どーも、スルメです。
いつも知り尽くした天井を眺め、今とは異なる可能性に思いをはせています。スルメです。
先ほど『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』観てきました。
アカデミー賞最有力候補ということで、兼ねてから注目してた作品です。映画好きの皆様も、並々ならぬ期待感を抱いていたのではないでしょうか。
映画の中身を語る前に、まずはこれだけ言いたい。
日本だけ公開遅くね?
本国アメリカだと2022年の3月25日の公開ですよ。劇場公開をとおり越して、もうBlu-rayとか出ちゃったりしてるんですよ。海外にツタヤがあったら、たぶん新作コーナーにも並んでないわけですよ。
さすがに遅すぎないかと。海外で評価されなかったら、平気で配信スルーとかにしそうな勢いでゾッとします。
でもね、映画が最高に面白かったからOKです。
※この記事は『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』のネタバレが含まれます
エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス
経営するコインランドリーの税金問題、父親の介護に反抗期の娘、優しいだけで頼りにならない夫と、
盛りだくさんのトラブルを抱えたエヴリン。そんな中、夫に乗り移った“別の宇宙の夫”から、
「全宇宙にカオスをもたらす強大な悪を倒せるのは君だけだ」と世界の命運を託される。
まさかと驚くエヴリンだが、悪の手先に襲われマルチバースにジャンプ!
カンフーの達人の“別の宇宙のエヴリン”の力を得て、闘いに挑むのだが、
なんと、巨悪の正体は娘のジョイだった…!公式サイトより抜粋
2023年におこなわれるアカデミー賞で、最多ノミネートを受けている作品です。
一応、作品賞の最有力候補で、たぶん獲ります。ほかにも演技部門をはじめ監督、脚本、編集、その他もろもろ。要するに、今年(海外なら去年だけど)もっとも期待されている映画です。
評価
僭越ながら『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』の満足度を★10段階であらわすと……
★7
「この映画がオスカーってヤバくね?」
はい、想像の10倍くらいカオスな映画でした。
こんな映画がオスカー受賞したら、本当にヤバいです。もちろん、いい意味で。
でも、「知る人ぞ知る」映画だったらもっと好きになってました。「オスカー最有力!」とか言われてますけどね。誰もが評価する映画じゃない。嫌いな人はとことん嫌いで、好きな人は泣くほど好き。そんな映画なんですよ。
だから、ここまだ大々的に宣伝され、評価され、ヒットしているのは違和感があります。
トリップ感のあるドラッキーな映画なのは間違いない。
ネタバレ感想
マルチバースがマッドネス!
この映画はコロコロコミックです。大人が本気で下品なギャグをやって、荒唐無稽なストーリーが展開して、小学生男子が大喜びするアレです。
けど、そのコロコロコミックを大人たちが全力でやって、大人が全力で喜んでます。この映画もぶっ飛んでるけど、この世界観を面白がる世界もぶっ飛んでると思うんですよ。疲れてんのかな、世界。
特にマルチバースをジャンプするときに、「バカバカしいこと」をしなくてはならないという謎の縛り。ディルド感の強いトロフィーを肛門に突き刺したり、突如リップクリームを食べ始めたり。これを本気でやろうとしたダニエルズが一番ぶっ飛んでます。
頭の中で思いついても、実現しようなんて思わないですよ。ベーグルにすべてが全宇宙の命運が託されるって、サウスパークでもやらないですよ。
肛門に異物が入ったままカンフーしたら、そりゃ面白いけども。レミーのパロディしたら、そりゃ面白いよ。
けど、もしあなたが肛門カンフーを思いついたとして、やりますか……?本気で……!
せいぜい面白動画としてYoutubeにアップするのが関の山……!じゃないですか。
「実現しちゃうのがスゴイよね」
コロナだったり、戦争だったり、まったく笑えない現実の中で、こんなおバカな映画で笑わせてくれる。それだけで、満足だったりする。
自分の理解が追い付かない、ぶっ飛んだクレイジーな映画が、今の世の中には必要なのね。
もちろん、ここまでの話は、この映画の表面的な部分でしかないのだけど。
実は親子愛の映画だったりする
そんなクレイジーな映画なんだけど、核の部分は意外と素朴な映画だったりする。主人公のエヴリンは確定申告に追われ、娘や親、夫との関係に悩み、もう手がいっぱい。
正直、どこかのマルチバースより、目の前のあなたの方が震えるほど大事件!な状況なんですよ。世界の運命なんて、託されても困るわけですよ。
で、なによりもエヴリンを悩ませているのが、娘との関係性。娘のジョイはゲイで悩めるお年頃なのに、彼女に寄り添ってあげる余裕がエヴリンにはないんです。問題が山積みで、ジョイの気持ちを理解しつつも、心ない言葉をポイって投げちゃうんです。
これだけの問題を抱えたエヴリンという存在が、マルチバースでの戦いをとおして、娘への愛、夫から受けていた愛、その他もろもろを再認識するって流れで、中身は超素朴。
おしりにトロフィー刺してた映画とは思えないんだけど。ちょっと戸惑うんだけど。
そして、主人公のエヴリンは、マルチバースに無数に存在している“エヴリン”の中で、一番ダメなエヴリンなんです。
ほかのエヴリンはカンフーマスターだったり、歌手だったり、シェフだったり、色々な才能を持っているのですが、主人公のエヴリンだけは何も持っていない。彼女が持っているのは、家族の問題と山積みになった領収書だけです。
この設定が非常に巧く作用していて、スゴイ使い古されてそうだけど「君には無限の可能性がある」って話にも着地するわけで。
一見、平凡なエヴリンにも、ハリウッドスターになる世界があるわけです。その気になれば、シェフにだって、カンフーマスターにだってなれるんだと。
僕にもいるだろうか?超絶イケメンで全人類からモテているアメージングな別世界の僕が。いたとしたらぜひともジャンプしたいね。ケツにトロフィーツッコむのは嫌だけどさ。
キャスト
最後にキャストの話。ミシェル・ヨーは出ずっぱりで、ひとりなん役もこなしているのに、よく混乱しないなと。観ている方は混乱して当然ですが、ダニエルズの説明を直接聞いたキャストも多分理解できないでしょ。この内容は。
「次のシーンでは、両手がソーセージになります。で、そのあとは肛門にトロフィー突っこんだ相撲レスラーの能力を持った警備員と戦って、その次はベーグルに吸い込まれそうになる娘を助けます。あ、その前に特殊能力を持ったカーティスさんに愛の告白をしてください。えー……」
うん、文面だけだとわけわからん。僕ならエイプリールフールなんじゃないかと、撮影寸前まで疑います。少なくとも、オスカー級の名作になるなんて、予想できないね。
そんな映画なのに、俳優部門で4人もノミネートを受けるという。
キー・ホイ・クアンなんて、俳優復帰1本目ですからね。誰もが目を見張る演技でしたし、人柄の良さもにじみ出ていましたが、ショート・ラウンドがオスカー候補になる未来なんて誰が想像できたでしょう。なんかいろいろな奇跡が凝縮された映画のような気がしてきた。
忘れちゃいけないのが、ジェイミー・リー・カーティス。あの生々しさは、もはや笑えない。
日本だと市役所の人は優しいけど、警察とか税務課の人とか、独特な冷たさありますからね。悪気があるのか知らんけど、若干見下されるあの感じ。これ、万国共通なんですね。
僕としては一番冷たいのは免許センターの職員ね。「お前人の心落としてきたんか?」って毎度疑問に思うくらい冷たいのは、何故なんでしょう。どこの免許センター行っても、いつ行っても、入り口の人から冷たいからなー。
まとめると、ジェイミー・リー・カーティスの演技がスゴイって話です。最後にはちゃんといい人になるし、免許センターの人々も本当は温かい人なんでしょう。
最後に
もうマルチバースはお腹いっぱい。
いつも言ってるけど、もういいよ。マルチバース。
マルチバースサーガとか言うけどさ。『エブエブ』が出てきた時点で、もうこれ以上は無理よ。キャストの豪華さで誤魔化すしかないよ。
以上