映画『蜜蜂と遠雷』ネタバレ感想 原作を読まない方が良かったかも

如何にも小説っぽいタイトルな『蜜蜂と遠雷』

どこが小説っぽいのかと言うのは自分でもよく分からないのですがw 本来は繋がるところがなさそうな2つのことが遠回しに中身を暗示していそうな空気ですかね。

実はこの映画、普段ほとんど小説は読まない俺が珍しく手に取った原作でして。というのもたまたま家にあったというだけなんだけど。

映画を観る前にアレですが、原作小説を読んで面白かったかと聞かれると「うーん…」と言う感じで。それに上下巻は長すぎ。

そもそもがコンテストのお話なんで、音楽に明るくない俺からしたら曲名を言われても頭に流れるワケはない。むしろ小説読まずに映画からいった方が良かったんじゃないかと思うくらい楽しめずに終わっちゃったんですよね。

ただ、あれだけ音楽に対して事細かに表現された原作をどう映像化するのかは気になるところ。

観るのは音楽に明るい人ばかりじゃないですから。出場者の演奏に若干でもいいから個性を持たせなきゃダメだしなぁ。原作読んだから余計に、かなり難しい実写化になるんじゃないかと思ってるところでございます。

 

※この記事はネタバレを含みます!

蜜蜂と遠雷

あらすじ

ピアノの天才たちが集う芳ヶ江国際ピアノコンクールの予選会に参加する若き4人のピアニストたち。母の死をきっかけにピアノが弾けなくなったかつての天才少女・栄伝亜夜は、7年の時を経て再びコンクールへの出場を決意する。音大出身だが現在は楽器店で働くコンクール年齢制限ギリギリの高島明石は、家族の応援を背に最後の挑戦に臨む。名門ジュリアード音楽院在籍中で完璧な演奏技術と感性を併せ持つマサル・C・レビ=アナトールは、優勝候補として注目されている。そして、パリで行われたオーディションに突如現れた謎の少年・風間塵は、先ごろ亡くなった世界最高峰のピアニストからの「推薦状」を持っており、そのすさまじい演奏で見る者すべてを圧倒していく。熱い戦いの中で互いに刺激しあい、それぞれ葛藤しながらも成長していく4人だったが……。

映画.com

監督

メガホンを取ったのは石川慶監督。本作では脚本も兼任しています。

ポーランドに留学し映画を学んだ後、『愚行録』でデビュー。山田孝之主演の短編映画『点』を監督しています。監督作はどれも観たことがないんで、今回が初めてになりますね。

キャスト

主演は『万引き家族』の松岡茉優。原作は群像劇なんで主人公が誰とかはないような。それでも一応栄伝亜夜がメインなのかな。

松岡茉優は『あまちゃん』に出てたのが遠い昔のようですねw 俺としては『勝手にふるえてろ』のヨシカがめっちゃ好きだったんで、それ以来出演作は大体観ています。最近だと来月公開される『ひとよ』での役が良かった。

演じる栄伝亜夜は母の死をきっかけにピアノをやめてしまったピアニスト。とある出来事があってピアノを再び弾くようになったものの、ちょっと影を抱えているようなキャラですね。

 

もう一人気になるのが広瀬すずにスカウトされて芸能界入りするという、面白い経歴を持つ鈴鹿央士。撮影でエキストラとして来ていた彼を広瀬すずが自らスカウトしたのだとか。

今回も100人以上が参加するオーディションを通過しての役らしく、風間塵のイメージにかなり近いんですよね。本を読む前に映画の予告を観ていたからかもしれんけどw

風間塵はですね。コンテストに出場したことがないながら、天才的なピアノの腕で審査員の度肝を抜くというキャラ。タイトルである『蜜蜂と遠雷』の”蜜蜂”はたぶんこの人のこと。重要キャラですね。

 

その他の出演者は『娼年』の松坂桃李、『レディ・プレイヤー・ワン』の森崎ウィン、『ウルヴァリン サムライ』の福島リラ。それからお笑い芸人のブルゾンちえみも参加しています。

評価

僭越ながら『蜜蜂と遠雷』の満足度を★10段階で表すと・・・

 

★4

 

文章の方がピアノ初心者には向いていたかも

原作もそこまで好きじゃないって書いたんですが、やっぱり映画も…。

確かにあの小説を映像化するのは非常に難しくて、音を様々な言い回しで例えていたのを映画では実際に奏でなきゃいけないですからね。

それが出来ていたのか出来ていなかったのかすら、ピアノ初心者の私には分からない。だって誰が引いても同じ音に聞こえるんだもんw

これなら文章で読んでいた方が音の違いが、少なくとも私よりは音楽に明るいであろう作者の目線を通して語られるので、理解できたかもしれない。

 

そして原作が上下巻併せて1000ページ近くあるほど長いんです。

それを2時間の映画にまとめるんですから、キャラクターの掘り方が浅いのは必然。

観る前からわかっていたことでも「ここ削っちゃう!?」って言うのがいくつかあったんで、そこは結構大きなマイナスポイントだったり。

これこそ小説読んでなければ気がつかなかった部分であって、むしろまっさらな状態で観た方が楽しめたんじゃないかとすら感じてしまう。

原作との相違点を見つけてしまうことで、純粋に映画を楽しもうという気持ちが妨げられたような、初めての感情が沸いてきて少し戸惑った鑑賞となってしまいました。

 

ここから先は『蜜蜂と遠雷』のネタバレを含みます!

まだご覧になっていない方はご注意を!!

ネタバレ

ピアノの音

ここまで読んでいただけたら分かる通り、私はピアノが全然ダメw

弾くのもダメなら聴くのもダメで、プロとピアノを始めて1年のアマチュアが同じ曲を弾いたら、どっちがプロか多分わからないと思う。

そんな私としては4人の天才ピアニストが弾く曲はすべて同じに聴こえるんですよね。これって結構この映画を観る側としては致命的で、音の違いを聴き取れた方は私より何倍も楽しめているはずなんです。

それでもやっぱり観客は私と同じような人の方が多いんじゃないでしょうか。皆が皆ピアノの音を聴きとれるなんてことはないはず。

 

「春と修羅」を弾く場面で起きた即興演奏のところとかまさにそうで、登場人物たちが「なるほど。そうきたか」みたいな表情を浮かべているんですけど、私の頭の中ではハテナマークが浮かび続けていて。

そりゃ違う曲を演奏しているから、耳に残る違いは分かる。でも、例えば風間塵は批評家たちを怒らせるような演奏をするんですが、私にはそれがわからない。荒々しさとか冒とくしてるってなんだ?

これ結構楽しみだったんですよ。まず風間塵という天才少年が現れて、音楽評論家の中では賛否がハッキリ別れてしまうというシーンがありまして。映画でもかるーくあったけど。

人を怒らせるような演奏ってなんだ?と気になっていた部分であったので、映画ではそこを素人にも分かるように演出してくれるのかなと。でも、映画で観て余計に分からなくなる始末w

ピアノ部分はそれぞれスタントダブルがいるんで、耳の良い人には分かるように演出されているはずなんですが…。

申し訳ないけど、ピアノに関しては本当に分からん。

 

で、どうやって観客に音の違いを見せようとしたかと言うと、ブルゾンちえみが撮っていたインタビュー映像とかで自分語りさせたり、解説役を持ち込んで「これが、○○の演奏か…!」みたいに邦画あるあるの不自然なセリフを吐かせたり。

いや、ここに不満を持っても仕方がない。と自分に言い聞かせようとしても、なかなか…。

 

あ、後ですね。ピアノを演奏しているシーンが結構多いんですが、指先まで全身を映すショットがほとんどないのよね。あったとしても最後の1小節だけとか、すぐ別のショットに行ったりだとかで演奏シーンなのに忙しいなぁと。

背後から写したり、横から撮ってもピアノが遮って指先まで映らなかったり、俯瞰から撮って顔は映らなかったり、上半身だけ音に合わせて揺れるとかばかりで。恐らく指先が映るシーンはスタントダブルの先生が弾いていたのでしょう。

役者さんたちは何もピアニストなワケじゃないからしょうがないんだけども、最後の栄伝亜夜の演奏シーンは特に切り張りしているような印象を受けたな。

本人が弾いているんじゃないにしろ、指の動きくらいは頭に入っていたはずなんですよね。もし弾いているんだったらしっかりと指先まで見せて欲しかった。あの演奏時間定点ばかりだしさ。

松岡茉優さんのピアノを前にしたときの切なげな表情や、滑らかで荒々しくもある演奏演技が良かっただけに、もっと良い見せ方があったんじゃないかと。

しかも原作では栄伝亜夜とオーケストラのシーンはないんですよ。映画オリジナルの展開なのに長い尺だったから余計にね。これが、この作品の実写化が難しいと言われていたゆえんだったのかもしれません。

キャラクター

映画を観てすっごい可哀想だなと思ったのは天才少年の風間塵。

演じた鈴鹿くんは凄く役のイメージに合っていたんだけど、原作以上の存在感を発揮しておらず、「ギフト」のはずなのに他三人に比べてスポットライトが当たりにくかったんじゃないかと。

風間塵は天才ピアニストのホフマンに師事を受けた少年で、しかも弟子を取らなかったホフマン自ら教えに行ったという逸材です。しかし、彼の家にピアノはなく、養蜂家である父の手伝いをしながら暮らしています。

亡くなってしまったホフマンの推薦状を基に今回のコンクールに出場し、ホフマンの弟子と言うだけでかなりの注目株でした。それが演奏をしたら否定派と肯定派に分かれて…って感じ。

養蜂家ってことで「蜜蜂王子」とかあだ名されているワケで、これがタイトルの「蜜蜂と遠雷」に繋がってくるんですが、それも映画だとイマイチ…。

 

で、彼がいかにも天才なんだと判るシーンが床のひずみに合わせてピアノの位置を変えるってとこなんですが、残念ながらカット。後にオーケストラで「風間塵シフト」なるモノを組んでいたと、別の人物からのセリフで語られますが、そこちゃんと観たかったよ!

あの頑固なコンダクターに物申す風間塵と、少し嫌な顔しながらも風間の実力を認めていくオーケストラたち。こんなキャラクターを語るようなシーンが、ただのセリフだけで終わるなんてもったいなさすぎる。

原作だと栄伝亜夜よりも風間塵の方がスポットライト当たる数が多いような気がしてたんで、彼の影が想像以上に薄かったのが残念。タイトルにもある「蜜蜂」なのに。

あ、何故タイトルに遠雷があるのかは分かりませんw なんか意味ありげに遠雷の映像が流れてたけど。

 

その他にもですね。亜夜とマサルの再会がめちゃくちゃ弱かったのとか、亜夜にずっと付き添っていた友人が出てこなかったりとか。

松坂桃李さんが演じた明石は原作以上に目立っていた気がしますね。俳優の演技も相まって、そんなに年齢高くないはずなのに哀愁さを感じましたから。

まとめ

原作を読んだことで、いろんなことに気が付いてしまうのは悪いことでもあるんですね。よく学びました。

原作と比べるのとか、あまり好きじゃないんですが…。映画は映画と割り切れて観れるほど起用ではないようです。

結構観る人によっては印象が変わるんじゃないかと。ピアノ習っていたりとかしたら楽しめるのかな?

私個人はピアノに良い思い出が1ミリもないのと、音楽にもさほど興味がないという人間なんで向かないのは当たり前か。

以上!!!


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