映画「総理の夫」評価と感想(ネタバレ) 応援したくなる女性リーダーを描いてほしかった

今月末に自民党総裁選が迫っている中、かなりタイムリーな映画が公開されました!

僕は『総理の夫』を試写で観たのですが、主演の中谷美紀さんが登壇されまして、

「現実の日本に女性総理が誕生するのはかなり先」

という旨のお話をされていたのが印象に残っております。

しかし、実際のところ今回の自民党総裁選は候補者の半分が女性です。自民党の歴史の中では今回が初だそうで。

結果はどうなるか分からないけれども、映画の内容に一歩近づいたのは事実でしょう!

そして、映画の中ですでに誕生している女性総理にも期待していたのですが…。

 

この記事は映画の一部ネタバレを含んでおります

 

総理の夫

https://www.youtube.com/watch?v=9ZrmjWBrFZA

作品概要

日本に初の女性総理が誕生した。それと同時に、日本初のファーストジェントルマン(総理の夫)も誕生した。

今作では女性総理の苦難をストーリーに盛り込むと同時に、総理の夫の多忙な日常をコメディタッチで描いていく。

 

主演を務めたのは、田中圭中谷美紀のふたり。

実際にはタイトル通り「総理の夫」メインのストーリーなので、田中圭が主演かな。

共演は貫地谷しほり、工藤阿須加、岸部一徳などなど。

評価

 

★3/10

 

政治ドラマではなくコメディ

「女性総理」と聞いて、すぐに思い浮かぶようなことは大体やっている印象です。

かといって濃厚な映画に仕上がっていることもなく、引きこむ力も特に感じないので、ダイジェストっぽさが否めません。

振り回される男を描いたコメディ映画なので、相手が社長でもCEOでも魔女でも、面白い部分はあまり変わらないんじゃないかと。

 

そして政治の部分ですが、とにかくシンプルすぎて、現実味はない。

党内の派閥とか国民からの反応とか、もっと現実的なところを観たかったんですよね。

『シン・ゴジラ』のほうが、まだリアリティーあったような気さえする。

さすがにゴジラが襲来するよりも、女性総理が誕生する方が早いと思います。

 

引き続き映画の一部ネタバレが含まれます

感想

女性総理に中谷美紀、その夫に田中圭。

このキャスティングは本当に素晴らしいと思うし、映画を観る前から二人の夫婦関係が目に浮かぶようなベストカップルです。

田中圭さんの初々しいリアクションは映画をけん引しているし、終盤で見せる男気溢れる演技も好き。正直、中谷美紀さん演じる凛子よりもインパクトあったと思うんですよ。

映画のタイトルが『総理の夫』だから、当然といえば当然だけども、僕は日和のキャラクターとそれによって巻き起こる展開は好きでした。

 

まず、凛子の有能さがイマイチわからない。

映画では増税を推し進めるにも関わらず、国民から人気の高い総理でした。でも、凛子の人気って政治家としての人気よりも、アイドル的な人気なんです。

キラキラな名前付きの「デコうちわ」を持った追っかけがいたり、若者たちから「そうりん」とあだ名で呼ばれていたりとか。

たしかに日本人の「推し」文化を反映させた展開ですが、私としては「もっとないのかい?」と。増税なんて国民から反対される代表的な政策なのに、みんな笑顔。総理に対する批判の声は、ほとんど登場しなかったんじゃないかな。

 

唯一まっとうに批判の声を上げたのが、日和の兄である多和。

「そんな税金を上げられたら、日本経済に貢献している企業はみんな外国に行くぞ!」

というような発言をしておりました。

たしかに凛子のやっていることって社会保障を充実させる「庶民の味方」ではあるけれど、上流階級の人たちからは批判されそうな内容です。映画としてはシンプルでわかりやすいのですが、下手したら真っ赤になりそうなぐらいで。

多和の意見も当然だし、それに対してどう対処するのか?と思っていたら、「でも、凛子の日本製品のアピールは画期的で…」の一言で終わりました。

正論を言っていた多和はいつのまにか空気読めないキャラにされる始末。政治家としての読み合いも苦手だという発言もありましたし、本当に凛子は総理をやっていけているのでしょうか?

そもそも政治がテーマのひとつでもあるはずなのに、登場する政治家が数人しかいない。なんなら鳥類研究所のメンバーの方が多い気がします。

あと、一番気になったのが、ラストの記者会見の場面。ニュースでよく見るセットが組まれているのですが、凛子が日本国旗に一礼せず、堂々とスピーチを始めるという違和感ありまくりのシーンでした。

フィクションですから、政治家として何か思想があるならば問題ありません。けれども、これだけ「そうりん」をアゲといて、「一礼を省くってことはないでしょ!」と思うんです。細かいことだけど、些細な部分がおろそかになっていると、総理も映画も印象がガクンと下がります。

 

あとは凛子が妊娠した際に、「女性リーダーの妊娠出産は世界ではめずらしいことじゃない」とのセリフがありました。しかし、私個人の意見としては「まだめずらしいこと」だと思っております。

2年くらい前にニュージーランドのトップが産休を取っていましたが、その時点では「首相として世界初!」というような報道がされていたはず。国のトップが女性という話はよく聞くけれども、出産となるとあまり聞いたことがありません。私が無知なのか、やっぱり世界でもめずらしいのか……

 

私としては性別や年齢よりも、本当に有能で、日本のことを第一に考えてくれる人が総理になってほしいと願っております。

残念ながら一般国民は総裁選を見守ることしかできないのですが。

 

Fin


⇒⇒レビュー記事一覧

「007 ノー・タイム・トゥー・ダイ」評価と感想(ネタバレ) 気持ちいいほどの完結編ではあるが・・・

映画「レミニセンス」評価と感想(ネタバレ) 想像以上にノワールしていたSF映画

amazon実写映画「シンデレラ」評価と感想(ネタバレ) ガラスの靴からは脱却できず