて本当に残念。

残念すぎるストーリー

部員たちと馴染めない女の子が不思議な出会いによって冒険に出る。

それだけ聞けば面白そうに思えますが、この物語はファンタジーなのかSFなのかもようわからんし、結局「祭り」ってなんだったの?

地球は子宮で隕石が精子?

え、それマジで言ってんの(笑)

 

中盤まではジュゴンに育てられた謎の少年、海と空のストーリー。

不器用な琉花と世間を知らない海のチグハグな関係、より複雑な内面を持つ空ともやっぱりチグハグ。

彼らに会いに水族館に行っては船を盗んで沖まで遊びに行ったり、流れ星を観に行ったりと幸せそうな夏休みを送ります。

しかし陸が失踪したことを機に、育ての親である博士たちと「祭り」を観たいどっかの国の政府たちの思惑が入りこみ始める。



そして後半からは何故か世界どころか宇宙も巻き込んだ「祭り(笑)」の物語に。

世界中の海の生物たちが琉花の元に集まってきて、琉花はクジラに飲み込まれ抽象的なイメージを目の当たりにする。

それはまるでスターチャイルドになる直前のボーマン船長。神秘的な生命とか受精の瞬間とかを表現したいんだろうけど、どう見てもパクリにしか見えない。

よく都市伝説的に言われている「人間の身体の中には宇宙がある」って話を無理やり大きくして、それっぽく形を整えた感じです。

劇中でもこの都市伝説を自論のように語るセリフがありますが「それずっと前から言われている話だよね?」って。

それならそれで良いんだけど、何故ただの都市伝説を生命の神秘とかと結びつけるのかなぁ。なんか深そうなこと言っても全部薄っぺらく聞こえちゃうから面白いよね。

 

結局ラストは海と空が消え、いつも通りの日常に戻って終わり。琉花の性格からしてやっぱりハンドボール部に戻ったとしても上手くいかなそうだな。

言語に対するこだわり

これまで考えたことなかったけど、人間は考えているすべてを言語化して伝えられないらしいです。

確かにそう言われてみれば、こんな駄文ばかりのレビューでも一応悩みながら書いているし、他人に自分の考えを伝えるのが難しい時もある。

特に私は小さい時からずっと吃音症に悩んできたから、自分の気持ちが人に伝えられない辛さは痛いほど理解できるんですよね。いつも正常に話せる人たちを妬ましく思っている私からすると、普通に吃音のことを考えず会話できるだけでも幸せだと思いますが。

劇中でも笛のようなものを使って風やクジラと会話するキャラがいたりするし、言葉って実はすごく不自由なものなんじゃないかと。

だからって笛が言葉よりも優れているとは思えないけどね。だって結局は「音」なわけだし。

まとめ

アニメは凄かったから寝ずに堪えられましたー。まぁ後半は寝ていても大丈夫なくらい絶妙に意味のないストーリーでしたが。

とは言ってもやはり映像として記憶に残ることは確か。特にクジラがね。

私趣味でスキューバやるんですけど、海の底ってなんか怖いんですよね。
潜航する前に30m以上下を観るとゾッとするし、そこに巨大なクジラが口を開けて待っているかと思うと…。

 

あとネットで「この映画は難解だ」と言われているようですが、私からすると決して「難解」ではありません。

深そうで難解そうなものを作ろうとしたけど「あとは勝手に解釈してね」と、投げ出されているような感じですね。

とりあえず「もう一度見れば理解できる」とか、そういう類の映画ではないかと。

そして世界のどこかでは『海獣の子供』を理解できる、できないでマウントの取り合いが始まるのだった…。

以上!!!