映画『ジョーカー』評価と感想(ネタバレ) 観ていて辛いのに惹き込まれてしまう

正直ね、ジョーカー単独作やるって知った時こんなに高い評価を得ると思いもしなかったんですよ。

情報が入ってきたときは『スーサイド・スクワッド』のレト版ジョーカーがお披露目されてすぐでしたし、まさかキャスト変えてユニバースからも離して制作するなんて。それ成功すんの?と達観していたというか、疑ってたんですw

今思うと「俺って相変わらず見る目ねぇな」って感じなんですが、さすがにヴェネツィアで金獅子賞とるまで予想してた人は少ないんじゃないですか?

アメコミ映画がですよ?あの世界四大国際映画祭の一つで最高賞って…。アカデミー賞での『ブラック・パンサー』ノミネートもそうだけど、完全に時代が変わったよね。俺アメコミ好きで良かったマジで。

しかも今作は俺がもっとも好きな俳優と言っても良いくらい好きなロバート・デ・ニーロも出ていますしね。下半期では一番の注目作なんじゃないかと。

映画鑑賞前に影響を受けているらしい『キング・オブ・コメディ』辺りをしっかり観直してから挑みました!

ってなワケでさっそくレビューに参ります!!

 

※この記事は『ジョーカー』のネタバレを含みます。

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ジョーカー

あらすじ

「バットマン」の悪役として広く知られるジョーカーの誕生秘話を、ホアキン・フェニックス主演&トッド・フィリップス監督で映画化。道化師のメイクを施し、恐るべき狂気で人々を恐怖に陥れる悪のカリスマが、いかにして誕生したのか。原作のDCコミックスにはない映画オリジナルのストーリーで描く。「どんな時でも笑顔で人々を楽しませなさい」という母の言葉を胸に、大都会で大道芸人として生きるアーサー。しかし、コメディアンとして世界に笑顔を届けようとしていたはずのひとりの男は、やがて狂気あふれる悪へと変貌していく。

映画.com

監督

メガホンを取ったのは『ハングオーバー』シリーズを監督したトッド・フィリップス

他にも『ボラット』の原案を担当するなどコメディの印象が強い監督ですね。『ジョーカー』にこの人が!?という当初の衝撃もありましたが、金獅子賞はスゲェよ。

一時期はマーティン・スコセッシ監督レオナルド・ディカプリオ主演でやるって話があったような…?

ジョーカーの過去が描かれるのはジャック・ニコルソン以来。今回はもう少し観客の心をえぐるようなオリジンになっていそうです。

キャスト

主演は『her 世界でひとつの彼女』のホアキン・フェニックス

早くに亡くなったリヴァー・フェニックスの実弟です。この役を演じるにあたって24キロもの減量をしたらしい。それがあってか予告で彼の魅せる笑顔はもうゾクゾクが止まらねぇ…!影響を受けているであろう『キング・オブ・コメディ』のパプキンとはまた違った狂気を感じますわ。

まだ映画公開前ですが『ジョーカー』での彼の演技はアカデミー賞ノミネートも全然ありそう。それが実現すれば『ダークナイト』でジョーカーを演じたヒース・レジャー以来の快挙ですよ!

 

 

そして俺も大好きなロバート・デ・ニーロ。なんてったってルパート・パプキンやトラヴィスその人ですから。『ジョーカー』に出演するのがどれだけ意味のあることなのかは、お察しの通り。

予告にもあったデニーロがステージで両手をパッと広げるシーン。『キング・オブ・コメディ』へのオマージュなんだろうけど、それだけで感動するよ。いつまで経ってもデニーロはスターだなぁ。俺まだ20代だけども。

その他の共演者は『デッドプール2』のザジー・ビーツ始め、ビル・キャンプフランセス・コンロイブレット・カレンなどなど。

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評価

僭越ながら『ジョーカー』の満足度を★10段階で表すと・・・

 

★8

 

惹き込まれる魔力のある映画

何年かに1本はこういう魔力のある映画が産まれると思っていまして。

『ダークナイト ライジング』のプレミアで”ジョーカー”と名乗った人が銃乱射事件を起こしたんだけど、この映画を事件と関連付けたくなる気持ちも分からんでもない。

それによってこの映画を批判するのは非常に的外れでナンセンスであるのだけれども、魔力のある映画は様々な人間に影響を与えてしまう可能性があるのも事実。

本作に登場するジョーカーと同じ境遇にある人間がこの世界に何人いるのだろうか。ゴッサムシティという架空の都市を描いていながらも、現実にも通ずるところがあるような、そんな気がします。

 

アメコミ原作ではあるんですが、もはや皆のイメージにあるアメコミ映画ではありません。

バットマンも登場しないし、ベインとかペンギン何かの他のヴィランも登場しない。そこにあるのはジョーカーになっていくアーサー・フレックと、壊れつつあるゴッサムシティ。

針ひとつで破裂しそうなほど、不満の膨らんだゴッサムシティに現れたジョーカー。果たしてこの物語はどこに続いていくのでしょうか。

 

ここから先は『ジョーカー』のネタバレを含みます!!

まだご覧になっていない方はご注意を!!

ネタバレ感想

ジョーカーのオリジン

『ダークナイト』でのイメージが確立しているであろうジョーカー。彼が話すのは過去にケチな泥棒だったこと、傷が出来た経緯(嘘であるが)のみ。

あの映画では敢えてジョーカーの過去を明確に描かないことで、未知の存在であるような演出がなされていました。

一番記憶に新しい『スーサイド・スクワッド』のレト版ジョーカーも既に裏社会で名を挙げていることもあって、過去は語られていません。もしかしたら続編でジョーカーVSバットマンが描かれるかもしれないけどね。

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唯一ジョーカーのオリジンが描かれていた映画はティム・バートン版『バットマン』のジョーカーでしょう。もともとマフィアだった男がボスにハメられ、薬品の中に落下。その結果、顔面の皮膚が漂白されてジョーカーに変貌するというストーリーでした。

これは完全にフィクションですし、監督がバートンということもあってファンタジー色が強いんですよね。

ジャック・ニコルソンが演じたジョーカーは後のキャラ設定に大きく影響を与えていると思いますが、今の時代はもっとリアリティあるアメコミ映画が好まれているような気もしますし。

 

そこに現れたのがホアキン・フェニックスのジョーカー。

犯罪だけを目的に動くジョーカーをやって、ギャングスターなジョーカーをやって、もうやることないんじゃないの?と思っていたこの時にやってきた衝撃。

どこか掴めないところを残した人間離れしたモンスターのような描き方ではなく、一歩間違えばこの世に居そうな、いや居るであろう人間として描かれているわけです。

彼は病気の母親を一人で看病し、精神を病んで妄想癖がある。それでも人を笑わせようとピエロのバイトをしながら生計を立てている、ただの男。もちろんスーパーパワーがあるわけではありません。

そんな男、アーサー・フレックがジョーカーに堕ちていくまでのストーリーを2時間使ってガッツリ描くと。これまでのジョーカーとは明らかに違って観客に共感させようという気持ちすら感じる。

さぁ、困ったぞと。今まで遠いところでフィクションの犯罪をしていたジョーカーが、突然自分の街で暴れ始めたようなリアリティが出てきてしまった。こんなに近くまで来られると、そのキャラを好きじゃなくなってしまうとすら感じるワケです。

ここまで来るとほんの少しは持っていたキュートさは皆無であり、サイコパスすら超越し、本当に社会に絶望してイカれてしまったジョーカーがそこにいる。

このジョーカーに対しての批判の気持ちはほぼ1ミリもなくて、むしろ違ったアプローチのジョーカー観れて歓喜しているほど。

俺としては「悪役に悲しい過去がある」って展開があまり好きじゃないんですよね。なんや、ここまで来て悪役に同情させるんかって。過去があったとしても観客に同情させない、それこそジャック・ニコルソンのジョーカーのように「自業自得じゃん」と思えるくらいの悪役が好きなわけで。

そういう意味では今回の『ジョーカー』めっちゃ不安だったんすよ。あのジョーカーを「可哀想な人」という描き方をしてしまうんじゃないかと。

蓋を開けてみれば共感はできないにしろ、アーサーがジョーカーに堕ちた理由は理解できるという絶妙なオリジンを用意してきました。

「可哀想な人」と言うよりは「目覚めた人」って感じでしたよね。自分を肯定した結果がジョーカーだったと。洗脳から覚めたアレックス・デラージが最後に見せた表情が俺の頭の中でジョーカーとリンクするのは、こういった理由があるからなのかもしれません。

とにかく俺はジョーカーのオリジンを事細かに描いたことには賛成ですし、これまでのジョーカーと同じくホアキン版ジョーカーも愛せます。

 

ホアキン・フェニックス

正直言って原作を深く読み込んでない俺からしたら、このジョーカーの描き方が正しいのかどうかわからない。「危険だ」という人もいるだろうし、「これが最高のジョーカー」と言う人もいるでしょう。

ただ、俺が言えるひとつだけ確かなことは、もし次ジョーカーを演じる俳優がいるとしたら、さらにハードルが上がったということ。

本作までに様々な名優がジョーカーを演じてきました。どのジョーカーも比較できないくらい好きなのですが、ホアキン・フェニックスのせいで高かったハードルはさらに上がりましたよw

次のジョーカーは絶対比較されてしまいますからね。誰が演じたとしても、どんな描き方だったとしてもジョーカーを演じるというだけで大きな期待と不安が入り混じることは確実でしょう。

 

本作のために体格まで変えてみせたホアキン。肉体も凄いのですが、このジョーカーの凄いところはノーメイクなのに、まるで化粧でもしているかのような張り付いた表情です。

俺としてはコメディクラブでコメディアンのトークを聴くシーン。あれは自分のジョークを作る研究のために観ているのでしょうが、他の観客たちと笑うポイントが大きく違うんですね。

しーん…としているホールに響き渡るアーサーの笑い声と何かに挑むような表情。「あぁ、これがホアキンのジョーカーなのか」と俺の中でイメージが確立した瞬間でした。

 

そしてラストにあるテレビ番組のシーン。隣に座るロバート・デ・ニーロに自分の正体を告白していくのですが、徐々に狂気を強めていくにつれ、アーサーからジョーカーへと変貌していきます。

実はこの前のシーンに目に見えたジョーカーに切り替わったなってところがあるんですけど、俺はここがジョーカーへチェンジしたシーンだと勝手に思ってるw

前のシーンはジョーカーとして決意を固めたというか、アーサーの中で何かが変わった瞬間。テレビ番組のシーンは世間にジョーカーが認知された瞬間で、どっちかと言えばここの方が誕生の瞬間だと思うんだよね。

 

それと、時折見せる独特なピエロダンス(俺が勝手にそう呼んでいる)はジャック・ニコルソン版ジョーカーのような感じかと思えば、より気持ち悪い(誉め言葉です)明らかにハッピーではない狂気を含んでいる。

パンツ一丁で踊るシーンとかね。ジョーカーじゃなかったらたぶんドン引きだと思うんだ。でもここまでストーリーとして語られてきたジョーカー、そしてホアキン・フェニックスが身を削るような演技をしているから美しさすら感じるんだよなぁ。

このジョーカーに関しては鑑賞後すぐということもあって、まだフワフワしている状態。もう少し時間が経ったら印象がガラっと変わるかもしれない。そしてホアキンジョーカーを今すぐ誰かと語りたい。

映画が持つ力

この映画に関しては魔力があると思えるのです。この表現があっているか間違っているかわからないけど。

例えばですね。この映画に影響を与えているであろう『タクシードライバー』。アーサーやソフィーがやる拳銃のパントマイムはたぶんこの映画のオマージュ。

で、『タクシードライバー』も同様に魔力のある映画だと思っていて、映画が公開された当時も事件が起こりました。

『タクシードライバー』を観たジョン・ヒンクリーという男が出演していたジョディ・フォスターをストーカーし、当時のアメリカ大統領暗殺未遂事件を起こします。

『ジョーカー』が犯罪を誘発するという気持ちはまったくないし、あったとしても映画に罪はないと思うけども、『ジョーカー』に言葉にはしにくい力があるのは事実だと思う。

その他にも『時計じかけのオレンジ』とか『ファイトクラブ』とか『ナチュラル・ボーン・キラーズ』とか。ついつい引き込まれてしまうような力があるんですよね。

精神を削られるような気持ちにさせられても、映画が始まってしまったら画面から目を離すことはできない。

そこから逃げ出したいくらい痛く、辛いのに、ずっと観ていたくなる変な感情。

一緒に映画を観ていた50人あまりの観客たちも同じ感情を持ったのか、静けさの中で皆が映画にのめり込んでいるのが判るんですよね。

映画の力ってスゲェなと改めて思う次第でございました。

 

不安なのはこの映画が世界のどこかで批判を受けて、どっかの国では公開中止になりましたとかってニュースを観ること。

ないとは思うけど、すでに『ダークナイト ライジング』の事件と絡めて色々言われている状況だし、様々なところに気を使わなければいけない時代だから不安なのよね。

こういう息苦しさの基でジョーカー生まれたような気がするのだが…。

まとめ

ここまで来ると好みになりますよね。俺はもう一度観たいって気持ちはほとんどなくて、1回限りの映画体験だったのかなとか思ったりして。

このジョーカーがいつかバットマンと戦う日が来るのだろうか。そもそもこのゴッサムシティはバットマンを生むことが出来るのか。

うーん、なかなか戦っている姿が想像できないけどw一応冒頭で胸に付けている花から液体が出ているシーンがあったから、ガスとかで戦うんかな。

このままいくと続編はなさそうなんですけどね。これ以上語ったらいつも通りのアメコミ映画になりそうだし。

それとやっぱりデニーロは良いよなぁと。『キング・オブ・コメディ』で自身が演じた役とは正反対のところを演じているし、予期せずジョーカーを作った一人になったワケだし。

あのシーンでスカッとしてしまったのは私だけだろうか。これスカッとしたらマズいとかないよね?

以上!!!

 


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