【ネタバレ】『アントマン&ワスプ クアントマニア』評価と感想 フェーズ5はさらに複雑化する

MCUのフェーズ4はよくわからないまま始まり、猛烈な速度で過ぎていきました。

要は『アベンジャーズ カーンダイナスティ』に向けた準備期間だったわけで、フェーズ6を終えないと評価が固まらない模様。

マーベルらしい贅沢さと自信に満ち溢れたフェーズだったことは間違いないようですが。

 

さて、『アントマン&ワスプ クアントマニア』より、フェーズ5がはじまり、準備期間も終了!

これから一気に加速していく模様ですが、その第1作目となる大役をアントマンが務めるとは、なかなか攻めております。

思い返してみれば、アントマンは誰よりも宇宙の平和に貢献した男ですから、当然と言えば当然か。

ってことで、以下感想です。

 

※この記事はMCU全作品のネタバレが含まれます。

『アントマン&ワスプ クアントマニア』の作品情報

あらすじ

「アベンジャーズ エンドゲーム」では量子世界を使ったタイムスリップの可能性に気づき、アベンジャーズとサノスの最終決戦に向けて重要な役割を果たしたアントマンことスコット・ラング。ある時、実験中の事故によりホープや娘のキャシーらとともに量子世界に引きずり込まれてしまったスコットは、誰も到達したことがなかった想像を超えたその世界で、あのサノスをも超越する、すべてを征服するという謎の男カーンと出会う。

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キャスト

主演を務めるのは前作から引き続き、ポール・ラッド。MCU以外では、『40歳の童貞男』とか『奇人たちの晩餐会』など、コメディ映画に多く出演してきた人ですね。その経歴もあって、『アントマン』シリーズはMCUきってのコメディ作品だったのですが、本作からはシリアス寄りになるようで。突然の方針転換ですが、ポール・ラッドなら大丈夫という謎の安心感があります。

一方、悪役のカーンを演じるのは、ジョナサン・メジャース。若手といえるくらいの俳優ですが、MCUの「マルチバース・サーガ」のラスボスに大抜擢。実は『ロキ』にも出演していて、カーンの変異体である“在り続ける者”を演じていました。

そのほかにも、『ゴースト・バスターズ』シリーズでおなじみのビル・マーレイや、レギュラーキャストのマイケル・ダグラス、ミシェル・ファイファー、エヴァンジェリン・リリーが出演。

キャシー役は『アベンジャーズ エンドゲーム』からリキャストされ、『名探偵ピカチュウ』のキャスリン・ニュートンが演じています。

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『アントマン&ワスプ クアントマニア』の評価

僭越ながら『アントマン&ワスプ クアントマニア』の満足度を10段階であらわすと……

 

★6

 

「従来の作風の方が好きだった」


『アントマン』シリーズは地に足がついたというか、絶対に単独で宇宙なんか行かないし、強すぎる敵とも戦わない、親愛なるヒーロー像が魅力だったと思うのです。元犯罪者でもあるしね。

前作まではある種のクライム映画で、キティちゃんのペッツとかトーマスが巨大化するなんて、面白演出もありました。

結果的にタイムマシン開発に繋がるとはいえ、前作もかなり小さな話だったし、アントマンの能力と相まってそこが魅力でもあった。

けれども、本作はアベンジャーズを何度も壊滅させてきた“征服者”がヴィランで、世界観も大幅にスケールアップ。スコットとキャシーの関係性を主軸に、量子世界を描きつつ、最強の敵と戦う、かなり忙しい映画でした。

面白いことは間違いないんだけど、『アントマン』にこの作風を求めているかと言われると……。うーん……。

 

※以下、ネタバレが含まれます

『アントマン&ワスプ クアントマニア』感想

アントマン、量子世界へ旅立つ

アベンジャーズの一員として世界を救い、過去の罪も許され、サンフランシスコの住人たちから愛されるようになったアントマンこと、スコット・ラング。しかし、ヒーロー活動はしておらず、人類のために研究するホープやピム博士とはちょっと距離を置きがち。ヒーロー活動を綴った自伝を発表(この自伝は『ミズ・マーベル』にも登場)したりして、今後の活動に悩んでいたりする。

そんなときに娘のキャシーが量子世界を探索する装置を発明。しかし、向こうにいる何者かがスコットたちの居場所を探知して、5人を量子世界に引きずりこんでしまいます。

前作でも舞台のひとつになった量子世界ですが、本作ではしっかり知的生命体がいて、独自の文化を発展させていることが判明。しかも、追放された征服者カーンが帝国を築き上げ、住民たちを恐怖で支配していました。そんなカーンに捕まったスコットは、囚われたキャシーを救うため、カーンの野望を手助けしてしまう。

 

前作まではサンフランシスコが舞台で、MCUではめずらしい、真っ直ぐなカーチェイスを披露したりする映画だったんですけどね。今回は舞台がすべてCGで、もはや『スター・ウォーズ』や『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』状態。これまでの『アントマン』どこに行ったんだ?ってくらい、ガラッと作風が変わっています。

量子世界の描写もめちゃくちゃ力が入っているのですが、昨年公開された『ストレンジワールド』と被るんですよね。ゲームだったら『ノーマンズスカイ』とも似てるし、どこか既視感がある。ただでさえ『スター・ウォーズ』感が否めないのに、ちょっと新鮮さに欠けるかなと。

「なぜ前作には登場しなかったんだ?」

一応スコットも5年間(地上世界の時間で)囚われていたし、一瞬ですが前作でピム博士も量子世界に行ったのに、カーンの存在に気がつかなかったのが不思議。少なくとも、トニーとかブルースは『エンドゲーム』で研究しているし、気がついてもおかしくないのですが。

 

そんな感じで、世界観に関しては疑問を持たざるを得ませんが、スコットとキャシーの親子関係は非常にエモーショナルなものになってました。

『インフィニティ・ウォー』でサノスに囚われたガモーラに向けて、スターロードが引き金をひく、あの感じ。解釈一致とはまさにこのことで、「スコットなら絶対こう動くだろうな」といった期待をけっして裏切らない。たとえその選択が宇宙を破滅させたとしても、世界と天秤にかけてもキャシーを選択するスコットに、目頭が熱くなりました。

 

その一方で、なかなか量子世界での出来事を語らないジャネットには、心底腹が立ちましたが(笑)

「今は黙って私に従って」とか言わなくても、移動しながらサクッと話せばいいじゃない。観客としても量子世界のことがわからないまま物語が進むし、ストレスがたまる。「マルチバースのエンジン直して、カーンを逃がしちゃった~」ならまだしも、正しい選択をしたし、別に話せばよくない? 秘密にする必要はどこにあったの?

「キャシーは後で助けに行きましょう」とか、よく言えたなそんな無責任なこと。天才のはずなのに、若干空気読めない人に映るのは、もったいない。

征服者カーン

本作のメインヴィランになったカーンは、時間を移動することができる、MCU史上屈指の強敵です。しかも、マルチバースに散らばるカーンの中でも、特に悪い奴が登場します。量子世界にいる理由も、ひど過ぎて他のカーンに追放されたからですしね。たったひとりで量子世界に帝国を築き上げてますし、アントマンからすれば、あまりにも強すぎる敵です。

カーンはドラマ『ロキ』にも登場していて、すでにMCUに参戦済み。とはいえ、『ロキ』のカーンと、『クアントマニア』のカーンは別人ですし、性格もかなり異なります。ラストに登場したようにカーンは変異体が大勢いて、おそらく彼らの侵攻が『アベンジャーズ カーンダイナスティ』に繋がってくるのかと。

ただ、本作で最強のはずのカーンがアリに倒されるところを見てるからなぁ……。あの勢いを観てしまうと「アベンジャーズ必要なくね? アント、アッセンブルすればよくね?」と思わずにはいられない。ピム博士ひとりでだいたいの敵に勝てるよね?

「今回はひとりだけの登場だったけどね」

とはいえ、ジョナサン・メジャースの演技は、サノスを演じたジョシュ・ブローリンにも劣らない。むしろ実写で登場するぶん、カーンの方が怖いかもしれない。最初は紳士的な態度だけど、実はかなり短気とか、ヴォルデモートぽいですね。

ほかにもさまざまなカーンを同時に演じるみたいですし、『カーンダイナスティ』は本当に凄いことになりそう。

ジョナサン・メジャースは『クリード』新作でも悪役を演じるようで、早い段階で凄い人をキャスティングしましたわ。さすがマーベル?

 

あとモードックほどの良キャラを、1作で退場させるとは……。しかも、正体が1作目の悪役という、『アントマン』シリーズでしか通用しないキャラになるなんて。当たり前のように今後も登場すると思っていたからさ。

彼も最期にアベンジャーズ入りできて、嬉しかったでしょう。良いところはあまりないけど。

ポストクレジットシーンについて

カーン評議会の映像は文字どおり『カーンダイナスティ』への布石でしょうが、問題はロキとメビウスが登場した部分。

過去に戻ったロキとメビウスが、カーンの変異体と遭遇するシーンで、完全に今年配信される『ロキ』シーズン2に続くシーンでした。メビウスは記憶をなくしているはずなので、カーンの恐ろしさを分かっていない。今現在でカーンを知っているのは、アントマン一行とロキだけです。

このふたつのシーンから考察するに、やっぱりフェーズ5と6では、カーン(とその変異体)が立て続けに登場するようで。ファラオのラマ・タトは『ムーンナイト』の黒幕的な存在だったり、たぶんTVAを乗っ取ったカーンも『ロキ』で登場するはず。

カーンの変異体がフェーズ5、6の作品に登場して、『カーンダイナスティ』でアッセンブルするのが理想ですかね。フェーズ4はウォンばかり登場するから、「フェーズ・ウォン」なんて言われてましたけれども、今後はフェーズ・カーンになりそう。

最後に

フェーズ5の出だしから躓くようなことはなかったですが、方向性を完璧に示したかとはいえないかと。

もうMCUに入るのは容易ではない(フェーズ4だけでも50時間以上!)し、ここ最近は余計に敷居が高くなったような気がする。

そんな難易度高めのMCUですが、次の作品は『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー Vol.3』!

予告編から「マルチバース?うちには関係ないね」といった孤高の存在であることが伺えるし、久しぶりにシリーズを考えることなく、本気で楽しめそうな映画です。

 

以上。