
ネットを観ていると、「今回のピノキオめっちゃ怖くね?」って意見をよく見かけるのですが、
そもそもピノキオはディズニー版すら普通に怖くなかった?
と思うわけですよ!
子どもの頃はクジラが怖くて観られなかったし、ロバになっちゃうところとか妙に記憶に残っているんだよね。
大人になった今観ても、ピノキオは普通にタバコ(葉巻?)吸ってたりするんで、地上波で放送するのが難しいくらいの映画なんじゃないかと。
ってことで、タイトル通りほんとうのピノッキオを見せてくれるのか?
そもそも何を持って“ほんとうの”と言ってるのか謎ではありますけれども、アカデミー賞にノミネートされるほど、評価された作品なんですよね。
ディズニーオタクの僕ですらイマイチ乗り切れていないピノッキオの物語を、どのように変えてくれるのか?
そんなことに期待しながら、劇場に足を運びました!
この記事は『ほんとうのピノッキオ』のネタバレを含んでいます
まだ作品を観ていない方はご注意ください!
ほんとうのピノッキオ
あらすじ
貧しい木工職人のジェペット爺さんが丸太から作った人形が、命を吹き込まれたようにしゃべり始める。ピノッキオと名付けられた、そのやんちゃな人形は、ジェペットのもとを飛び出し、導かれるように森の奥深くへと分け入っていく。「人間になりたい」と願うピノッキオは、道中で出会ったターコイズブルーの髪を持つ心優しい妖精の言いつけも、おしゃべりコオロギの忠告にも耳を貸さず、ひたすら命がけの冒険を続けるが……。
キャスト
ジェペット役を演じたのは、『ライフ・イズ・ビューティフル』のロベルト・ベニーニ。
実は彼も2002年公開の映画『ピノッキオ』でピノッキオ役を演じておりまして、今回はまさかのジェペットじいさん役でキャスティングされました。
あれだな。新『ゲゲゲの鬼太郎』で野沢雅子さんが目玉おやじ演じてるみたいなもんだな。
今作のピノッキオ役は子役のフェデリコ・エラピ。ほぼ全編にわたってピノッキオメイクを施しているのですが、メイクの質感だけでなくて、軋むような動きも素晴らしくて。
その他には、ジジ・プロイエッティ、ロッコ・パパレオ、マリーヌ・ヴァクトなどが出演しています。
評価
僭越ながら『ほんとうのピノッキオ』の満足度を★10段階であらわすと・・・
★6
「結局どこが“ほんとう”なのかは分からなかったな」
「原作に忠実だよ」ってことなのか、他のピノキオ映画と差別化させたかったのか。
邦題が迷走していることは今に始まったことではないので、「なにが“ほんとう”なんだよ!」って意見は作品にぶつけるべきではないのですが。
そもそもストーリーとしてピノキオの物語がそこまで好みではありません。
ディズニー版でも多くの人が感じるでしょうが、ピノッキオの身勝手さというか、ジェペットじいさんの好意を踏みにじるような性格が昔から苦手でした。
今作もその設定は踏襲しており、ストーリー的には好きではないのですが、特筆すべきはその映像美!
クリーチャーや住民たちのビジュアル、そしてイタリアの田園風景。これだけでも観る価値ありと言えるのような映画でした!
ここから先も映画のネタバレが含まれています
まだご覧になっていない方はご注意を!
感想(ネタバレ)
ピノッキオの物語
不気味さはもちろんあるのですが、それ以上に美しいと感じる作品でした。
怖さだけで言えば、ディズニー版のほうがよっぽど怖い。
宣伝にあるようなダークファンタジーと聞くと、ギレルモ・デル・トロ作品(『パンズ・ラビリンス』や『シェイプ・オブ・ウォーター』など)を思い起こしますが、今作にダークさはあまり感じず。
むしろ笑えるシーンもしっかりあって、今風に言うと「エモい」シーンもあるので、結構万人受けしそうな作品だと思うんだけど。
個人的に好きだったのは、妖精との場面です。
廃城のような場所で妖精とカタツムリと夢のようなひと時を過ごし、敵ばかりいた人間社会から隔離された安心感。そこでは、カタツムリのヌメヌメを利用したネタがあったり、コミカルなシーンも多くありました。
けれど、そこから再び外に出され、人間たちの悪意に襲われていくピノッキオ。安心感を与えてからの、危険だらけの世界に放り出される感覚が観客の中にも再現されて、絶妙な不安感を煽るシーンでした。
とはいっても、童話が原作なんでピノッキオを襲う悪意もそれなりにデフォルメされています。
「このデフォルメされた感じが今作の醍醐味かも」
当然ロバに変身する迷シーンもありますし、最後には巨大なクジラだかサメだか分からないクリーチャーに食われます。
子どもの頃はロバのシーンは「たくさん遊んだんだから働きなさい!」って意味かと思っていたけれど、やっぱり理不尽よね。そもそもピノッキオが誘惑に弱すぎるのがいけない。
「社会を知らない子ども」を表現しているのでしょうが、今の子どもたちはちゃんとしているからなぁ。悲しいかな、ピノッキオの物語もイマイチ通用しない世の中になってきたんでしょう。
そう思うとジェペットじいさんもピノッキオを大事にしているというよりは、「良い父親になりたい」という自分本位な人間に見えてきてしまう。
結果的には二人とも幸せになれるけど、「子供ができた!」よりも「父親になったんだぞ!!」と喜んだことにちょっと意外な感じがしました。
画になる美しさ
今作の魅力の大部分は美しすぎる映像にあると思ってます!
しかも、現代の映画なのにCGをほとんど使っていないようで。アクション映画とかだと「CG使わずに撮りました!」って作品結構ありますが、ファンタジーで手間のかかる手仕事だけで作っていくのは珍しいかもしれない。
言うなれば『オズの魔法使』の世界観。
普通の映画ならCGにされそうなキャラクターでも、全部人間が特殊メイクで演じているから、往年のハリウッド映画のような雰囲気を残した作品です。
不気味といえる点も、全部人間が演じているってところなんじゃないかな。僕も『オズの魔法使』でブリキの木こりを観たとき怖かったし、たぶんそんな感覚。
特に映画終盤に出てきたマグロは「シーマンかよ!!」ってツッコみたくなるくらいの人面魚で、シーンの暗さもあってか不気味さが際立っていましたねー。
なんなら、ピノッキオそのものも不気味といえるほどリアルな“人形メイク”で、動き出したときは本気で怖かった(笑)
木片から心臓の鼓動が聴こえるって演出も良いよね。真っ二つに巻きわりしていたらどうなるんだろ?
「どこを切り取っても絵になる映画だね」
ピノッキオの住んでいる街とか、ロバに変身しちゃう子供の国とか、どこで撮影したんでしょう?それとネコとキツネに騙されて、湖まで水を汲みに行ったシーンの背景も素敵でしたね。
僕自身、旅行が好きなんでいつか行ってみたいと思わずにはいられない!
でも、イタリアか…。イタリアは遠いなぁ。コロナが終息しなきゃいけそうもないなぁ。
最後に
ピノッキオを題材にした映画は、今後も続きます。
なんせギレルモ・デル・トロの次回作が『ピノッキオ』ですからね。それとトム・ハンクスがゼペットを演じるらしいディズニー実写版もある。
この映画は2019年公開だけど、日本だと公開が連続しそうですよね。
個人的には「星に願いを」や「ハイ・ディドゥル・ディー・ディー」など名曲が流れるだろう、ディズニー版『ピノキオ』が楽しみで仕方がない。
ただ、ディズニー実写版は毎回期待以下に終わることが多いんで、心配なところ。
以上!!!
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