『レジェンド&バタフライ』の事前情報を集めていた時に、「製作費20億円以上!」とのコピーが目に飛び込んできた。
キムタク&綾瀬はるかで、信長をやるってだけでもスゴイのに、20億。しかも上映時間は約3時間。これはとんでもない映画になるんじゃないか!
そう思っていた時代があった……
ふたを開けてみれば、長い!って感想が最初に出てきて、16歳の信長を演じたキムタク以外の記憶が残らない映画でした。
GOサイン出した人が勇者なんじゃないか? ぜひともヒットしてほしいところですが……。
※この記事は『レジェンド&バタフライ』のネタバレを含みます
レジェンド&バタフライ
あらすじ
格好ばかりで「大うつけ」と呼ばれる尾張の織田信長は、敵対する隣国・美濃の濃姫と政略結婚する。信長は嫁いで来た濃姫を尊大な態度で迎え、勝ち気な濃姫も臆さぬ物言いで信長に対抗。最悪な出会いを果たした2人は、互いを出し抜いて寝首をかこうと一触即発状態にあった。そんなある日、尾張に今川義元の大軍が攻め込んでくる。圧倒的な戦力差に絶望しそうになる信長だったが、濃姫の言葉に励まされ、2人は共に戦術を練って奇跡的な勝利を収める。いつしか強い絆で結ばれるようになった信長と濃姫は、天下統一へと向かって共に歩み出す。
評価
僭越ながら『レジェンド&バタフライ』の満足度を★10段階であらわすと……
★3
「信長はしばらく遠慮したい」
信長って映画でもドラマでも、さんざん描かれてるしなぁ。いまさら信長といわれても。
たぶん歴史上の人物で一番有名なのって、信長だと思うんですよ。小学校高学年からご老人まで、認知度95パーは超えるんじゃなかろうか。
そして、信長が誰に裏切られ、どこで殺されたかも大体の人が知っている。
そんな話を3時間かけて見せつけられても。だったら行くなって話なんですが、鑑賞前はもっとラブストーリーとして完成されている映画だと思っていたのよ。
残念ながらラブストーリーとしても味気なく、歴史ものとしても到底満足できない。魅力があるとすれば、やはりキムタクと綾瀬はるか、そして大友啓史&古沢良太の座組なんでしょうね。
キムタクのカリスマ性と信長はかなり相性がよく、別の場面で観たかったところです。
※以下、ネタバレあり
感想
信長と濃姫
歴史好きの方ならご存知のとおり、そもそも濃姫に関する文献ってほとんど残ってないんですよね。だから、どんな人だったのか全く分からないと。
この映画はそこに焦点を当て、濃姫を若き信長のブレインとして描いてしまう作品です。
男中心社会だった時代に、夫を足蹴にするどころか、ボコボコにしちゃう濃姫。いかにも現代的な女性像が当てはめてられていて、若干いびつに見えてしまう濃姫。歴史上の人物というよりは、もはや綾瀬はるかな濃姫。
信長ほどイメージが固まっていないからこそできるキャラクター描写ですが、それにしても違和感あるよねって感じで。まぁ、史実を基にしたフィクションですから、違和感も含めて、楽しめればいいのだが……
問題はふたりの恋愛描写。正直、信長ってひとりの女性を愛するってイメージが1ミリもない武人で、ラブストーリーとか一番合わないだろ……ってタイプなんだけど、その不安がまさか的中するとは。濃姫をあそこまでコテコテに“今風”にしたなら、信長も、せめて恋愛観だけでもフィクション織り交ぜてほしかった。ほかの女性と子作りしまくってる信長に感情移入しろって言われましても。
結局、2023年の感性でこの映画を観ればいいのか、戦国時代の出来事だと思って観ればいいのか、よくわからん。2023年の意識で観れば信長意味わからんし、戦国時代だとすると濃姫が強すぎる。どちらにせよ、ラブストーリーに感情移入できないまま終わってしまうという。
「われ人にあらず!っていう割には……」
『信長協奏曲』読んでるときも思ってましたけど、信長とフィクションって相性が悪すぎる。面白いことには間違いないのですが、信長って美化しにくい人ですからね。劇中でも描かれていたとおり、魔王であることはまず間違いないし、純愛とはほど遠いところにいたはず。
20億かけたとか、豪華キャストとか、見どころはたくさんあるけど、信長を映像化することの難しさを改めて見せつけられた気がします。
ターゲットはどこにあり?
この映画のターゲットがよくわからんって話をしたい。
僕が映画を観に行ったとき、初日だったんだけど、席の埋まりは3分の1くらい。ほとんどが年配の方々で、SMAP直撃世代だと思われる人たちもちょこちょこいる。さて、この映画は誰に向けられた作品だったのでしょう。
歴史映画として観た場合。おそらく、この映画で満足できる人は少ない。信長の映画とかドラマって腐るほどあるし、本能寺の変の映像化なんて何度目だよって話なわけで。合戦シーンがあるわけでもないし、既視感の強すぎる本能寺の変もイマサラ感強め。起きて、弓で戦って、肩を斬られて、奥にお逃げください!の流れってもう十分よ。同じようなものを見せられるなら、本当に南蛮に逃げおおせて、新たな生活をはじめるところで終わらせてほしかった。
で、ラブストーリーとして観た場合。先ほども書いたとおり、信長の恋愛観が一部アップデートされていないもんで、純愛とは到底言えない。そもそも濃姫と信長の関係、意外と雑に描かれてなかった? 悟空とチチが結婚するくらい唐突だったよ。
キムタクと綾瀬はるかが好きな人には満足できるでしょう。実際、ふたりの魅力だけで成り立っている映画といっても過言じゃないですし、実際そこに20億かけたのだろう!最終的には主演のふたりが凄いよねって映画でした。
最後に
鑑賞前に「サプライズがあるよ!」ってツイートを見かけまして。
さまざまなパターンの中から、草彅くん演じる史実には存在しない“誰か”が、本能寺にやってきて信長を助けるって展開を妄想してました(笑)
あり得ない話だけど、妄想するだけなら自由!完全に濃姫の存在が頭から吹っ飛ぶけどね!
以上!!