映画『ナイル殺人事件』評価と感想(ネタバレ) 事件のトリックよりも愛を暴いてしまったポアロ

スルメ
どーも、スルメです

今回レビューを書いていくのは、『ナイル殺人事件』です。

この映画、2020年公開予定だったのが、延期に延期でとうとう2022年公開になってしまいました……。

『ノー・タイム・トゥー・ダイ』と並んで、コロナの影響を強く受けてしまった作品のひとつですよね。

実際に今作の監督を務めたケネス・ブラナーの次回作も3月に公開しますし、どちらかといえば『ベルファスト』に隠れてしまうような……。

とはいえ、前作の『オリエント急行殺人事件』を楽しんだ僕としては、今作にもそれなりの期待を寄せておりました。

ナイル殺人事件

あらすじ

エジプトのナイル川をめぐる豪華客船の中で、美しき大富豪の娘リネットが何者かに殺害される事件が発生。容疑者は彼女の結婚を祝うために集まった乗客全員だった。名探偵エルキュール・ポアロは“灰色の脳細胞”を働かせて事件の真相に迫っていくが、この事件がこれまで数々の難事件を解決してきたポアロの人生をも大きく変えることになる。

映画.com より抜粋

作品解説

今作はアガサ・クリスティーのミステリ小説『ナイルに死す』を映画化した作品です。同作は70年代に1度映画化されていまして、ピーター・ユスティノフがポアロを演じておりました。

ケネス・ブラナーがポアロを演じる映画シリーズとしては、2018年の『オリエント急行殺人事件』に次ぐ、2作目になりますね。

ポアロとブーク以外、共通するキャラクターは登場しないので、前作を観ていなくても楽しめそうな気もしますが。

そんな今作の監督を務めたのは、前作から引き続き、ケネス・ブラナー
今作ではポアロも演じており、監督も演技も両方こなす人です。

ケネス・ブラナーは3月公開の『ベルファスト』にて、アカデミー賞ノミネートも受けています。

 

キャストの方を解説していくと、ポアロと同じ船に乗る大富豪・リネット役に、『ワンダーウーマン』のガル・ガドット。その婚約者役に『レベッカ』のアーミー・ハマーがキャスティング。

また、前作に出演したトム・ベイトマンや、『ブラック・パンサー』のレティーシャ・ライトなどが出演しています。

感想

スルメ的評価

ストーリー★★★★☆ 4/5
キャスト★★★☆☆ 3/5
演出★★☆☆☆ 4/5
映像★★☆☆☆ 3/5

総合評価 ★6/10

 

「前作の方が好きではあるが……」


総合的には前作の方が好みなのですが、ポアロの映画化作品としては、一定のクオリティを保った作品だったかなと。

あきらかにCGくさいエジプトの風景には違和感を感じますが、これくらい誇張されていた方が世界観には合っているのでしょう。

キャラクターそれぞれが抱えている「愛」にクローズアップしていくストーリーも含め、十分に楽しめる作品でした。

ただ、最初の殺人が起きるまでが長すぎるのと、「犯人ぽくない人が犯人」という予想の枠を出ないのは残念。

※以下、ガッツリネタバレを含みます

文句なしのキャスティング

ストーリーや演出に関して文句を言う人がいたとしても、キャスティングに対しては全員が納得するのではないでしょうか。

特に大富豪のリネット役にガル・ガドットを起用したことを評価したい!

リネットは誰が見ても美しい女性でありながら、人知れず戦ってきた強い女性です。

彼女は富裕層の妬みや嫉妬と孤独に戦ってきたからこそ、女性ならば誰もが憧れる地位を手にしています。

しかも今作の舞台は1900年代前半なので、それなりに古風というか、時代に合った女優を選ばなくてはなりません。

以上の点を踏まえると、ガル・ガドットしかいないじゃないか!という結論に達するんですよね。

ただオールスターキャストを狙った作品かと思いきや、キャスティングに関してはめちゃくちゃこだわっているようで。

「リネット役はガル・ガドット以外ありえないよね」

その他にも、リネットの夫・サイモン役にはアーミー・ハマーを起用。

これもまたはまり役で、真面目に見えるけれど、どこか怪しい雰囲気を終始漂わせているんですよ。

ラストシーンなんかはアーミー・ハマーの演技のおかげで、説得力抜群でして、「あの違和感がここで活きるのか!」と唸るレベル。有名な話だから結末を知っていたとしても、これには納得するんじゃないでしょうか。

当然、ジャクリーン役のエマ・マッキーも外さず、ロザリー役のレティーシャ・ライトも『ブラック・パンサー』とは違う顔を見せていて、カチャドーリアン役のアリ・ファザルはこれ以上ない胡散臭さを感じさせると。

これほど、はまり役ばかりのキャスティングも珍しい。

癖つよ系容疑者が魅力の映画だから、正直このキャスティングだけで十分評価に値すると思うんだ。

ミステリ映画として

今作は殺人のトリックを暴いていくよりも、それぞれが隠している(時には爆発させている)愛を紐解いていくことに焦点を置いています。

それは異性に対する愛情だったり、母親から息子への愛だったり。

あまりにも歪みきって、殺人にまで発展してしまった愛もあります。どの愛も重すぎるから「愛って怖いよね」って話にもできるし、「それが愛の強さなのさ!」っ話にもできる。

さらにはポアロの過去を少し掘り下げ、愛に対してトラウマにも似た感情を持っていることも判明します。

ポアロを変に神格化せず、より人間的に描くことで、ラストの「犯人はお前だシーン」にもドラマが生まれているんですね。

「謎解きありきの映画じゃないのが特徴だよね」

正直、ポアロよりも前に犯人が推測できてしまう人も多いんじゃないでしょうか。

30年代に作られた物語だからトリックも古典的といえるし、ミステリ小説が好きな人は満足できないかもしれない。

けれども、愛が絡んだ人間ドラマだったり、いい意味で誇張しすぎたロケーションだったり、ミステリ面以外にも楽しめるところがたくさんあった映画でした。

最後に

これは続編作るんですかね?

ポアロであと有名なのは『ABC殺人事件』かな? それ以外ストーリー知らないんだけど。

近年はここまで王道にミステリーをやってくれるシリーズがあまりないから、続けてほしいところではあるが……。

今回は『ベルファスト』の方が絶対目立つだろうし、変な時期に公開しちゃったなーと思わずにはいられない。


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