
今回はドラマ『シャーロック劇場版 バスカヴィル家の犬』の感想です。
ホームズといえば、今現在の僕の中ではベネディクト・カンバーバッチになっているんですよね。パイプ加えているのは消えかけてました(笑)
とはいえ、ホームズに関しては原作も大体読んでますし、それなりに好きなのですが……。
『バスカヴィル家の犬』ってあまりホームズ出てこないイメージあるのよね。
日本版ではそこらへん、どうなっているのでしょうか。
以下ネタバレありの感想です。
『バスカヴィル家の犬 シャーロック劇場版』
あらすじ
謎の多い事件に巻きこまれた蓮壁千鶴男が、獅子雄とのビデオ通話中に突然倒れてしまう。千鶴男は狂犬病を患っており、莫大な遺産を遺したまま死亡する。
不審に思った獅子雄と若宮は、千鶴男が住んでいる孤島へと向かい、事件の調査を開始。しかし、千鶴男の息子である千里までもが死亡し、事件はさらに複雑になっていく。
蓮壁家を襲う不審死と、犬の呪いの伝説。獅子雄はすべての謎を解くため、住民たちに聞きこみをおこなっていくが…。
作品概要
コナン・ドイル作『バスカヴィル家の犬』を原作とした作品です。ホームズには4つの長編があるのですが、『バスカヴィル家の犬』はその中のひとつ。これまで幾度となく実写化されていて、カンバーバッチの『シャーロック』でも現代風にアレンジして映像化されました。
監督を務めたのは、『マチネの終わりに』の西谷弘(以下、敬称略)。主にテレビドラマを手掛けてきた監督で、『ガリレオ』や『シャーロック』などに携わっています。
キャストはホームズに相当する獅子雄役にディーン・フジオカ。ワトソンに相当する若宮役に岩田剛典が起用されております。
その他キャストは新木優子、広末涼子、村上虹郎、西村まさ彦などなど。
『バスカヴィル家の犬 シャーロック劇場版』評価
ストーリー | ★★★☆☆ 3/5 |
キャスト | ★★★☆☆ 3/5 |
演出 | ★★☆☆☆ 2/5 |
映像 | ★★☆☆☆ 2/5 |
総合評価 ★ 4/10
「原作とは別物だと考えれば……」
シャーロック・ホームズだと思って鑑賞しなければ、それなりに楽しめる作品だった……かな?
というか、そもそもシャーロキアン(僕は違うけど)を含む、原作が好きな人をターゲットにしてはいないのでしょう。
舞台日本だし、全員日本人だし。そう考えれば、驚きもありドラマ性もありの、そこそこなミステリーとして楽しめました。
原作読んでいる人向けの“ひっかけ”や、ネタがあったりするんで、元ネタを知っていればより楽しめることは確かです。
ただ、肝心なトリックの部分が微妙な点や、過去回想がびっくりするほど長い点、そしてラストの展開など、気になる部分も多い。
死ぬ瞬間まで狂犬病だと気がつかないとか、あるんですかね?
さらに言えば、ドラマ版でもそうでしたが、獅子雄=ホームズっていうのが頭の中でなかなか成立しません。
ミステリーなのに推理要素はかなり弱め。ドラマで泣かせようとしてくるあたり、日本映画っぽいけども。
※以下、原作小説含む『バスカヴィル家の犬』のネタバレが含まれます。まだ鑑賞していない方はご注意を
『バスカヴィル家の犬 シャーロック劇場版』感想
ホームズじゃなければ……
最初に原作における『バスカヴィル家の犬』について少し。
原作の簡単なあらすじとしては、犬の呪いに怯えていたバスカヴィル卿が死亡し、ホームズの命を受けてワトソン君がダートムアに潜入。犬の鳴き声がこだまする奇妙な現象や、逃亡中の死刑囚など、さまざまな謎が襲いくる……的な感じ。
この話はホームズの出番があまりなくて、中盤はワトソン君が活躍し、最後の美味しいところをホームズが持っていくエピソードといえます。
一方、日本版である本作のストーリーは、狂犬病によって死亡した資産家・蓮壁の謎と、蓮壁家で起きた2つの誘拐事件を描いていきます。一応、一家にまつわる“犬の呪い”が共通していますが、ストーリーは全然別物といって良いと思う。
「ホームズの必要ある?」
日本のミステリー小説でも、ホームズオマージュがある作品も多いのですが、本作もその程度。バックにホームズがついているとはいえ、諮問探偵と医師のコンビなら、なんでも「シャーロック」になりえてしまうのか?
テレビドラマ版もホームズらしさはあまりなかったし、先ほども書いたけれど、そもそも『シャーロック・ホームズ』読者がターゲットじゃない。それっぽい犯人探しをやって、人間ドラマで一気に引きこむタイプの映画でした。
嫌いじゃないのですが、ミステリーかつ、かのシャーロック・ホームズを原作としているなら、もう少しやりようがあったとは思う。
そして、内容を見てみると、ミステリーやトリックよりも、「なぜ犯罪を犯したのか」のドラマの部分に時間が割かれていました。この映画の犯人は娘をさらった復讐のために蓮壁一家を殺そうとしているのですが、犯人側のドラマを描きすぎていて、違和感しかありません。
ホームズの見せ場であるはずの“解答”シーンでも、なぜか犯人たちの語りが始まり、獅子雄の存在はスクリーンから消えていきます(笑)
犯人たちが語っているシーンでは無言を貫くし、観客と同じくホームズまでもが傍観者になっている謎の構図。数分くらい犯人が語るのは全然アリだと思いますが、相当尺とってるから「この映画の主人公誰だっけ?」状態に。
回想シーンが終わった後は、もう『シャーロック・ホームズ』であることを忘れ、蓮壁一家の死の真相とかどうでもよくなってるんですよ(笑)
ワトソン君は……。正直あまり役に立っておらず、紅さんの風呂に突撃したくらいしか功績上げてないっすね。原作では逐一ホームズに情報を伝えていたのですが、本作では特に大きな役は与えられず。医師としての役割もほぼなしで悲しい結末すぎ。
その一方で、広末さん演じる冨楽朗子と紅の関係や、執事の馬場さんまわりのエピソードなど、ドラマとしては楽しめる部分がありました。まぁ、ホームズ一切関係ないっすけどね。
原作とのリンク
続いて、原作を読んでいる人向けの小ネタが少々あったので、そちらを紹介していきます。
海外の小説が日本で映像化される際にありがちな、ダジャレネーミングについて。
たとえば、原作に登場する「バスカヴィル」という名前は、蓮壁(はすかべ)。下の名前もチャールズが千鶴夫、ヘンリーが千里(せんり)という具合に、原作小説の名前をモチーフにしたダジャレネーミングがつけられています。
執事の馬場も原作ではバリモアとして登場するので、おそらくそこから来ているのかなと。
一見するとただのオマージュ的なものに見えますが、本作のダジャレネーミングはミスリードとしても使われておりまして。
原作における真犯人はステープルトンという男でした。本作においてステープルトンに相当する名前を与えられているのが、小泉孝太郎さん演じた捨井遥人(すていはると)です。
僕は「ステイ」という名前が出て時点で、「ははーん、この人が犯人ね……!」とドヤっていたのですが、どうやらミスリードだったようで。犯人は別の人でしたし、捨井さんはむしろいい人でした。
「そんなところで騙してくるのか……」
ミステリーはお粗末で騙される要素がないのに、そんな遊び心で騙されるとは。
その他にも、原作の舞台となったダートムアが、なぜかウェブサイトの名前として登場してました(笑)
最後に
これでホームズが原作なのか……
ミステリーだと思わなければ楽しめたのでしょうが、だったら『シャーロック』である必要ないしなぁ。
原作も今読むと「そんな強引に推理する!?」と思っちゃうところもあるので、解釈の違いってやつですかね。
日本にも映画化されていないミステリーの名作が山ほどあるので、そちらにも目を向けてほしい!
以上。
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