どーも、スルメです。
私が園子温監督を初めて知ったのは意外にもドラマ版『みんなエスパーだよ』でしたw
それから『ヒミズ』とか『TOKYOトライブ』に入っていくワケですが、一番衝撃だったのはやっぱり『冷たい熱帯魚』です。
たぶんこの映画を観た方がいたら、忘れられない一本になっているんじゃないでしょうかね。この映画に登場する村田が邦画史上屈指のシリアルキラーだと思っていますから。それを遠慮なく描いた園子温監督もでんでんもスゲェなと。あ、好きかどうかは別としてねw
かと言って『リアル鬼ごっこ』だとか『みんなエスパーだよ 劇場版』辺りに入ってくると、世界感が強すぎて拒否反応を示すというw ここまで好き勝手やられちゃうと「ついていけないぜ」ってなるんだよね。
と、そんな感じで新作が公開されると気になる監督の一人である園子温監督。
彼の新作がNetflixで観られちゃうんだから、良い時代になったものです。劇場公開じゃないから遠慮しない系の作品になってそうですよね。
ポスターの雰囲気からも『冷たい熱帯魚』を感じさせるし、主人公の名前「村田」だし……。
前置きはこの辺にして、レビューに行きましょう!
なお、この記事は映画のネタバレを含みます!
愛なき森で叫べ
あらすじ
自主映画を制作する若者や悲しみを抱える女性たちだけでなく、その家族の人生にまで入り込み、思いのままに彼らを操る詐欺師。そのゆがんだ欲望は尽きることがない。
監督
先ほどもご紹介した園子温監督がメガホンをとっています。
自主製作映画中心の映画祭である「ぴあフィルムフェスティバル」出身の監督でして、数々の問題作を作り上げています。
代表的なところだと『自殺サークル』とか『冷たい熱帯魚』ですかね。色んな意味で観応えのある作品なんで、まだ観ていなかったらぜひ!
ちなみに代表作の一つと言われる『愛のむきだし』は観ていません。理由は長いからです。ごめんなさい。
キャスト
主演は『アウトレイジ』の椎名桔平。Netflix作品だとジャレット・レトと共演した『アウトサイダー』に出演していますね。
演じる役名が”村田”ということで、でんでんの演じた村田との関係があるのか……。冷酷な詐欺師らしいんで、なかなかエグいこともしてくれんじゃないかなと。
共演は満島真之介、YOUNG DAIS、鎌滝えり、日南響子、でんでん などなど。
評価
僭越ながら『愛なき森で叫べ』の満足度を★10段階で表すと……
★4
全部のことが遠くで起っているような気がする。
冒頭から園子温らしさ全開!女子高でのシーンとかめっちゃ既視感ある。『リアル鬼ごっこ』かな。
監督からすれば実際の事件を基にして、何とも言えぬ恐怖を味あわせたいのかもしれません。
しかし、どこか遠いところの出来事を観ているようで現実感がなく、画面から滲み出るような狂気も感じられない。
ただ脚本に合わせて演技をしている俳優たちを観ているだけに感じたんですよね~。
グロテスクな映像を見せられても気持ちが入っていないから、そこまでのダメージはナシ。「おえ。気持ちワル」とはなるんだけど。
登場人物たちが「ぴあフィルムフェスティバル」のグランプリを目指して映画撮ってるってのは、園子温監督自身を投影させたのか。
今年の「ぴあフィルムフェスティバル」は俺自身、一部の賞で審査員やったんで、名前が出てくるのは嬉しかったです。
ここから先は『愛なき森で叫べ』のネタバレを含みます!
まだご覧になっていない方はご注意を!!
感想
インパクトが少なかった理由
人によっては衝撃的過ぎるほどな作品なのかもしれません。
確かに人を殺し、人体はバラバラに切断して、煮込んで、骨は味噌と一緒に湖に捨てる。それを隠すことなく、全部映すので、ダメな人はリタイアしてしまうでしょう。
そうでなくとも、記憶にはキッチリ残る映像になっているはず。
ただ、この解体のシーンは自身の監督作『冷たい熱帯魚』のセルフパロディなんじゃないかと思うくらい、そっくりなんですよね。つまり同作を観ている人には二回目になるワケだ。
そりゃあ抵抗感はありますよ。俺はグロテスクな映画あまり得意じゃないし。それでも初見の衝撃とまではいきませんでした。血まみれの風呂場で半裸になって死体を解体する男女。あれ、どっかで観たことあるぞと。
グロテスクな映像得意じゃないとは言ったけど、やっぱり映画を多く観ると慣れてくるもんなんですよねぇ。
俺としてはグロいよりも、痛々しい映像の方が記憶に焼き付いていたりして。例えば『パッション』のキリストを鞭打ちにするシーンとか、この映画で言うならば手首をゴリゴリと削るシーンとか。
演者の痛そうなリアクションもあって、死体を切り刻むよりは観ていて辛い。そして痛い。
あとですね。同じ実在した事件をモデルにしているからか、『闇金ウシジマくん』のエピソードと酷似してるんです。
確かシーズン3の「洗脳くん」だったかな。中村倫也が演じているヤツね。あのエピソードも中村倫也が女性に近づいて、洗脳。家族まで巻き込んで、最後は父親を殺させてしまうと言った感じ。
『愛なき森で叫べ』の村田とほぼ同じなんだよね。家族のところに乗り込んでいって、一家丸ごと洗脳してしまうとか。電気ショックを使うのも同じな気がする。
ウシジマくんの方は「北九州監禁殺人事件」をモデルにしているらしく、おそらく『愛なき森で叫べ』もこの事件がモデルなんでしょう。
かなり衝撃的なんですけど、ウシジマくんで観たことあったし、ドキュメンタリーか何かも観たことあるような……。
そんなこともあってか、インパクトで言えば他の方よりも薄かったのでしょう。「ロミオとジュリエット」の件とか挟んでくるから、余計に事件に入りこめなかったのかもしれません。
椎名桔平演じる詐欺師
言葉巧みに相手を洗脳させ、自分の虜にする。それだけ天才的な話術を持っているし、機転も利くのに、どこか小物感があるんですよね。
圧倒的なカリスマ性を誇る教祖って感じでもないし、愛らしさすら感じたのは私だけ?
残虐なことやっているのに彼のことを嫌いになれないのは、椎名桔平さんの演技のお陰か。ラストの満島真之介相手の立ち回りは見事でございました。
村田もシンも殺人者なんだけど、二人とも完璧じゃない。シンなんて結局何が目的か分からないまま、正体が明かされ、どんでん返しっぽく演出されるという謎さ。
このどんでん返しに関しては「初めから予想ついてた」とかじゃなく、本当に謎。俺の頭が園子温監督に到達していないのか、呆然と観てるしかありませんでした。
監督の手の中で転がされたというより、手の中を遠くから見せてもらっているような。そんな感じ。相変わらず例えが下手やなw
それと、村田がどんどん人間を洗脳していくのですが、その洗脳シーンが上手く描かれていないのが残念。
大体は村田と出会って、次のシーンではもう心酔している。映画のチームなんて特にそうだよね。最初は不信感持っていたけど、飲み会が終わると村田の言いなりになっていたし。
そんなに簡単に洗脳できるほど有能な人間なら、どんな話術を使って自分に心酔させて行くのかをもっと描いて欲しかったのよ。「ロミオとジュリエット」じゃなくてさ。
確かに村田のキャラは好きだし、やべー奴だなと思ったよ。でも、あれだけ何でも出来るキャラなら、「やべー奴」より上に行って欲しかったです。
まとめ
上映時間は長かったんだけど、割と短めな感じで締めさせていただきます。
まぁ、うん。良くも悪くも園子温監督の映画だったって感じですかね。まだ観てない監督作も結構あるんで、次の作品までにしっかり予習しておきたいところ。
ただ、悪いところばかり書いてしまったような感じですが、俺としては決して楽しめなかったワケじゃない。
残酷な描写はニガテだけども、Netflixで日本のクリエイターを使った映画をもっと作って欲しい!それこそ「ぴあフィルムフェスティバル」のグランプリ獲った監督とか。
Netflixはクリエイターの意見を尊重する作り方をしているらしいんで、監督の作りたい映画を作れる環境にあるんじゃないんでしょうか。
以上!!!
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