
『カメラを止めるな!』をフランスでリメイクした、『キャメラを止めるな!』観てきました。
僕はミーハーなもんで、オリジナル版も劇場で鑑賞し騒いでいたわけですが、リメイクとなるとどうでしょう。
良くも悪くも低予算であることが魅力だったし、無名のスタッフ・キャストだったことも真新しさに繋がっていたオリジナル版。
アカデミー賞監督が撮影し、“フランス映画”というだけでブルジョワな印象がするリメイク版。
鑑賞前の段階から、かなりイメージに違いがある本作。果たして、“あの面白さ”が再現されているのか……。
※『キャメラを止めるな!』および『カメラを止めるな!』のネタバレが含まれます
『キャメラを止めるな!』評価
ストーリー | ★★☆☆☆ 2/5 |
キャスト | ★★★☆☆ 4/5 |
演出 | ★★★☆☆ 3/5 |
映像 | ★★☆☆☆ 3/5 |
総合評価 ★ 5/10
「めちゃくちゃ忠実じゃないか」
『カメラを止めるな!』の続編的な部分もあるのですが、構成やネタはほぼそのまま。
断言するけど、本作はオリジナル版ほどのインパクトはない。当時無名の俳優たちを使い、粗さも魅力に繋がっていたオリジナル版とは異なり、非常にフラットな作品に思えました。
ただ、内容はそのまま『カメ止め』なので、決してつまらなくはない。字幕を読むから、笑いがワンテンポ遅れるんで、やっぱりオリジナル版が至高ですかね。
原作が好きで、「原作との違いを比較したい!」という僕みたいな方以外は、オリジナル版を観ることをおすすめします。
以下、詳しい感想です。
『カメラを止めるな!』のネタバレも含みますので、ご注意を。
『キャメラを止めるな!』感想
あらすじ
とある廃墟にて、ゾンビ映画の撮影隊がカメラを回していた。監督のヒグラシ(ロマン・デュリス)は、主演女優・チナツ(マチルダ・ルッツ)を罵倒している。「お前の人生が嘘ばっかりだから、そんな芝居しかできないんだ!」
撮影は中断され、気を静めるため休憩に入るが、チナツたちを本物のゾンビが襲来。次々とゾンビに代わっていく撮影隊メンバーたちの中、一人だけ歓喜している男がいた。ヒグラシである。
彼はロケ地である施設が、旧日本軍の実験場であり、“いわくつき”であることを語りだす。そして本物のゾンビ映画を撮影するため、クルーを巻きこんだ狂気の撮影に及んだのだった。
メイク担当のナツミ(ベレニス・ベジョ)はこの極限状態の中、暴走を始める。ゾンビに噛まれたチナツを追いかけ、殺害しようとしていた。そんな中でもカメラを止めようとしないヒグラシは、ついに逆上したチナツに殺害されてしまう……
「カット!」
1か月前。映画監督のレミー(ロマン・デュリス)は、日本人プロデューサーのマダム・マツダ(竹原芳子)から、「ワンカット、生放送のゾンビ映画」を撮影するよう依頼される。
その狂気の企画を実現するため、レミーの戦いが始まるのだが、集まったキャスト・クルーは曲者ばかりで……。
忠実なリメイクだけど……
本作を監督したのは、『アーティスト』でアカデミー賞監督賞を受賞したミシェル・アザナヴィシウス。主演を『真夜中のピアニスト』のロマン・デュリスが務めるという、ビッグネームが集った座組。もうこの時点で、全然本家とは違うわけですよ。
無名(当時)役者&監督かつ低予算で仕上げた『カメ止め』とは異なり、本作はアカデミー賞監督&フランスのトップ俳優が参加しているという、全然違う性質の映画なわけです。「低予算」と「意図的に低予算ぽく作る」では、まったく異なりますからね。
で、僕が思うに、『カメ止め』の魅力って本作では成しえない部分。当時のキャッチコピーを引用すると、「“無名の新人監督と俳優達が創ったウルトラ娯楽作”」の部分にあると思うんですよ。無名の監督が、無名の俳優たちを撮るから、先入観なく楽しめた部分があったことは確実でしょう。そんな映画のリメイクをアカデミー賞監督が撮るわけですから、僕にとっては最初から先入観だらけなんですよね。
そして、日暮監督の言葉を借りるなら「出すんじゃない……。出るの!」ってこと。『カメ止め』の面白さや魅力は作品から“出てる”ものなのです。
「出したら嘘になるでしょ」というセリフも的を射ていて、敢えてこの作品の雰囲気を再現しようものなら、途端にチープになってしまう。それはまさに、リメイク版の欠点でもあるわけで、コピーすれば本家同様面白くなるってことでもないんですね。
「カメ止めのリメイクは難しいよ」
そうなると、別のところで勝負すべきだったのでしょうが、本作にはそれもない。この点が「オリジナル版を強くおすすめする」理由なのです。
さらに、追加されたネタについてもイマイチ乗り切れません。真珠湾発言でマツダが怒り出すとか、日本語の名前を強要されるとか、人種差別を注意するネタが入るとか、どこで笑っていいのか分からない。これはレミーが言うところの、お国によって変わる感覚の違いなのでしょうか。
本家より良かった部分を上げるとすれば、序盤のゾンビ映画のシーンに本家にはなかった“横移動”のカメラワークが追加されていたこと。ワンカットかつ、低予算で失敗続きの劇中劇なのに、そのこだわりを入れてくるあたりがアザナヴィシウス監督……というよりフランス映画らしい。結局は車いすでダサく移動している種明かしも良いね。
あとは、レミーが取り乱すシーンにて、「俺たちは良いけど、観客をバカにするな」というセリフがありました。確かに、最近の映画は観客の集中力や理解力を信頼してくれていないと感じることがあります。行き過ぎた親切心を見せてくると、「観客バカにされてね?」と思うこともしばしば。そんな中で、新たに追加されたこのセリフは、かなり響きました。
まぁ、そのくらいかな。全体を通して、笑いきれない部分が多い。うんこブリブリしながらも、なぜか上品さを感じてしまうのは、ぼくだけだったかな?
日本からは本家でもプロデューサー役を演じていた、竹原芳子がマダム・マツダ役で参加しています。
竹原さんが出演していることで、時系列的には『カメ止め』と繋がっているように見えて、実は役名が違う(本家では笹原芳子、本作ではマダム・マツダ)ため、別世界なのかな。 でも、「成功した日本版」として『カメ止め』の映像が流れるので、決して繋がっていないわけでもなさそう。
世界観もなんだかよくわからないまま終わったんで、やっぱり先入観のない『カメ止め』が一番でしたわ。
以上。
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