映画『グッバイ、ドン・グリーズ!』評価と感想(ネタバレ) 少年たちの小さな大冒険が幕を開ける!

スルメ
どーも、スルメです

今回はいしづかあつこ監督の最新作『グッバイ、ドン・グリーズ!』をレビューしていきます。

いしづか監督といえば、やっぱり『宇宙よりも遠い場所』ですよね~

僕が自称・旅人なのと、ジュブナイルものが大好きなんで、好みにぶっ刺さるアニメでした。

今回の映画も『グーニーズ』のようなジュブナイルの香りがプンプンするので、期待値が上がってたんですよね。しかも、男子高校生たちの熱き青春と来たもんだ。

こりゃあ面白くなるぞってことで、さっそく鑑賞して参りました!

グッバイ、ドン・グリーズ!

あらすじ

東京から少し離れた田舎町に暮らす少年・ロウマ。
周囲と上手く馴染むことができないロウマは、同じように浮いた存在であったトトと二人だけのチーム”ドン・グリーズ”を結成する。
その関係はトトが東京の高校に進学して、離れ離れになっても変わらないはずだった。

「ねえ、世界を見下ろしてみたいと思わない?」

高校1年生の夏休み。それは新たに”ドン・グリーズ”に加わったドロップの何気ない一言から始まった。
ドロップの言葉にのせられた結果、山火事の犯人に仕立て上げられてしまったロウマたちは、無実の証拠を求めて、空の彼方へと消えていったドローンを探しに行く羽目に。
ひと夏の小さな冒険は、やがて少年たちの“LIFE”生き方を一変させる大冒険へと発展していく。

『グッバイ、ドン・グリーズ!』公式サイト

作品解説

今作は『宇宙よりも遠い場所(以下よりもい)』や『ノーゲーム・ノーライフ』で監督を務めた、いしづかあつこ監督によるオリジナルアニメです。

キャラクターデザインが吉松孝博氏、アニメ制作がマッドハウスと、『よりもい』のスタッフが再集結した作品となっています。

 

声優陣を紹介していくと、

主人公・ロウマの声を『鬼滅の刃』で炭治郎を演じた花江夏樹さん。相棒のトトを鬼滅でいえば錆兎を演じた、梶裕貴さんが担当しています。

また、キーマンとなるドロップ役には村瀬歩さん、ロウマ憧れの女の子・チボリ役に花澤香菜さんが起用されるなど、豪華声優陣が集結。

ゲスト声優としてましては、指原莉乃さんや田村淳さんが出演しております!

感想

スルメ的評価

ストーリー★★★☆☆ 3/5
キャスト★★★★☆ 4/5
キャラクター★★★★☆ 4/5
音楽★☆☆☆☆ 1/5

総合評価 ★6/10

 

「想像以上に壮大なストーリーだったな」


南極に行くわけでもなく、ただ近所の山を探検する映画だったのですが、ストーリーはかなり壮大に。

ほとんど自然の中かつ、3人だけにフォーカスすることで、夢とも現実とも取れない不思議な世界観が終始展開していました。

僕自身、学生時代は山岳部で結構な数の山や森を踏破してきたので、共感できる部分も多々あったり。

とはいえ、せっかく男子高校生をメインにするなら、もう少し馬鹿げた要素を入れてほしかったです。なんかあまりにも綺麗に描きすぎていて、「登場人物みんな聖人か!?」と思うくらい、大人すぎる。

『スタンドバイミー』がくだらない話で盛り上がっていたように、年相応のバカバカしさも入れ込んでほしかったところ。

※以下、ガッツリネタバレを含みます

逃避行であり冒険譚でもある

ロウマ、トト、ドロップの3人組は、墜落したドローンを探すため、人里離れた山奥へと出かけます。山火事の犯人だと疑われた3人はドローンに保存されている「証拠映像」が必要でした。

でも、正直なところ、旅の目的なんてどうだっていいんですね。『スタンドバイミー』で考えると、ドローンは死体に相当するわけですが、重要なことは目的じゃない。

彼らはドローン探しを口実に、望まない現実から逃げようと考えていました。

トトが特にそうで、彼はスマホを置いて、塾の予定すら捨てて、旅に出ているわけですよ。ロウマも周囲にバカにされている現実を忘れ、仲間たちと過ごすために旅に出ていると思うんです。

唯一ドロップだけが冒険の目的をキチンと理解し、実践しようとしているのですが、彼もまた「旅を終わらせたくない」という思いがどこかにあったような気がします。

つまり、今作は少年たちの冒険と逃避行を同時に描いている作品であると。

「思ったより複雑な内容になってきたぞ」

高校生って中途半端に大人な時期だと思う。

大学生になれば自分の意見を通したり、嫌なことから逃げたり、それなりに大人になるけど、高校生はまだ親の影響力が強いんですよね。だから、不満があっても実行できる自由がないし、その手段も知らないことが多い。

そんな高校生ならではの行き場のない反抗心とか、現実逃避への憧れとか、色んな感情が織り交ざっての旅になっているわけです。

で、旅の力って絶大で、修学旅行で好きな人の名前をついつい話しちゃうような力があります。劇中では自分の内に秘めていた感情をぶつけ合うシーンがありましたが、まさにそれ。

『スタンドバイミー』でも同じようなシーンあったな~とか思いつつ、哲学的な要素を含んだジュブナイルものでした。

あと、個人的に感動したのは、最後の「なんだ、すぐそこじゃんか」というセリフ。

これはチボリがアイルランドからニューヨークに留学した話を聞いて、「世界地図の端から端じゃん!」となった後に放たれたセリフでした。確かに地図上では離れて見えるけど、地球はまるいんで「地図の端から端=すぐそこ」なんですよね。

スゴイ簡単なことだけど、世の中には「海外=遠い」と考えている人が意外と多くて、その距離を「すぐそこ」と表現できる人はなかなかいない。あの田舎町にいて、地上から街を見ていたロウマだったら絶対に出てこなかったセリフだと思います。

少年の成長が一言に集約された、めちゃくちゃセンスのあるセリフでした。

残念だったところ

まず、劇中歌が合わない。

ロウマたちってどちらかといえば「ダサい」高校生たちで、そのダサさがまた映画にいい影響をもたらしているんです。けれども、ポップでナイスガイな英語の曲が使われるから、雰囲気に合いません。

これは僕にとって結構致命的で、見せ場であろうシーンも謎の英語の曲がかかって、とたんにテンションが落ちる。きらきら星ですら英語でしたから。

「なるほど。英語の曲にこだわってるんだな」と思っていたら、ラストはバリバリ日本語の曲が流れて苦笑い。不勉強ながらどの曲も知りませんでしたが、劇中歌に関してはそこまで熱い演出を使わなくても良かったかなと。

 

あとは、主人公たちが妙に大人びている点。

先ほど「高校生は中途半端に大人だから……」と書きましたが、彼らは大人すぎる。

『よりもい』は女子高生たちでしたが、今回は男子高校生なんだから、もっと下品に描いてもよかったような。むしろそこが見たかったのに。

電話はどこからかかってきたのか

さて、最後に少しではありますが、ラストの電話ボックスシーンに関する個人的な考察を。

ラスト、黄金の滝を発見し、公衆電話の着信音が鳴り響きます。どうやらこの電話ボックスは現実に存在しているらしく、しかも電話番号まで決まっている様子。それもチボリがアイルランドで住んでいる家の番号とほとんど同じという偶然でした。

で、ドロップが訪れた際にはロウマたち電話の主でしたが、はたしてロウマたちが出た電話は誰がかけたものだったのでしょうか?

 

限りある登場人物の中で、一番可能性があるのはチボリでしょう。アイルランドの実家の番号と一緒なので、ニューヨークからかけた電話がロウマたちのもとに届いたと。

ちなみに英語でも「ireland」と「iceland」なので、間違えても全然おかしくない。「実家の番号間違えるわけないだろ」という人もいるかもですが、そもそもアイルランドにいるときは電話番号の頭につく国番号は使いませんし。

でも、もしチボリと繋がったとしても、そこから発展する物語がなさそうなのが難点。それなら誰からかかってきたか分からないままの方が、綺麗に終われる気がする。

時間を超えたとか、ドロップからとか、そんな展開がなくて本当に良かった。

 

正直「誰からかかってきたのか」はそんなに重要じゃなくて、ドロップに導かれて電話ボックスまで行ったことが重要だったりします。

映画全編をとおしてファンタジーとリアルのはざまを行ったり来たりしてましたが、まさに今作にふさわしいラストだったと思う。

最後に

『よりもい』をもう一度観てみようかな。

当初は近所を冒険する映画だと思って観ていたけど、次第に壮大になっていって『よりもい』にも負けないくらい、ドラマ性に富んだ作品になっていました!

不満は0ではないし、比較対象になるだろう『スタンドバイミー』が完成しすぎていることもあって、このジャンルで一番はとれなそうですが。

『スタンドバイミー』でゴーディがシカに出会うってシーンがあったと思うんですが、旅や登山をしていると「現実に起きたけど、夢みたいなイベント」がマジであるんですよね。

その点、今作は熊だったり滝だったり、不思議な現象が多発していて、旅映画としてもかなりの完成度だったと思います。

まぁ、そんな感じで。

 

以上。


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