どーも、スルメ(@movie_surume)です。
Netflixで7月11日から配信されている映画
『幸福都市』
映画鑑賞前にネットで『幸福都市』について、いろいろ調べていたんですが、まぁー情報がない!
台湾の映画で、トロント映画祭で上映されたってことくらいかな。
あ、あと全編35㎜フィルムで撮影されているらしいですよ。
今はデジタル撮影がほとんどで、フィルムにこだわる監督が少なくなっているのに、敢えて35㎜で撮る。
なんか惹かれるものがあるんですよねぇ…。
私自身、かなり多くの国を旅してきたけど、もう一度行きたい国ランキングでいつも上位にいるのが台湾。
人は良くて、食べ物もうまくて、親日で…。これほど日本人にとって居心地の良い国はあまりないかと。
近未来が舞台なんだけど、いつかの台北の風景を思い出しながら、鑑賞してきました!
『幸福都市』
あらすじ
高度な監視技術が発達した近未来から、過去へ。逆行する時間の中で語られるのは、許しがたい罪をおかした者たちへの復しゅうに燃える、ひとりの男の物語。
監督
本作の監督を務めたのはホー・ウィディン。
35㎜フィルムでの撮影にこだわり、これまで作ってきた映画もフィルム撮影だったとか。
彼の映画は本作が初めてだったので、他の作品と比べられないのが悔しい…!
そもそも彼の映画は日本に上陸しているでしょうか??うーん、これまで観たことなかったなぁ…。
キャスト
主演を務めたのはジャック・カオ、そして彼の若い頃を演じるリー・ホンチー。
二人とも過去に闇を抱える刑事ジャンを演じているのですが、若い頃よりも老年期の方が心の闇が深まっているような…。
この辺りの演じ分けと演出が本作の魅力と言ってもいいでしょう!
そしてもう一人。
若いジャンと行きずりの恋に落ちる外国人女性を演じたルイーズ・グランベールの美しさよ!
役もいいし、ジャンと同じく私の心にも張り付くような印象を与えてくれました。
評価
僭越ながら『幸福都市』の満足度を★10段階で表すと・・・
★5
あぁ、この空気感。好き。
作品全体に漂う閉鎖感。
そして、少しノスタルジックな雰囲気も出せているんですよね。
これは35㎜フィルムだからこそ出ているのか、主人公ジャンの人生がそうさせているのか。
フィルムノワールにも通じるところがある作品でした!
本作はジャンという男の一生を描いた3部作構成になってまして、それが時系列とは逆に進行していきます。
最初は老年期から始まり、次に青年期、そして少年期と映画が進むにつれてジャンという男がどのような人生を歩んできたかが垣間見えるのです。
結末が冒頭に持ってこられているため、突然の展開や行動に戸惑うのですが、すべてには理由がある。
その演出のおかげで彼の人生を追体験しているような感覚が走り、必要以上に説明をしないのが余計にその感覚を後押ししてくれました。
ただ、第一部で描かれた若干のSF要素は不要なんじゃないかと。
時代設定を近未来にする必要性を感じないし、「監視社会」とかよくわからん設定が増えることで、さらに頭をゴチャゴチャさせてしまっているような…。
ただでさえ考えることが多い映画だから、無駄に思える要素は削ってしまった方が飲み込みやすかったかなぁ。
これより先は『幸福都市』のネタバレを含みます!!
まだご覧になっていない方はご注意を!
感想
ここはどこだ?
私の行った台湾は煌びやかな街並みと、美味しい屋台ご飯でめちゃくちゃ良い印象なんですね。
しかし、本作で描かれている台湾及び台北は私の持っていた印象よりもずっと閉鎖的でくらーい場所でした。
ここどこだよ!!って言いたくなるくらいのギャップが凄い(笑)
私は観光客として行っていたから、余計にキラキラしたイメージがあったのかもしれませんが…。
そう思うと台湾って国として結構複雑でして、中国政府といろいろあったり独立国と認めてもらえなかったりと、日本とは近いようで全然環境が違います。
あんなに親日なのに日本政府って台湾のこと国と認めてないんですよね。
中国はユーラシア大陸にある中華人民共和国で台湾じゃないってことらしい。
まぁ国民同士の関係は良好ですから、旅人でもある私からすると嬉しい限りなんですけど。
でも、最近は香港で大規模デモが起きたりとかしてて、台湾もいつかそうなるんじゃないかと心配になったりもしています。
そんなちょっと特殊な国である台湾に住む人たちの気持ちや心情が、作品に反映されているんじゃないかと思うんですね。
第1部の監視社会になっていた近未来の台北の街も、そういった背景から来ているのかな。
外部から来た外国人女性に惹かれてしまうのも、閉鎖的な台北に唯一ある光のように映るのも印象的でした。
台湾人じゃないし、旅行でしか台湾行ったことないから、住んでいる人たちの心情を私が述べるなんて非常にナンセンスなんですが(笑)
時系列シャッフル
先ほども書いたように、本作は時系列を逆転させてジャンの人生を体験させる手法を取っています。
時系列をシャッフルさせる手法はこれまでもあってし、別にそこ自体に真新しさを感じるってことはないけど、映画冒頭の引き込み方は素直にうまい。
画面に向かって落下してくる男と、そこを何気なく通り過ぎるジャン。
その後ジャンの意味不明な行動に疑問を抱かせ、2部から始まるメインストーリーへ持っていく。
映画冒頭の15分だけで結末を迎えてしまっているけど、それはジャン結末であって『幸福都市』という映画の結末ではありません。
ジャンの人生の結末こそがストーリーの始まりなんですね。
時系列を逆転した映画として、まず最初に浮かぶのがクリストファー・ノーランの『メメント』。
あの映画は記憶を10分間しか保てない男が主人公で、ラストから始まり冒頭へと戻っていく手法をとっていました。
ストーリーもテイストも本作とはずいぶん違うし、ラストから始まるってだけしか共通点無いんだけどね(笑)
『メメント』は時系列逆転という手法ありきのストーリーであって「一人の男の人生を描く」という点を重視した本作とはだいぶ違う気がします。
『幸福都市』はジャンの人生を描くことがメインで、時系列逆転は描き方の一つに過ぎないんです。
時系列シャッフルはありがちだけど、俳優を3人使って人生を描く映画はこれまでなかったんじゃないかな。
[kanren2 postid=”1291,483″]タイトルの意味
ここでひとつタイトルについて考えてみようかと。
本作のタイトルはご存知の通り『幸福都市』。
原題は『Cities Of Last Things』で直訳すると「最後のことの都市」。?意味わかんないですね(笑)
タイトルからすると幸せな街を描いた作品なのかなぁ~って感じなんですが、実際は全然そうじゃなくて。
私はどっちかと言えばディストピア的な意味だと受け取っていて、第一部で描かれていた監視社会に対する皮肉が込められたタイトルだと思うんですね。
ジャンの人生は観客の視点から見ると決して幸福とは言えないし、悲劇的なことばかり。
母は目の前で殺され、上司や同僚には裏切られて妻は浮気性。『幸福都市』ってタイトルがアンバランスくらい彼の人生は悲劇です。
悲劇的な人生を生きてきたジャンが求めていたもの、それこそがディストピアではなく本当の「幸福都市」だったのかもしれません。
その本当の「幸福都市」を思わせるのがラストシーン。
幼い頃のジャンと一緒にブランコに乗って遊ぶ若き日の母。これこそ「幸福都市」なんじゃないかと。
ディストピア的な監視社会ではなく、母と子が幸せそうに遊んでいる街が「幸福都市」なんだと言われているような気がします。
まとめ
久しぶりの台湾映画だったんですけども、非常に新しい切り口から語られる物語でしたね。
序盤の謎SF要素と全体的なテンポの悪さが気になりましたが、なぜか台湾ノワールの世界に浸っていたくなるんです。
それにしてもヒロインのルイーズ・グランベールが可愛かった!
他の映画で観たことないけどモデルとかなんですかね?周りは全員アジア人だから余計に目立っていた気がします。
以上!!!